ハーフ!〜wonderland with glasses

リヒト

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(13/47)カレーを置いて寝かせましょう

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 透視……これって、透視じゃない?
 そうだよ、これ、俺のGGメガネのギフトじゃない?
 そう思いついた俺は、去っていったウエイトレスを目で追ってみた。
 両手でお盆を抱え笑顔を添えてオーダーを聞いている。
 よし……もう一度やってみるか。
 じっっっっと目に力を入れて念じてみる。
 ……これ、結構な力がいるな。
 やっと、ぐい……ぐいぐいっと、視界が迫ってきた。
 よし!このまま進め!
 あれ?……木目がめいっぱい映った。
 うーん、ギルドの壁が見たいわけじゃないんだよ。
 もう少し力を弱めてみるか。
 今度こそ!
 もちろん狙うのは!……カワイイ胸元の……制服部分。
 そしてできれば少し透けたりなんかできたら良いよなあ、とか。
 そんなことを思いながら、また目に力を入れる。
 目の血管が破裂しそうになる。
 ぐっ、ぐぐっ。
 突然視界が光で満たされる。
 うわっ。まぶしいっ!
 今度は屋外の景色が広がっていた。
 ……調整が難しい。
 この調子で行くと、服みたいなペラペラなものだけを避けるのは全くもって至難の業のようだ。
 でも、でもさ。これって待望のやつだよな。
 そう、初めての俺のギフトだよな!
 しかもよくよく考えると、透けるのと遠くが見える二つのセットじゃない?
 透視と遠視。
 ははっ!『トーシ&トーシ』じゃん!
 よしっ!
「やったーぁ!」
 思わず大声を出してしまいギルドの視線が集まる。
「カイさん?大丈夫ですか?」
 受付嬢ジーナが近づいてきて声をかけた。
「い、いや。なんでもないっす」
「なら良いですけど……」
 怪訝そうな顔をしたままジーナが立ち去った。
 ふう。
 危ない、危ない。
 ウエイトレスに服を透視している事何をしてるかがバレたら、多分いや絶対クビになってしまう。
 遠ざかるジーナをきちんと確認する。
 くくっ。
 練習しないとな。
 よこしまな気持ちなんかじゃなくてさ、初めてのギフトだからさ。うん。
 さてと。
 今度はいかつい髭面の冒険者と立ち話をしているジーナのお尻に狙いをつける。
『トーシ・トーシ』!
 心の中でギフト名を叫ぶ。
 カチッと音をたててはまるような感覚がした。
 今度は楽に視界が猛スピードで近くなる。
 よし、そのまま行け!行くんだ!
 あれ?
 ジーナを通り過ぎた?
 ちっ。上手くいかん……。
 ん?あれ?……何が写っているんだこれ?
 ……、…………、………………。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
 視界が何かと理解したとた俺は大声をあげてしまった。
 なぜなら……なぜなら、そこに見えていたものは……。
 ……ジーナと話していた髭面冒険者の股間だったからだ。
 
 
 
 
 
 
 
