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第139話
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そんな私たちに、少女は若干呆れたような声で言う。
「何しとる。はよこっちにこんか。ワシに聞きたいことがあって、来たんじゃろう? ストッフェンの小僧から、話は聞かされておるよ。ほれ、何が知りたい。未来のことか? 過去のことか?」
その言葉で、私たちははたと我に返った。
ワシに聞きたいことがあって、来たんじゃろう――
ストッフェンの小僧から、話は聞かされておる――
……今の文言から察するに、この子が、エルフ族最高の巫女、ヒヒロミカらしい。今年で2000歳を超える高齢ということだが、その容貌はどう見ても11歳から12歳程度だ。
いくら長命のエルフ族でも、年を取れば、外見もそれに伴って老化していく。2000歳ともなれば、少なくとも少女のままではいられないはずだ。……もしかして、本当はまだ全然若いのに、箔をつけるために『ワシは2000歳じゃ』って言い張ってるだけだったりして。
そんなことを思っていると、ヒヒロミカは口をへの字に曲げて、文句を言う。その態度は、まさしく子供そのものだが、小さな唇から発せられる言葉には、妙な威厳と迫力があった。
「たわけ。年齢を若く言うならともかく、わざわざ多く偽り、年寄りだと思われたがる奴がどこにおる。だいたい、ワシくらいの偉大な巫女であれば、これ以上『箔をつける』必要などないわ」
その迫力に、私は思わず頭を下げる。
「す、すいません。……あの、もしかして、私が今考えていたこと、ヒヒロミカ様にとっては、全部お見通しだったりするんですか?」
ヒヒロミカは「うむ」と頷き、言葉を続けていく。
「『今考えていたこと』だけではないぞ。こうして対面したことで、お前のことはだいたいわかった。……聖女ディーナ、お前もなかなかに過酷な運命を背負って生きてきたようじゃな。様々な苦難を乗り越えた、その強さと精神力は、敬服に値するぞ」
私は、ゴクリと唾を飲んだ。
ヒヒロミカが、どこか憐れむような、深い慈悲を込めた瞳で、私をじっと見たからだ。それは本当に、すべてを見通す千里眼のような眼差しだった。
……恐らく、いや、間違いなく、彼女は私と対面しただけで、私の半生を読み取ってしまったのだろう。私は理屈抜きで、そう確信した。ヒヒロミカの透き通った瞳と語り口には、疑うことなどできない、真実の異能だけが持つ凄味があったからだ。
「何しとる。はよこっちにこんか。ワシに聞きたいことがあって、来たんじゃろう? ストッフェンの小僧から、話は聞かされておるよ。ほれ、何が知りたい。未来のことか? 過去のことか?」
その言葉で、私たちははたと我に返った。
ワシに聞きたいことがあって、来たんじゃろう――
ストッフェンの小僧から、話は聞かされておる――
……今の文言から察するに、この子が、エルフ族最高の巫女、ヒヒロミカらしい。今年で2000歳を超える高齢ということだが、その容貌はどう見ても11歳から12歳程度だ。
いくら長命のエルフ族でも、年を取れば、外見もそれに伴って老化していく。2000歳ともなれば、少なくとも少女のままではいられないはずだ。……もしかして、本当はまだ全然若いのに、箔をつけるために『ワシは2000歳じゃ』って言い張ってるだけだったりして。
そんなことを思っていると、ヒヒロミカは口をへの字に曲げて、文句を言う。その態度は、まさしく子供そのものだが、小さな唇から発せられる言葉には、妙な威厳と迫力があった。
「たわけ。年齢を若く言うならともかく、わざわざ多く偽り、年寄りだと思われたがる奴がどこにおる。だいたい、ワシくらいの偉大な巫女であれば、これ以上『箔をつける』必要などないわ」
その迫力に、私は思わず頭を下げる。
「す、すいません。……あの、もしかして、私が今考えていたこと、ヒヒロミカ様にとっては、全部お見通しだったりするんですか?」
ヒヒロミカは「うむ」と頷き、言葉を続けていく。
「『今考えていたこと』だけではないぞ。こうして対面したことで、お前のことはだいたいわかった。……聖女ディーナ、お前もなかなかに過酷な運命を背負って生きてきたようじゃな。様々な苦難を乗り越えた、その強さと精神力は、敬服に値するぞ」
私は、ゴクリと唾を飲んだ。
ヒヒロミカが、どこか憐れむような、深い慈悲を込めた瞳で、私をじっと見たからだ。それは本当に、すべてを見通す千里眼のような眼差しだった。
……恐らく、いや、間違いなく、彼女は私と対面しただけで、私の半生を読み取ってしまったのだろう。私は理屈抜きで、そう確信した。ヒヒロミカの透き通った瞳と語り口には、疑うことなどできない、真実の異能だけが持つ凄味があったからだ。
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