二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第36話

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「い、いや、くっついて来られても困るわ。私、あなたのこと鍛える気なんて、ないわよ。誰かに何かを教えるのとかって、苦手な方だし……」

「そうですか。私の弟子入りを、認めてくださるのですね。ありがとうございます」

「全然認めてないわよ!? 今の話の流れで、どうやったらそういう解釈になるの!? あなた、人の話聞いてないでしょ!?」

「まあまあ、落ち着いてください。もちろんタダとは言いません。聖女様の貴重な経験や技術を教わるのですから、それに見合った『指導料』的なものは、当然お支払いします。……よいしょっと」

 そう言うとエリスは、首にかかっていた細いペンダントを取り外した。

 ……先程までは、ペンダントの大部分が、エリスの大きな胸の中に埋まっていたので気がつかなかったが、ペンダントの先端――トップ部分には、親指ほどのサイズの、翡翠色の宝石がつけられている。

 その翡翠色の宝石の、あまりの美しさに、私は目を奪われた。

「綺麗ね……夜の闇の中でもぼんやり光ってて、まるで、地上の星みたい……私、貴金属とか、アクセサリーとか、あんまり興味ない方だけど、この宝石が素晴らしい逸品なのは、なんとなくわかる……」

 うっとりとした様子でそう言う私に、エリスは微笑んだ。

「これは、エルフィン・ジェイダイト。エルフの里でのみ採掘される、非常に貴重な宝石です。この、親指サイズの大きさでも、ちゃんとした宝石商に頼んで換金してもらえば、立派なお屋敷を購入できるほどの価値があります」

「へえ~……そうなの……本当に綺麗だわ……」

「気に入ってもらえて嬉しいです。これ、私に対する『指導料』として、ディーナ様に差し上げますね」

「え゛っ!?」

 驚きで、一瞬みっともない声を出してしまった。
 いや、でも、こ、これ、これ、こんな凄い物、本当に、貰っていいの?

 いやいやいやいや。
 待て待て待て待て。

 これを受け取ってしまったら、エリスの弟子入りを認めることになってしまう。それは困る。私、弟子なんか取る気ないし、誰かに武術の指導をする気もないんだから。

 いや。
 しかし。

 この、目の前で妖しく輝くエルフィン・ジェイダイトの翡翠色の輝き……
 その誘惑から、目を背けることができない……

 ああ……
 私も、なんだかんだ言って、女なのね……

 美しい宝石の魔力に魅了され、私はとろんとした瞳で、頷いた。

「ハイ……ワカリマシタ……ワタシ……アナタノデシイリ……ミトメマス……」

 口から出た言葉は、何故かカタコトだった。

「わぁ、ありがとうございます、ディーナ様……いえ、お師匠様! これからよろしくお願いしますね!」

 こうしてエリスは、正式に私の弟子ということになってしまったのだった。
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