【完結】懸命に働いた結果、無実の罪で魔王への生贄にされた聖女。でも、その『氷華の魔王』様に溺愛され、誰よりも幸福な人生を手に入れました。

小平ニコ

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第12話





 マリエラが魔王レオナールの妃となる人間であることは、魔王国グレスウェアの民に向けて大々的に公表された。その後、「お妃さまの柔和なお顔を実際に拝見した方が、臣民も安心しましょう」という重臣たちの進言もあり、マリエラはレオナールのおこなうあらゆる公務に同席した。

 レオナールは当初、これに反対だった。

「ただでさえ、慣れぬ土地で疲れがたまりやすいだろうに。きみにそこまでの負担を強いたくはない。マリエラ、きみは自由だ。きみが望むなら何をしてもいいが、きみが望まないなら、何もしなくてもいいのだよ」

(レ、レオナール様のお気持ちは嬉しいけど、過保護すぎるわ……)

 本当に、気持ちは嬉しかったが、生来の働き者であるマリエラにとって、何もせずに無為な時間を過ごすことは、たまにならばいいが、ずっと続くならばそれは拷問に等しい。

 その気持ちを素直に伝え、しばらくの間マリエラはレオナールと常に行動を共にすることとなった。最初は心配していたレオナールも、精力的に活動していた方がマリエラが幸せそうであることをすぐに悟り、これ以上あれこれ言うのをやめた。

 そして、マリエラの幸せはレオナールの幸せだ。二人の幸福そうな仲睦まじい姿は、公務を通して自然と国民の目に映るようになった。

 その効果はてきめんで、「聖王国から突然やってきた女が、魔王様の妃――つまり、自分たちの上に立つ王妃となるなんて、いったいどういうことだ?」といぶかしんでいた者たちも、マリエラのレオナールに対する敬意ある態度と、公務中の民衆への優しい立ち振る舞いから、彼女の心に魔王国の人々を蔑む気持ちが一切ないことを理解した。

 それだけではなく、自分たちの敬愛する魔王レオナールが、何よりもマリエラを大切にしていることを知り、「これは良い結婚だ」と納得したのである。

 マリエラにとっても、まだまだ未知の部分が多いレオナールと共通の時間を過ごすことによって、彼の人となりを良く知ることができたのは大きかった。

 マリエラに対する溺愛ぶりと、先日オルムスト聖王国で見せた冷酷さのギャップで、レオナールの人格の本質がどういうものなのか完全には測りかねていたが、彼の本質は『実直』と『高潔』――この二言に尽きると言っても良かった。

 冷酷な面もあるが、常に臣民のことを考えており、本来であれば、権力者がわざわざおこなうまでもない視察や、民衆のささいな不安や悩みを解決することに対しても、レオナールは全力で心を砕いていた。

(もう何度も思ったことだけど、本当に、レオナール様は何もかもウィルハルド王太子とは大違いだわ。同じ権力者でも、こうも違うのね……)

 オルムスト聖王国で、責任らしい責任も果たさず、特権だけを享受している王族や貴族ばかり見てきたマリエラにとって、己の役割を懸命に果たすレオナールの姿は、純粋に尊敬でき、好ましい相手として映った。同時に、いくらなんでも働きすぎではないかと心配にもなった。

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