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第38話
そこでとりあえず、その日のフレッド様との会話は終わった。思ったより長話をしてしまったため、大急ぎで仕事に戻ろうと、私は駆け足で進んでいく。その胸中では、フレッド様に言われた言葉がずっと響いていた。
『つまりだな。お前はもう、父上に呼ばれない可能性が高いってことだ』
嬉しかった。ローラには申し訳がないし、私だけいいんだろうかという罪悪感もあるが、それでもやはり、嬉しかった。ずっと心にのしかかっていた重りが、急に取り払われたような気持ちだった。
・
・
・
「ブレアナ。大公様から、寝室に参上せよとの命令が下りました。速やかに支度して向かいなさい」
ジェームス様にそう言われたのは、フレッド様に『お前はもう、父上に呼ばれない可能性が高い』と教えられてから、ちょうど一週間後のことだった。
大公家に来てから一ヶ月を大きく過ぎ、本当にもう呼ばれることはないと信じつつあっただけに、私の受けた衝撃は強烈だった。数秒間眩暈がし、絶望感も覚えたが、それと同時に、不思議な安堵感もあった。
その安堵感は、『これでローラを裏切らずに済む』という、友情に近いものだった。
これまでの人生でもそれなりに友達はいたが、ローラのように寝食を共にし、同じ苦しみを分かち合った本当の仲間は初めてであり、その『本当の仲間』が生贄のように大公様の寝室に呼ばれたのに、私だけが何もされずに済むということに、やっぱり罪の意識があったのだ。
だから私は、静かに「わかりました」とだけジェームス様に答え、身支度を始めた。あるいはアマンダのように、やたらと濃い化粧をして遅刻をすれば、怒った大公様にすぐ寝室を追い出され、何もされずに済むかもしれないが、そういった小細工もまた、正々堂々と大公様の元に向かったローラへの裏切りとなるので、する気はなかった。
淡々と、そして粛々と。ローラともアマンダとも口をきかず、手早く準備を終えた私は、無垢なる生贄の白い衣装を身にまとい、大公様の寝室へ向かって歩き始めた。そんな私をジェームス様が先導する。私はほとんど足音を立てずに歩きながら、静かに言った。
「先導されなくても、大公様の寝室の場所くらい知ってますよ。これでも、日々メイドとして勉強して、大公家の間取りはすべて把握してますから」
ジェームス様は、ちらりとこちらを振り返り、足を止めずに言う。
「あなたがなかなか勤勉であることはわかってます。小さなことにも手を抜かず、時間が空いた時にはよく勉強をしていることもね。これでも私はあなたたちの監督官的立場ですから」
「じゃあ、どうして……」
『つまりだな。お前はもう、父上に呼ばれない可能性が高いってことだ』
嬉しかった。ローラには申し訳がないし、私だけいいんだろうかという罪悪感もあるが、それでもやはり、嬉しかった。ずっと心にのしかかっていた重りが、急に取り払われたような気持ちだった。
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「ブレアナ。大公様から、寝室に参上せよとの命令が下りました。速やかに支度して向かいなさい」
ジェームス様にそう言われたのは、フレッド様に『お前はもう、父上に呼ばれない可能性が高い』と教えられてから、ちょうど一週間後のことだった。
大公家に来てから一ヶ月を大きく過ぎ、本当にもう呼ばれることはないと信じつつあっただけに、私の受けた衝撃は強烈だった。数秒間眩暈がし、絶望感も覚えたが、それと同時に、不思議な安堵感もあった。
その安堵感は、『これでローラを裏切らずに済む』という、友情に近いものだった。
これまでの人生でもそれなりに友達はいたが、ローラのように寝食を共にし、同じ苦しみを分かち合った本当の仲間は初めてであり、その『本当の仲間』が生贄のように大公様の寝室に呼ばれたのに、私だけが何もされずに済むということに、やっぱり罪の意識があったのだ。
だから私は、静かに「わかりました」とだけジェームス様に答え、身支度を始めた。あるいはアマンダのように、やたらと濃い化粧をして遅刻をすれば、怒った大公様にすぐ寝室を追い出され、何もされずに済むかもしれないが、そういった小細工もまた、正々堂々と大公様の元に向かったローラへの裏切りとなるので、する気はなかった。
淡々と、そして粛々と。ローラともアマンダとも口をきかず、手早く準備を終えた私は、無垢なる生贄の白い衣装を身にまとい、大公様の寝室へ向かって歩き始めた。そんな私をジェームス様が先導する。私はほとんど足音を立てずに歩きながら、静かに言った。
「先導されなくても、大公様の寝室の場所くらい知ってますよ。これでも、日々メイドとして勉強して、大公家の間取りはすべて把握してますから」
ジェームス様は、ちらりとこちらを振り返り、足を止めずに言う。
「あなたがなかなか勤勉であることはわかってます。小さなことにも手を抜かず、時間が空いた時にはよく勉強をしていることもね。これでも私はあなたたちの監督官的立場ですから」
「じゃあ、どうして……」
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