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第64話
「約束? なんの?」
「忘れたのか? お前が果し合いに勝ったら、『迷惑料として、手持ちの現金をすべて払う』と約束しただろう」
ああ、そう言えば、そんな約束してたわね。
私は少し考えてから、その袋を押し返すようにして、言う。
「やっぱりいいわ。別に今のところ、お金には困ってないし」
ラジアスは、少しだけ寂しそうに笑った。
「俺からの金など、いらないか?」
私は小さく首を左右に振り、微笑む。
「そうじゃないわ。そのお金は、冒険の旅を続けるために必要でしょ? これから、新しいメンバーも集めなきゃならないでしょうし、受け取ることはできないわ」
「気持ちはありがたいが、お前には随分と迷惑をかけたことだしな……」
「もう、すんだことよ。それに……」
「それに?」
「勇者パーティーを抜けて、今まで思いもしなかったことを考えるようになったり、まあ、色々と良い経験になったのよ。こういうの、視野が広がったって言うのかしら? だから、プラスマイナスゼロって感じなの」
「プラスマイナスゼロなら、金を受け取っておいた方が、プラスになっていいんじゃないのか?」
「あなたも結構食い下がるわね。いいのよ。かつての仲間からお金を巻き上げることがプラスだなんて、私、思わないもの。それより、少しだけど、あなたとの関係が良くなったことの方が嬉しいわ」
「そうか……勇者パーティーの名誉にも、金にも執着しない……まさに偉大なる聖女だ。俗な俺には、真似できん生き方だな。……それでは、さらばだ、ディーナよ。もう二度と会うことはないだろうが、達者でな」
「ええ、あなたもね」
そして私とラジアスは、固い握手を交わし、別れた。ラジアスの姿が街道の向こうに消えたころ、遠くで私たちのやり取りを見守っていたエリスが寄って来る。エリスは大きな胸の前で腕を組み、何度も頷きながら、しみじみと言う。
「激闘を終えた男同士の友情……そして、男の別れ……いいものですね……」
「私、女なんだけど……」
こうして、勇者ラジアスとの因縁に、決着がついたのだった。
・
・
・
ラジアスと決死の果し合いをしてから、一ヶ月が過ぎた。
私は現在、エリスに武術の指導をしながら、彼女と二人旅をしている。
旅の目的地は、エリスの故郷『エルフの里』だ。
エリスは約一年前、父親の仇を探すためにエルフの里を飛び出し、それ以来一度も帰郷していないとのことだったので、私が『たまには帰った方がいいのでは?』とアドバイスしたところ、素直に言うことを聞いてくれたのである。
「忘れたのか? お前が果し合いに勝ったら、『迷惑料として、手持ちの現金をすべて払う』と約束しただろう」
ああ、そう言えば、そんな約束してたわね。
私は少し考えてから、その袋を押し返すようにして、言う。
「やっぱりいいわ。別に今のところ、お金には困ってないし」
ラジアスは、少しだけ寂しそうに笑った。
「俺からの金など、いらないか?」
私は小さく首を左右に振り、微笑む。
「そうじゃないわ。そのお金は、冒険の旅を続けるために必要でしょ? これから、新しいメンバーも集めなきゃならないでしょうし、受け取ることはできないわ」
「気持ちはありがたいが、お前には随分と迷惑をかけたことだしな……」
「もう、すんだことよ。それに……」
「それに?」
「勇者パーティーを抜けて、今まで思いもしなかったことを考えるようになったり、まあ、色々と良い経験になったのよ。こういうの、視野が広がったって言うのかしら? だから、プラスマイナスゼロって感じなの」
「プラスマイナスゼロなら、金を受け取っておいた方が、プラスになっていいんじゃないのか?」
「あなたも結構食い下がるわね。いいのよ。かつての仲間からお金を巻き上げることがプラスだなんて、私、思わないもの。それより、少しだけど、あなたとの関係が良くなったことの方が嬉しいわ」
「そうか……勇者パーティーの名誉にも、金にも執着しない……まさに偉大なる聖女だ。俗な俺には、真似できん生き方だな。……それでは、さらばだ、ディーナよ。もう二度と会うことはないだろうが、達者でな」
「ええ、あなたもね」
そして私とラジアスは、固い握手を交わし、別れた。ラジアスの姿が街道の向こうに消えたころ、遠くで私たちのやり取りを見守っていたエリスが寄って来る。エリスは大きな胸の前で腕を組み、何度も頷きながら、しみじみと言う。
「激闘を終えた男同士の友情……そして、男の別れ……いいものですね……」
「私、女なんだけど……」
こうして、勇者ラジアスとの因縁に、決着がついたのだった。
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ラジアスと決死の果し合いをしてから、一ヶ月が過ぎた。
私は現在、エリスに武術の指導をしながら、彼女と二人旅をしている。
旅の目的地は、エリスの故郷『エルフの里』だ。
エリスは約一年前、父親の仇を探すためにエルフの里を飛び出し、それ以来一度も帰郷していないとのことだったので、私が『たまには帰った方がいいのでは?』とアドバイスしたところ、素直に言うことを聞いてくれたのである。
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