二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第326話(ノエル視点)

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 親睦パーティーの翌日。

 今日はタマちゃんと、昨日、私がぶつかってしまったドラム・ゼファーさんが試合をする日です。試合日程はコーチから聞かされていたので、あらかじめ分かってはいましたが、これ以上ない、最悪のタイミングです。

 せめて、あと三日。いいえ、二日あれば、タマちゃんは昨日のことを、忘れてくれたかもしれないのに。昨日の今日ではどうしようもありません。

 あのパーティーの後、私はタマちゃんのご機嫌を取るために、大好きなケーキを作ってあげて、一緒に美味しい紅茶を飲んで、いっぱい遊んであげたけど、絶対にタマちゃんは、私がドラムさんにされたことを、忘れていない。

 このままじゃ、大変なことになっちゃう。
 私の胸は、不安と心配で張り裂けそうでした。

 なんとかして、試合を止めなきゃ。

 そう思っても、私の一存で、もう組まれてしまった試合を、止めることなどできるはずもありません。日程を遅らせることも、まず無理です。コーチにも相談しましたが、『タマラの振る舞いに特に異常はない。最近は薬の量も増やしているし、今回は、きっと大丈夫だよ』と、軽く流されてしまいました。

 だけど、私にはわかるんです。
 今のタマちゃんをリングにあげたら、絶対に、恐ろしいことが起こるって。

 どうしよう。
 どうしよう。
 どうしよう。

 ……そうだ、ドラムさんに棄権してもらえばいいんだ。
 思いついてから、それも不可能な案であると気がつきました。

 私がどれだけ頭を下げてもあの人は棄権しないでしょうし、正直に言って、もう一度あの人の前に立つ勇気は私にはありません。

 でも、なんとかしなきゃ……
 うううう、頭が痛い……
 最近、ストレスを感じると、すぐに頭痛になる……

 私、もしかしたら、病気なのかもしれません。

 いえ、今は、私のことなんてどうだっていい。
 目の前の、試合のことです。
 タマちゃんの心を安定させるのが、私の大切な役目なんですから。

 迷った挙句、私はひたすらタマちゃんに言い聞かせました。
『絶対に、やり過ぎないでね』って。

 タマちゃんは、『わかったよ』と言いました。
 私は、『約束だよ』って、指切りしました。

 夜になり、試合時間が迫ってきました。
 エリートアカデミーの職員さんたちと共に、タマちゃんは宿舎を出発します。

 私はお留守番です。

 私は、部屋を出ようとするタマちゃんに、聞きました。
『指切りした約束、覚えてる?』って。

 タマちゃんは、言いました。

『忘れちゃった』って。

 ドアを閉め、タマちゃんは出ていきました。
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