ゾンビのいない世界で俺に与えられたスキルは『ゾンビ殺し』だった。役立たずとして追放される俺。でもあと少しで世界はゾンビだらけになるんだけどね

小平ニコ

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第59話

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「ああ。たまたま頼もしい人に助けてもらってね。なんとか命を繋いでこられたよ。えっと、カザミ君は、ここで何を……?」

「カザミでいいよ」

「あ、うん。それじゃ改めて。カザミは、ここで何をしてるんだ?」

「ここは僕の私室だよ。この時間は、窓を開けて風通しを良くして、のんびりするのが好きなんだ」

「私室!? こんな、貴族のおうちみたいに立派な部屋が!?」

「僕、これでも『風の勇者』だから、大事にしてもらってるんだ」

 そう言ってニッコリ笑うカザミに対し、少しだけほの暗い感情が芽生える。

 俺を始め、前回召喚された日本人は、そのほとんどが王宮を追放された(西島に至っては、その日のうちに死ぬ羽目になった)のに、カザミは勇者としての特別待遇を受け、いい部屋でいい暮らしをしてたんだなと思うと、カザミ自身に罪はないとはいえ、やはり愉快な気分ではなかった。

 しかし俺は、そんな矮小な気持ちをすぐに振り払った。

 彼もまた、いきなり違う世界に連れてこられた被害者であるし、これまでのやり取りから、柔和な好人物であるのは間違いない。しかも『風の勇者』というのなら、王宮内でも顔が利くはずだ。カザミの協力が得られれば、召喚士を連れ出すのがグッと楽になる。俺は少し迷ったが、彼にすべてを打ち明けることにした。

 いきなり世界の滅亡について語り始めた俺に対して、カザミは異論をはさむようなことはせず、素直に耳を傾けてくれた。そして、最後まで説明が終わると、頬杖をついて小さく問う。

「それ、本当の話?」

「嘘を言うために、わざわざ窓から乗り込んでくると思う?」

「ふむ……」

 カザミは腕を組み、しばらく黙る。
 やっぱり、信じてくれないか。まあ、疑わしい話だもんな。
 俺だって、ルイーズが流れ星の出現を言い当てるまでは、半信半疑だったし。

 小さくため息を漏らす俺。
 そんな俺に対し、カザミは再びニッコリ微笑んだ。

「わかった、信じるよ」

「えっ、うそっ、本当に?」

「僕は大した人間じゃないけど、ちょっとした特技があってね。その人が嘘つきかどうか、結構な確率で当てることができるんだ。サトシ君、きみの言葉からは真剣味を感じる。少なくともきみ自身は、今言ったことを本気で信じている。そうだろう?」

「あ、ああ」

「そしてきみは、どうやったのか分からないけど、王宮の三階にあるこの部屋に飛び込んできた。落ちたら当然死ぬし、部屋の中には衛兵がいるかもしれない。まさに命がけだ。それなのにきみは、危険を恐れず信念のために行動した。僕はそういう人を、心から尊敬する。だから、きみを信じるよ」
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