二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

文字の大きさ
66 / 389

第66話

 エリスも喜んでるみたいだし、別にこのまま、ダメ人間のままでもいいか……

 私もこれまでの人生……けっこう張り詰めて生きてきたほうだと思うし、少しくらい甘えた生き方をしたって、バチは当たらないわよね……あぁ~……マッサージ気持ちいい~……お酒も美味しい~……堕落最高~……

 って、駄目よ駄目駄目。ここで甘ったれた自分を許してしまったら、もう人として、際限なく落ちて行ってしまう気がする。……それにしても、『もっとちゃんとしないと』と言ったばかりなのに、すぐさま堕落しそうになるとは。どうやら私は、甘やかしてくれる人がそばにいると、あっという間に駄目になってしまうタイプらしい。

 こうなったら、自分で自分を厳しく扱うしかない。
 甘ったれてしまった心のリハビリをするのよ。

 そのために最も有効なのは、『働くこと』だ。
 何でも人に世話をさせる甘ったれには、労働が一番の薬だもんね。

 私は、エリスにマッサージをやめさせ、決意を込めて言う。

「エリス、確か明日も、冒険者ギルドの依頼を片付けに行くのよね? 私も同行させてもらっていいかしら? 私、冒険者の仕事ってよく分からないけど、戦闘系の依頼なら、多少は役に立てると思うんだけど……」

 エリスは母性溢れる笑顔を浮かべ、首を左右に振った。

「いえいえそんな、冒険者ギルドの依頼は、けっこう汚れることもありますし、お師匠様ほどの方がわざわざ同行するようなものではありません。お気持ちだけいただいておきます」

「で、でも……」

「お師匠様はいつも通り、私が戻るまで、カフェかエステで優雅な時間を過ごしていてください。はい、これ、明日の分のお小遣いです」

「わ~い、やった~、お小遣いもらっちゃった~……って、やめて! これ以上私を甘やかさないで! と、とにかく、明日は絶対、私も同行するからね!」

「は、はぁ……わかりました……」





 そして翌日。

 私は半ば無理やりついて行くような形で、エリスに同行した。

 甘ったれた根性を叩きなおすため、必要以上に気合を入れ、肩を怒らせて歩く私。そんな私に、困ったような笑みを向け、エリスは言う。

「お師匠様。くどいようですが、今回の依頼は、お師匠様ほどの方が関わるようなものでは……」

 その言葉を遮るように、私はキャンキャンと吠える。

「いや、行く! 何と言われようと帰らない! 絶対行くからね!」

「わ、わかりました。でも、ただのゴブリン退治ですから、一緒に行ってもつまらないと思いますよ?」

「へえ、ゴブリン退治。それって、言うまでもないけど戦闘系の依頼よね。それならなおさら、あなた一人より、私と二人の方が安全で確実じゃない」
感想 288

あなたにおすすめの小説

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中