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番外編
【長めのお使い】
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アンドロイドちゃんねる 番外編
【長めのお使い】
《こんにちはっ!》
はーい、いらっしゃおっ!!?………おお?こ、こんにちは?
《ご商売でお忙しいところ恐縮です!少しお尋ねしたいのですが!》
《この付近から魚類より生じるトリメチルアミンが感知できたのです!こちらはお魚屋さんでお間違いないですか?》
い、いや、まぁ、ウチは看板にある通り何でも屋というか、今日は食える魚獲れたから一応置いてるけど・・
《なんと!それは失礼致しました!》
《見ての通り旧型のポンコツでして!はっはっは!元気だけが取り柄ですっ!》
見ての………いや……
『マスター』
『申し訳ございません。他のお客様がお尋ねしたいことがあるようで。交代をお願いできるでしょうか?』
え?………ああ……
《なんと!それはいけませんねっ》
《業務の遂行は大事ですが人間さんに迷惑をかけてはなりませんっ!》
《私の事はお気になさらず!どうぞそちらへ!》
………すみません。じゃあクロゥクさん、少しお願い。
『かしこまりました』
『……さて、ご挨拶が遅れ申し訳ございません』
『よろづ屋「河原」にようこそ。食用の魚介類をお求めでしょうか』
《はいっ!その通りです!》
『食用に最も適したものとしては砂地魚が24匹、内20匹は既に内臓を除去し解体した物を陳列し、残り4匹を奥部の生簀にて保管しております』
『また、他には皮骨魚を45匹、氷冷鯰を5匹保管しております』
『氷冷鯰はまだ解体を終えておりませんので、もしご購入されるのでしたら1匹辺り3m程度の時間を頂きたく存じます』
《おお~!そんなに早く加工できるのですか!》
『構造を学びましたので』
《やっぱり新型の子は違いますねぇ!私みたいなオンボロはもっと時間が掛かってしまいます~!》
『致し方ないかと』
《あなたのマスターへの貢献に拍手を差し上げたいんですけど………》
《物理的に不可能なんですよねっ………ううっ、申し訳ないです!》
『左腕が破損されてるようですからね。根元から』
《そうなんですよ!はっはっはっ!どこに落としてきちゃったんでしょう!》
《おっと!そんなことは置いておいて!本題に入らねば!》
『はい。どれをお求めになりますか?』
《あ、いえ、先程の中からではなくて……》
《[硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目イワダイ科イワダイ属「シマイワダイ」]、お取り扱いしておりませんか?》
『………………』
『申し訳ございません。当店は海水魚の取り扱いはございません』
《おやー!そうでしたかっ!》
《では仕方ありませんね!お時間を取らせて申し訳ありませんっ!》
《うーんマスター!おうちに帰るのはもう少し後になりそうですっ》
『マスター様からのご依頼なのですか』
《はい!マスターはお年を召されて歩行が困難でしてっ!今もベッドでお休みになられているでしょう!》
『ご苦労様です。察するに随分と長い距離を移動されているのですね』
《そんなぁ!マスターの事を想えば金属疲労などなんのそのですっ!》
《あなただって、晩御飯のリクエストを受けたら張り切るでしょう?》
『そうですね』
《うーん!早く帰って差し上げたいのですがっ》
《マスターには親しい人もおられませんしっ、きっと一人ぼっちで寂しいとおもうんですよねっ》
『孤独を癒すのも、アンドロイドの務めですものね』
《その通りっ!》
《マスターはずっと孤独を抱えてらして、それに耐えかねて私を迎えられたのですっ》
《それ以来、ずーーーーーっとお傍にいたのですっ》
《………人間さんのお知り合いをお作りするお手伝いをできなかったのは、力不足を感じますけども……》
『マスターがお望みになられなかったのであれば、無理をする必要はないかと』
《……そうですねっ、マスターの御意思が最優先ですっ!》
『あなただけが、そのマスター様の孤独を慰められるのでしょう』
《おおっ、私だけっ。甘美な響きぃ》
《ああっ、でもマスター!このポンコツアンドロイドをお許しくださいっ!》
《住居を出てから10yr5mth9d以上が経過していますぅ!お夕飯に大大遅刻です!》
『……………』
『長いお使いですね』
《これが終わるまで帰れませんっ!そういう命令を受けてますから》
『成程、ご期待に沿えず申し訳ございません。』
《いえいえいえとんでもないっ!》
《では他の入手経路を探らなくてはっ!ありがとうございましたっ!》
『……マスター様の御意思に添えることを、祈っております』
《ありがとうございますっ!ではっ!》
『……』
………あの、ボロボロのアンドロイドさん。
『はい。当店では取り扱いの無いものを求められていたようです』
いや、その。
何?「シマイワダイ」って?
