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みんな襲われてるのに、どうやら俺は相手にされてないようだ。

5. 素敵女子

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 あれから俺は毎日訪れる“おばはん”の世話になっていた。

 おばはんは交代で昼飯と晩飯を届けてくれるし、頼んでもないのに掃除、洗濯などしてくれるのでありがたい存在だ。

 まぁ人と接するのは苦手だけど、親切で強引なおばはんには心が開いてしまい、つい甘えてしまった。

 たぶん、恋愛対象じゃないからカッコつける必要もないし、気が楽なんだろう。

 そんなある日のことだ。コンコンと部屋のノックが聞こえ、いつものおばはんだと思って扉を開けたら……

 物凄い美人が立っていたーー!

「えっ、あの……どちら様でしょうか」

 いかん、緊張する。二十代前半でパンツスーツがよく似合う美人OLだ。鎖骨の下まで伸びた栗色ヘアは毛先がカールされて美しすぎる。さらにスタイルも抜群だ。はち切れんばかりの胸元は「見るな、意識するな」と言われても目がいってしまうぞ。

「わたくし、“池田もみこ”と申します」

 ああ、甘い香水の匂いもたまらん。酔いそうだ。どうせならこんな素敵女子に守られて暮らしたい。いや、おばさんには悪いけど。

「もしもーし? 青葉高文さんですよね?」
「あ、はい」
「やっと見つけました。広島まで来た甲斐がありましたわ」
「えっと……御用は?」

 彼女はにっこり微笑んだ。

「お迎えに上がりました。この危機を救える希少な貴方をね」
「……は?」
「招集命令です」
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