 翌朝。
 俺はカレーがたんまりと入った鍋を持ってシャーロットの宿屋の裏庭にいた。
 昨日というか昨晩、バイトとギフトの練習でへとへとになってギルドから帰ってくるとリタもまだ宿屋にいた。
 今までの肩代わりしてくれていた金額はもちろん、これからの宿屋や食事代にとギルドから得たバイト代全部をシャーロットに渡した。
 その後三人で夕食をした。シャーロットへのお礼やギルド食堂のバイトの大変さ、そして初めてギフトが得られたことを話しして、キエールをしこたま飲んで楽しい夜がふけていったのだった。
 そしてもちろん(?)気がつけば今朝も三人でベッドにいた。
 昨日と同じように寝起きのバタバタがあったものの、今はリタとシャーロットと三人でカレーパンの仕込みをしているのだった。
「初めて聞いたよ、そんなギフト。でもさ、邪魔なものなく遠くまで見えるっていっても、なかなか使い道なくない?」
 両手でカレーの鍋を持ちながらリタが話した。
「俺の初めてのギフトにそんなこと言うなよ。ちゃんとなんか便利そうじゃん?」
 俺はほわっとした言い訳を返す。
「何に便利なのさ。向こう側が見えて」
「えっと」
「えっと?」
「例えば」
「例えば?」
「人が立っていてさ。後ろが崖なのが見えていれば突っ込んで行っても落ちないじゃん」
「で?カイは崖の前の人に突っ込む予定あるの?」
「いや、ないけどさ」
「だろうね」
 と、リタは冷たい目をして鼻で笑った。
 とはいえ。
 服の下を覗くのに良いとか言えないし。
 っていうか、まだそれさえもちゃんとできてないし。
 悔しいけど言われるがままが正解かあ。
「そういえばさ、ギフトが与えられる時って、頭に音が鳴るんだな」
 俺はしぶしぶと話題を変えた。
「女神さまからのお知らせの音ね」
 先頭に立って進むシャーロットが振り返って微笑んだ。
 大きな鍋を左右それぞれの手に軽々と一つづつ持っている。
「いいなシャーロットは。力持ちみたいなギフト。俺とは違って冒険者としても活躍しそうじゃん?」
「えっと、その……」
 シャーロットが赤面してもじもじとしている。
「あれ?俺まずいこと言った?」
「そういう訳ではないですが。その……。カイさん、そのですね」
 と、何やら恥ずかしそうに話す。
「その、この力というのは、あの、違うんです」
「え?ギフトじゃないってこと?」
 シャーロットの顔が更に赤くなった。
「鍋を軽々とそんな持ち方してるのに?」
「カイさん、止めて……」
「オレを毎晩ベッドまで運んでくれているのに?」
「カイさんってば、止めてくださいーっ」
 シャーロットはしゃがみ込んでしまった。
 小さくなった姿勢のまま、チラリと俺を見て話す。
「これは、その、元々なんです」
「へ?どういう?こと??」
「元々、力持ちなんです」
「ギフトではなく?」
「……はい」
「そうか、鍛えたんだ。すごいな」
「……いえ。だから、その、元々なんです」
「ん?」
「何もしていないのです」
「何も?」
「はい」
「とは言ってもトレーニングとか」
「してないのです」
「とういと、家系的な?」
「というか、生まれた時からなのです」
「生まれつきなのか?」
「生まれつきというより生まれた瞬間からなのです。その……力加減が上手くできず哺乳器を壊してしまうような赤ちゃんだったそうです」
 シャーロットは真っ赤にうつむいてしまう。
 ありゃ。
 やってしまった……のか?
 これだとまさしくの『パワハラ』になってしまう。
「お。おう。そっか。そういうのもアリなんだな。うん魅力的というか」
 俺は誤魔化そうと他愛もない言葉をつなげる。
「……魅力的ですか?」
 シャーロットは上目遣いで俺をチラ見する。
「う、うん!で、そうだ!魅力的なシャーロットのGGとかギフトは何なんだ?」
「私のGGはこのミトンです」
 止まっていたシャーロットが歩き出し、
「お母さんからもらったのです」
 と、遠くをみた。
「そうなのか。そうか。思い出の一品なんだな」
「はい。そしてギフトはかなり熱いものでも持てることですかね」
 シャーロットが嬉しそうな表情で答える。
「そういうギフトも良いね。繋がりが温かみがある」
「はい。なので女神さまのお知らせの音がお母さんからの音のようにも思えます」
「なるほど。でも、あの文字のようなものはなんなんだろうな?」
「文字?ん?それわからないんだよ?」
 リタが会話に加わった。
「ポピン♪という音と一緒に流れてくるやつ」
「へ?何それ?」
 リタは首をかしげた。
「じゃあ、この辺にカレーを置いて寝かせましょう」
 シャーロットが木の根元にフタを開けてカレー鍋を置く。
 俺に背を向けリタもその場所へ走っていった。
 
 
  
 
 で。
 またやらかしたのかと、本当、申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけれど。
 ……ここまでは覚えているんだ。
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