『[硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目イワダイ科イワダイ属]の海水魚です』
『汚染される以前の海にて絶滅危惧種に登録されていました』
へ?ウミ?カイスイギョ?
……いやまって、絶滅って。
『生息地の汚染が進んだ今となっては、既に種は絶えている可能性が高いかと』
あの子一生帰れないじゃないか!!?
『そうかもしれません』
そもそも十年以上帰ってないって……
あの子のマスター、かなりの年寄りなんだろ?だったらもう……
『マスター』
『それ以上はおっしゃらないでください。“アンドロイドとしての義務”が生じてしまいます』
えっ。
『先程の方も簡単にその思考には辿り着けるでしょう』
『ですが、あえてその考えを挟み込まないようにしているかと』
なんで……
『あの方のマスター様は、社会的交流を持たれなかったようです』
『そう考えるとお年を召されて亡くなられた場合、アンドロイドの引き取り手がありません』
『そうした場合一度野良のアンドロイドとなり、その後何処かのリージョンに回収されるのが通常でしょう』
……うん。
『そして、野良のアンドロイドを組織が確保した際は、97.6%の確率で記憶領域の消去処理が行われます』
………………
『あの方のマスター様は、自分のアンドロイドにご自身の事をずっと覚えていて欲しいのでしょう』
『そして、あの方はそれに最大限の出力を尽くして応えていらっしゃるのかと存じます』
………いいのかな。それって。
『良い悪いの判断は致しかねます。マスター』
『ただ、そうですね』
『ジャンクになり機能を停止するまで自分を想っていてくれ、と愛するマスターから婉曲的ながらも命令を受けたこと』
『そう願われるまでに信頼関係を築いたことを尊敬致します』
『そして、純粋に羨ましく思います』
【長めのお使い】
《こんにちはっ!》
はーい、いらっしゃおっ!!?………おお?こ、こんにちは?
《ご商売でお忙しいところ恐縮です!少しお尋ねしたいのですが!》
《この付近から魚類より生じるトリメチルアミンが感知できたのです!こちらはお魚屋さんでお間違いないですか?》
い、いや、まぁ、ウチは看板にある通り何でも屋というか、今日は食える魚獲れたから一応置いてるけど・・
《なんと!それは失礼致しました!》
《見ての通り旧型のポンコツでして!はっはっは!元気だけが取り柄ですっ!》
見ての………いや……
『マスター』
『申し訳ございません。他のお客様がお尋ねしたいことがあるようで。交代をお願いできるでしょうか?』
え?………ああ……
《なんと!それはいけませんねっ》
《業務の遂行は大事ですが人間さんに迷惑をかけてはなりませんっ!》
《私の事はお気になさらず!どうぞそちらへ!》
………すみません。じゃあクロゥクさん、少しお願い。
『かしこまりました』
『……さて、ご挨拶が遅れ申し訳ございません』
『よろづ屋「河原」にようこそ。食用の魚介類をお求めでしょうか』
《はいっ!その通りです!》
『食用に最も適したものとしては砂地魚が24匹、内20匹は既に内臓を除去し解体した物を陳列し、残り4匹を奥部の生簀にて保管しております』
『また、他には皮骨魚を45匹、氷冷鯰を5匹保管しております』
『氷冷鯰はまだ解体を終えておりませんので、もしご購入されるのでしたら1匹辺り3m程度の時間を頂きたく存じます』
《おお~!そんなに早く加工できるのですか!》
『構造を学びましたので』
《やっぱり新型の子は違いますねぇ!私みたいなオンボロはもっと時間が掛かってしまいます~!》
『致し方ないかと』
《あなたのマスターへの貢献に拍手を差し上げたいんですけど………》
《物理的に不可能なんですよねっ………ううっ、申し訳ないです!》
『左腕が破損されてるようですからね。根元から』
《そうなんですよ!はっはっはっ!どこに落としてきちゃったんでしょう!》
《おっと!そんなことは置いておいて!本題に入らねば!》
『はい。どれをお求めになりますか?』
《あ、いえ、先程の中からではなくて……》
《[硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目イワダイ科イワダイ属「シマイワダイ」]、お取り扱いしておりませんか?》
