2 / 11
第2話
しおりを挟む
……酒だよ。
それも、熊でも酔っぱらっちまうような、飛び切り強い酒だ。
信じられるか?
明らかに貴族って感じのお嬢様が、高級ラウンジで、まっ昼間っから酒なんてよ。
貴族ってやつは、アホかと思うほど体面を重視するから、こんな目立つ店で、明るいうちから酒をあおっちまったら、あっという間に悪い噂が立つ。俺みたいに、口の軽い店員がいるからね。
しかし黒髪のお嬢様は、そんなこと、どうでもいいって感じだった。ご丁寧に、「本当によろしいのですか?」と確認する俺に、チップまで渡して、「大急ぎで持ってきて」って頼んだんだ。
その時の目つきが、また怖くってさ。
まさしく、『目がすわってる』って感じ。
チップも貰ったし、これ以上ごちゃごちゃ言うと引っぱたかれそうだったから、俺は、カウンターに引っ込んだ。それから、厨房に、デイモンドとジェリーナが注文した軽食を用意するように伝え、俺自身は、黒髪のお嬢様にお出しする酒のボトルを、棚から出したんだ。
その時さ。
また『この三人組、変だな』って思ったんだよ。
だって、おかしいだろ?
三人のうち、一人が昼間っから強い酒をやろうとしてるのに、他の二人は、何とも言わないんだぜ? 二人は、黒髪のお嬢様を、まるで『いないもの』みたいに扱って、楽しくおしゃべりを続けてるんだ。だから俺、思ったんだよ。もしかして、この黒髪のお嬢様は、俺だけに見えてる、幽霊みたいなもんなのかもしれないって。
えっ?
幽霊なんているわけないじゃないかって?
あんたに言われなくても、そんなことわかってるよ。
俺がその時、そう思ったってだけよ。
まったく、話の途中で、茶々入れないでくれよな。
……ええっと、どこまで話したっけ。
あ、そうそう。酒を棚から出したところまでだな。
デイモンドとジェリーナが注文した軽食が調理し終わるまでには、少しだけ時間がかかるから、まずは、二人が注文した紅茶と、黒髪のお嬢様が頼んだ酒だけを、俺は持って行ったんだ。
紅茶を受け取った、デイモンドとジェリーナの優美な仕草は、見事だった。流石、貴族って感じだったよ。……そして、酒を受け取った黒髪のお嬢様の行動は、凄かった。
……もう一度言うけどよ。彼女に渡したの、凄い酒なんだぜ?
大男でも、グラス一杯で酔いつぶれるくらいのさ。
その、凄い酒をよ。
一気飲みしちゃったんだよ。
誰がって?
黒髪のお嬢様に決まってんだろ。
これにはさすがに、デイモンドとジェリーナもビックリしたみたいでさ。あんぐり口を開けて、黒髪のお嬢様を見てたよ。口の中の、センスの良い紅茶の味なんか、吹っ飛んじまっただろうな。
それも、熊でも酔っぱらっちまうような、飛び切り強い酒だ。
信じられるか?
明らかに貴族って感じのお嬢様が、高級ラウンジで、まっ昼間っから酒なんてよ。
貴族ってやつは、アホかと思うほど体面を重視するから、こんな目立つ店で、明るいうちから酒をあおっちまったら、あっという間に悪い噂が立つ。俺みたいに、口の軽い店員がいるからね。
しかし黒髪のお嬢様は、そんなこと、どうでもいいって感じだった。ご丁寧に、「本当によろしいのですか?」と確認する俺に、チップまで渡して、「大急ぎで持ってきて」って頼んだんだ。
その時の目つきが、また怖くってさ。
まさしく、『目がすわってる』って感じ。
チップも貰ったし、これ以上ごちゃごちゃ言うと引っぱたかれそうだったから、俺は、カウンターに引っ込んだ。それから、厨房に、デイモンドとジェリーナが注文した軽食を用意するように伝え、俺自身は、黒髪のお嬢様にお出しする酒のボトルを、棚から出したんだ。
その時さ。
また『この三人組、変だな』って思ったんだよ。
だって、おかしいだろ?
三人のうち、一人が昼間っから強い酒をやろうとしてるのに、他の二人は、何とも言わないんだぜ? 二人は、黒髪のお嬢様を、まるで『いないもの』みたいに扱って、楽しくおしゃべりを続けてるんだ。だから俺、思ったんだよ。もしかして、この黒髪のお嬢様は、俺だけに見えてる、幽霊みたいなもんなのかもしれないって。
えっ?
幽霊なんているわけないじゃないかって?
