[完結]悪役令嬢様。ヒロインなんかしたくないので暗躍します

紅月

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緊張で胃が死ぬ。回れ右して良いですか?

放り込まれたバロー家の馬車には当然公爵様もいらして、物凄く良い笑顔で

「ラティナ嬢、そろそろわしの事をウィリアムおじ様と呼んでくれないか?」

と、仰った。
バロー公爵閣下をそんな馴れ馴れしい呼び方、無理です。

「お父様、ラティナはいまだにわたくしの事も様付けで呼ぶのに、狡いですわ」

公爵令嬢のエメリア様を呼び捨て?
無茶に決まってます。

バロー公爵親子に挟まれ、私は緊張で頭が真っ白になりそうです。
男爵家の私が王宮に連れて来られただけでも焦っているのに、なんの拷問ですか?

「バロー公爵閣下。あの、何故私まで王宮に?」
「ウィリアムおじ様だよ。ラティナ嬢」

無理です。泣いていい?
泣きたいのに、私の表情筋は通常運転で淑女の笑みをキープしてます。
お母様の指導は偉大です。

「やれやれ、ラティナ嬢は義理堅いね。此処に来たのはレナード王太子殿下が君に会いたい、と望まれたからだ」

い、今すぐ回れ右してもいいですか?

「そうよ、ラティナ。レナード王太子殿下は貴女に感謝していらっしゃるの」

バーナード殿下達の事ですか……。
半分以上はラウル伯爵のお陰なんですけどね。


馬車はあっという間に王宮に着き、長い廊下を案内の女官が恭しく先導し、豪奢な扉の前に立つと護衛官が当然のように扉を開けてくれた。

執務室や謁見の間の様な場所じゃ無い所を考えれば、此処、王太子殿下のプライベートルーム!
今すぐ回れ右したい。

「やっと会えた。君の事はカインから何度も聞いていたけど、直接会って礼を言いたかったんだ」

自信に溢れ、為政者として堂々とした姿を見せながら屈託なく笑うレナード王太子殿下は見惚れるほどの方だ。
でも緊張で胃が痛い。

何故、此処にレナード王太子殿下だけでなく、ユーシス殿下やラウル伯爵まで居るんですか?
お兄様、ちゃんとこっちを見て、説明して下さい。

「モルディアの若き太陽、レナード王太子殿下にご挨拶申し上げます。私はロレンス男爵の娘ラティナと申します」

噛まないで挨拶できただけでもお兄様、後で褒めて下さい。

「初めまして、ロレンス男爵令嬢。ごめんね、私だけのつもりだったんだが、2人に押し掛けられたんだ」

優雅にソファから立ち上がり、此方に歩きながら状況を説明して下さるレナード王太子殿下の柔らかな口調で緊張は少し和らいだが、自らお茶会の席にエスコートされると胃がキリキリと痛むんですけど。
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