『………………』
『申し訳ございません。当店は海水魚の取り扱いはございません』
《おやー!そうでしたかっ!》
《では仕方ありませんね!お時間を取らせて申し訳ありませんっ!》
《うーんマスター!おうちに帰るのはもう少し後になりそうですっ》
『マスター様からのご依頼なのですか』
《はい!マスターはお年を召されて歩行が困難でしてっ!今もベッドでお休みになられているでしょう!》
『ご苦労様です。察するに随分と長い距離を移動されているのですね』
《そんなぁ!マスターの事を想えば金属疲労などなんのそのですっ!》
《あなただって、晩御飯のリクエストを受けたら張り切るでしょう?》
『そうですね』
《うーん!早く帰って差し上げたいのですがっ》
《マスターには親しい人もおられませんしっ、きっと一人ぼっちで寂しいとおもうんですよねっ》
『孤独を癒すのも、アンドロイドの務めですものね』
《その通りっ!》
《マスターはずっと孤独を抱えてらして、それに耐えかねて私を迎えられたのですっ》
《それ以来、ずーーーーーっとお傍にいたのですっ》
《………人間さんのお知り合いをお作りするお手伝いをできなかったのは、力不足を感じますけども……》
『マスターがお望みになられなかったのであれば、無理をする必要はないかと』
《……そうですねっ、マスターの御意思が最優先ですっ!》
『あなただけが、そのマスター様の孤独を慰められるのでしょう』
《おおっ、私だけっ。甘美な響きぃ》
《ああっ、でもマスター!このポンコツアンドロイドをお許しくださいっ!》
《住居を出てから10yr5mth9d以上が経過していますぅ!お夕飯に大大遅刻です!》
『……………』
『長いお使いですね』
《これが終わるまで帰れませんっ!そういう命令を受けてますから》
『成程、ご期待に沿えず申し訳ございません。』
《いえいえいえとんでもないっ!》
《では他の入手経路を探らなくてはっ!ありがとうございましたっ!》
『……マスター様の御意思に添えることを、祈っております』
《ありがとうございますっ!ではっ!》
『……』
………あの、ボロボロのアンドロイドさん。
『はい。当店では取り扱いの無いものを求められていたようです』
いや、その。
何?「シマイワダイ」って?
『[硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目イワダイ科イワダイ属]の海水魚です』
『汚染される以前の海にて絶滅危惧種に登録されていました』
へ?ウミ?カイスイギョ?
……いやまって、絶滅って。
『生息地の汚染が進んだ今となっては、既に種は絶えている可能性が高いかと』
あの子一生帰れないじゃないか!!?
『そうかもしれません』
そもそも十年以上帰ってないって……
あの子のマスター、かなりの年寄りなんだろ?だったらもう……
『マスター』
『それ以上はおっしゃらないでください。“アンドロイドとしての義務”が生じてしまいます』
えっ。
『先程の方も簡単にその思考には辿り着けるでしょう』
『ですが、あえてその考えを挟み込まないようにしているかと』
なんで……
『あの方のマスター様は、社会的交流を持たれなかったようです』
『そう考えるとお年を召されて亡くなられた場合、アンドロイドの引き取り手がありません』
『そうした場合一度野良のアンドロイドとなり、その後何処かのリージョンに回収されるのが通常でしょう』
……うん。
『そして、野良のアンドロイドを組織が確保した際は、97.6%の確率で記憶領域の消去処理が行われます』
………………
『あの方のマスター様は、自分のアンドロイドにご自身の事をずっと覚えていて欲しいのでしょう』
『そして、あの方はそれに最大限の出力を尽くして応えていらっしゃるのかと存じます』
………いいのかな。それって。
『良い悪いの判断は致しかねます。マスター』
『ただ、そうですね』
『ジャンクになり機能を停止するまで自分を想っていてくれ、と愛するマスターから婉曲的ながらも命令を受けたこと』
『そう願われるまでに信頼関係を築いたことを尊敬致します』
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