堀川零。

坂伊京助。

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~三日目前の雨衣氏別荘~

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 その屋敷は青々と生い茂った森の中にひっそりと存在していた。外観は古めかしい日本家屋の様でもありながら屋根からはレンガ造りの煙突が伸びている。正面の観音開きの扉を開けるとその内装は、外観とは打って変わって西洋の館を想像させる造りとなっている。一階は、正面から右側に部屋が一つと四隅にそれぞれ小さな部屋があるが現在は、半分物置状態になっている。そして反対側には小さな厨房が一つある。建物の中に入って正面にある階段を上り二階へ行くと一人で使うのには少し広い部屋が四つ。
 その日、雨衣氏の別荘には四人の訪問者があった。一人目は、笠井聡、三十五歳、男性。笠井は、雨衣貞彦の秘書をしていた男。笠井聡は、仕事ができる部類の人間で雨衣からの信頼も厚く、同僚からも一目置かれている。笠井自身も雨衣の事を心から尊敬していて雨衣の下で働いていることを誇りに思っている。
 二人目は、絹谷淳、二十六歳、男性。若き研究者で、絹谷の研究に雨衣は多額の資金援助をしていた。そして絹谷の研究が認められ権威のある賞を受賞することができた。受賞後のメディアの取材でも雨衣への感謝を述べている。三人目は、古志谷志保、二十八歳、女性。古志谷は、雨衣本人がライバル会社から直接ヘッドハンティングをしてきた敏腕の営業。部下の育成にも大変、長けていて上司や同僚からの信頼もある。ヘッドハンティングをされた際に一度は断ったが、雨衣からの熱烈なアピールに最後は首を縦に振った。四人目は、雨衣健二、四十歳、男性。雨衣貞彦の息子、四十歳にして今だに定職にも就かずにいるが、ただの遊び人という訳ではなく。アルバイトなどで資金を貯めては、発展途上国の子どもに勉強を教えている。そして、貞彦を除く親族からは一族の面汚しと言われ忌み嫌われている。しかし、貞彦だけは密かに健二の味方をしている。五人目は、眞田正樹、十九歳、男性。眞田は、絵描きを目指して新聞配達のバイトなどをしながらプロの絵描きを目指している青年である。貞彦が屋敷の完成をしに足を運んだ時に眞田の姿を目にし、その一生懸命さに心を打たれて話しかけたことが二人が知り合ったきっかけである。
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