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第16話
アマンダと違って、こちらを殊更に脅すような意図を感じない、淡々とした事務的な言い方だった。だが、それが逆に冷酷な真実味を感じさせた。『最悪の場合、命すら取られることもある』と言われては、反発心の塊であるアマンダもこれ以上抵抗する気をなくしたらしく、渋々ながらも「わかりました」と頷くしかなかった。
そして、ローラはジェームスに連れられて部屋を出た。残された私とアマンダは、もう一言も口をきくことなく、硬く重苦しい空気の中で夜は更けていくのであった。
・
・
・
ローラが戻って来たのは、部屋を出てからだいたい一時間後だった。場合によっては、大公様の寝室でそのまま朝まで過ごすこともあり得ると思っていたので、予想よりずっと早い帰還に少々驚く。
もしかして、何か粗相をして大公様のご機嫌を損ねてしまったのだろうか? だが、ジェームスとの取り決めにより、寝室で何があったかを聞くことはできないし、たとえ取り決めがなかったとしても、今のローラにどうしたこうした何があったとあれこれ聞くのは無神経すぎるだろう。
だから、私はなるべくいつも通りの声色で「おかえりなさい」とだけ言った。ローラもそれを受け、短く「うん」とだけ返す。良かった……というのも変かもしれないが、ローラは疲れてはいるものの、それほど憔悴した様子もなく落ち着いている。さっき思った通り、彼女は私が考えていたより遥かに芯が強いのかもしれない。
「ちっ」
アマンダが小さく舌打ちする音が聞こえた。だが、それ以上何か言ってくることはなく、アマンダは完全なる沈黙を貫いている。彼女の性格上、一度でも口を開いてしまったら、好奇心を抑えきれずにローラから全てを聞き出したくなることを自分でわかっているに違いない。
なので、その日はもう誰も何もしゃべらなかった。結果的にとても静かな夜となり、先程までのことが夢だったかのように思えてくる。しかし、私のベッドの隣で眠りについたローラから、高貴な方の部屋で焚かれるお香の匂いがかすかに漂って来て、やはりすべては現実であったと思い知らされる。
私も数日の内に、大公様の寝室に呼ばれるのだろうか。
その時、ローラのように落ち着いた態度を取ることができるだろうか。
本当に、ブレアナの身代わりとしての運命を受け入れることができるだろうか。
だろうか、だろうか、だろうか。
いくつもの『だろうか』が頭に浮かんで来るが、その問いに対する答えなど簡単に出せるはずもなく、なかなか寝付けない。だがそれでも、丸一日働き通しのメイド仕事の疲労が、いつまでも意識を保っていることを許さず、私は自問自答の中で、いつしか深い眠りに落ちて行った。
そして、ローラはジェームスに連れられて部屋を出た。残された私とアマンダは、もう一言も口をきくことなく、硬く重苦しい空気の中で夜は更けていくのであった。
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ローラが戻って来たのは、部屋を出てからだいたい一時間後だった。場合によっては、大公様の寝室でそのまま朝まで過ごすこともあり得ると思っていたので、予想よりずっと早い帰還に少々驚く。
もしかして、何か粗相をして大公様のご機嫌を損ねてしまったのだろうか? だが、ジェームスとの取り決めにより、寝室で何があったかを聞くことはできないし、たとえ取り決めがなかったとしても、今のローラにどうしたこうした何があったとあれこれ聞くのは無神経すぎるだろう。
だから、私はなるべくいつも通りの声色で「おかえりなさい」とだけ言った。ローラもそれを受け、短く「うん」とだけ返す。良かった……というのも変かもしれないが、ローラは疲れてはいるものの、それほど憔悴した様子もなく落ち着いている。さっき思った通り、彼女は私が考えていたより遥かに芯が強いのかもしれない。
「ちっ」
アマンダが小さく舌打ちする音が聞こえた。だが、それ以上何か言ってくることはなく、アマンダは完全なる沈黙を貫いている。彼女の性格上、一度でも口を開いてしまったら、好奇心を抑えきれずにローラから全てを聞き出したくなることを自分でわかっているに違いない。
なので、その日はもう誰も何もしゃべらなかった。結果的にとても静かな夜となり、先程までのことが夢だったかのように思えてくる。しかし、私のベッドの隣で眠りについたローラから、高貴な方の部屋で焚かれるお香の匂いがかすかに漂って来て、やはりすべては現実であったと思い知らされる。
私も数日の内に、大公様の寝室に呼ばれるのだろうか。
その時、ローラのように落ち着いた態度を取ることができるだろうか。
本当に、ブレアナの身代わりとしての運命を受け入れることができるだろうか。
だろうか、だろうか、だろうか。
いくつもの『だろうか』が頭に浮かんで来るが、その問いに対する答えなど簡単に出せるはずもなく、なかなか寝付けない。だがそれでも、丸一日働き通しのメイド仕事の疲労が、いつまでも意識を保っていることを許さず、私は自問自答の中で、いつしか深い眠りに落ちて行った。
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