駄目ゲーム部活動記録!

よなぷー

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 有働部長が手を持ち上げる。

「それでは――」

 空を手刀で切り裂いた。

「始め!」

 谷川がスタートボタンを押した。画面が宇宙空間に切り替わる。まずは4機編隊を組んで飛んでくる敵機を弾丸で撃破した。すると後に残ったのはパワーカプセル1個。谷川の自機、ビックバイパーがそれを獲得し、画面下部のゲージの左端が点灯した。すかさずそのブロックのパワーアップである「スピードアップ」を行なう。自機の動きが速くなった。

「が、頑張るもんね、おいどん!」

 谷川はノリノリだ。パワーカプセルを持っている敵いない敵、一機も撃ちもらさず撃破していく。攻撃力が飛躍的に高まる「オプション」までゲージを進め、パワーアップした。オレンジ色の無敵の球体がショットを放ちながら、ビックバイパーの後をついてくる。

 空中戦が終わり、大陸に入った。火山に激突しないよう注意しながら、宙を飛行するザコ、陸地を歩いてくるザコをいちいち倒していく。得点勝負なのだから一機たりとて逃がすわけにはいかない。

 火山の隙間となる細長い空白部分に入り込んで、ボーナス点を獲得した辺りはさすがだ。

 敵の基地であるハッチも速攻で破壊し、二個目のオプション、更には敵を貫通する必殺の武器「レーザー」も装備した。ひし形の巨大な岩が浮いている空間を抜けると、火山が二つ並んだ場面に出くわした。

 音楽が変わる。火山の火口から無数の岩石が、真上や斜めに放射状で放たれ始めた。噴火だ。

「石くれにやられるわけにはいかんでごわす」

 谷川は画面左上のもっとも安全そうな場所へ自機を移動させると、オプションから射出されるレーザーでガードを固めた。俺は唇を噛み締める。途中でミスするかと思ったが、谷川はそれなりの結果を出しつつあった。

 噴火が終わると画面が再びスクロールする。1面最後は小型の敵戦艦「ビッグコア」との一騎打ちだ。ここも敵弾を華麗にかわしながら、谷川は時間をかけて料理し、クリアを達成した。

 その得点は61700点。まずまずの成績といっていい。

「終わったでごわす」

 南副部長が得点をホワイトボードに書き込んだ。有働部長が1P側のコントローラーを風林先輩に手渡す。

「お手並み拝見といこうか」

「特とごろうじろ」

 風林先輩の腕前は未知数だ。この数日間、彼女は確かにグラディウスを遊ぶこともあったが、メイン扱いではなかった気がする。どれだけやりこんでいただろうか?

 谷川同様、風林先輩の操るビックバイパーは正確無比に敵機を撃墜していく。パワーアップも順調だ。敵弾にぶつかってしまう失敗もない。

 いける。この分ならまずミスはするまい。後はどれだけ点を稼ぐかだ。前方にハッチが迫る。

 このとき、風林先輩は谷川とは違った行動をした。なんと、ハッチから敵機が次々出てくるのを待った上で、それらを打倒したのだ。

「むう……」

 有働部長がうめいた。風林先輩はより多くの得点を稼ぐことを意識し、谷川が取った「ハッチ速攻破壊」という安全策を取らなかったのである。捨て身の努力だった。

 やがて風林先輩は、レーザーとオプション2個を装備した。ひし形の巨岩を抜け、火山地帯に到達する。

「ここだ。しかと見よ」

 なんと風林先輩は、飛び出してくる岩石に粉砕されそうなほど、火口に近づいたのだ。そしてオプションと共にレーザーを発射。谷川と違って遥かに多くの岩石を消滅させていった。得点も急速に跳ね上がる。だがビックバイパーも撃ち漏らしの岩に命中しそうで危ないことこの上ない。

「風林先輩……!」

 楓が祈るように両手を組み合わせる。死とすれすれの荒稼ぎ。風林先輩の底知れぬ度胸が伝わってきた。

 早く、早く噴火が止まれ。俺はそればかりを願った。そして――

 画面はゆっくり動き出した。火山地帯を抜けたのだ。後はもう楽勝だった。ビッグコアにも危なげなく勝利し、得点を更に追加する。

「拙者の勝ちじゃな」

 悄然とするパソコン部員たちに胸を張る。風林先輩の得点は74100点。実に1万点以上の差をつけて、圧倒的な勝利を手に入れたのだ。

 南副部長は端正な顔を美的に歪め、ホワイトボードに得点を書き込んだ。

 駄ゲー部、初の白星――

 駄ゲー部部員たちは、ヒロインの兜を容赦なくはたき、喜びを触感でもって表現した。

「よくやったもん!」

「ナイスなので!」

「おめでとうございます! この調子でいきましょう!」

 谷川はすごすごと引き下がると、アンパンを取り出して食べ始めた。有働部長が憮然としたまま舌打ちする。

「何の、たかが一勝でいい気になるなよ。次はこのカセットだ」

 そう言って南副部長から手渡され、真樹先輩に見せたのは――

「任天堂の『スパルタンX』!」

 今度は真樹先輩が舌を打ち鳴らした。駄ゲー部の調査からは漏れたソフトだ。駄ゲー部員の誰一人として、どんなゲームかまるで知らない。
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