あんたに言われなくても、そんなことわかってるよ。
俺がその時、そう思ったってだけよ。
まったく、話の途中で、茶々入れないでくれよな。
……ええっと、どこまで話したっけ。
あ、そうそう。酒を棚から出したところまでだな。
デイモンドとジェリーナが注文した軽食が調理し終わるまでには、少しだけ時間がかかるから、まずは、二人が注文した紅茶と、黒髪のお嬢様が頼んだ酒だけを、俺は持って行ったんだ。
紅茶を受け取った、デイモンドとジェリーナの優美な仕草は、見事だった。流石、貴族って感じだったよ。……そして、酒を受け取った黒髪のお嬢様の行動は、凄かった。
……もう一度言うけどよ。彼女に渡したの、凄い酒なんだぜ?
大男でも、グラス一杯で酔いつぶれるくらいのさ。
その、凄い酒をよ。
一気飲みしちゃったんだよ。
誰がって?
黒髪のお嬢様に決まってんだろ。
これにはさすがに、デイモンドとジェリーナもビックリしたみたいでさ。あんぐり口を開けて、黒髪のお嬢様を見てたよ。口の中の、センスの良い紅茶の味なんか、吹っ飛んじまっただろうな。
124
あなたにおすすめの小説
自称聖女の従妹に陥れられ婚約破棄追放されましたが、私が真の聖女だったようです。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『邪悪な人間は守護神が滅ぼすそうですよ』
エドムンド公爵家の令嬢ルイーセは、王家の舞踏会で急に従妹のアストリッドに冤罪をかけられた。分家に生まれたアストリッドは本家のルイーセが妬ましく、いつか陥れたやろうと狙っていたのだ。いや、アストリッドだけでなく父親のダニエルも兄のフレゼリクを陥れてエドムンド公爵の爵位を奪おうと狙っていたのだ。アストリッドが聖女を自称し、ダニエルが伯爵家の権力と金を使ってアストリッドの神託を実現されるとい行為で徐々に周りを信用させていた。そして堕落した教会を味方につけてルイーセに悪魔と情を通じたというとんでもない冤罪を被せたのだった。
婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」
佐藤 美奈
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」
アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。
「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」
アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。
気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
婚約者を奪っていった彼女は私が羨ましいそうです。こちらはあなたのことなど記憶の片隅にもございませんが。
松ノ木るな
恋愛
ハルネス侯爵家令嬢シルヴィアは、将来を嘱望された魔道の研究員。
不運なことに、親に決められた婚約者は無類の女好きであった。
研究で忙しい彼女は、女遊びもほどほどであれば目をつむるつもりであったが……
挙式一月前というのに、婚約者が口の軽い彼女を作ってしまった。
「これは三人で、あくまで平和的に、話し合いですね。修羅場は私が制してみせます」
※7千字の短いお話です。
聖女の魔力を失い国が崩壊。婚約破棄したら、彼と幼馴染が事故死した。
佐藤 美奈
恋愛
聖女のクロエ公爵令嬢はガブリエル王太子殿下と婚約していた。しかしガブリエルはマリアという幼馴染に夢中になり、隠れて密会していた。
二人が人目を避けて会っている事をクロエに知られてしまい、ガブリエルは謝罪して「マリアとは距離を置く」と約束してくれる。
クロエはその言葉を信じていましたが、実は二人はこっそり関係を続けていました。
その事をガブリエルに厳しく抗議するとあり得ない反論をされる。
「クロエとは婚約破棄して聖女の地位を剥奪する!そして僕は愛するマリアと結婚して彼女を聖女にする!」
「ガブリエル考え直してください。私が聖女を辞めればこの国は大変なことになります!」
「僕を騙すつもりか?」
「どういう事でしょう?」
「クロエには聖女の魔力なんて最初から無い。マリアが言っていた。それにマリアのことを随分といじめて嫌がらせをしているようだな」
「心から誓ってそんなことはしておりません!」
「黙れ!偽聖女が!」
クロエは婚約破棄されて聖女の地位を剥奪されました。ところが二人に天罰が下る。デート中にガブリエルとマリアは事故死したと知らせを受けます。
信頼していた婚約者に裏切られ、涙を流し悲痛な思いで身体を震わせるクロエは、急に頭痛がして倒れてしまう。
――目覚めたら一年前に戻っていた――
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
酔って婚約破棄されましたが本望です!
神々廻
恋愛
「こ...んやく破棄する..........」
偶然、婚約者が友達と一緒にお酒を飲んでいる所に偶然居合わせると何と、私と婚約破棄するなどと言っているではありませんか!
それなら婚約破棄してやりますよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる