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みんな襲われてるのに、どうやら俺は相手にされてないようだ。

7. お戯れ

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「うーん、美味しいわ!」

 俺と“もみこ”はタコ焼きを頬張りつつ、和紙で書かれた地図を頼りに大阪の吹田市を探索していた。

「えーと、名は正随規男……しょうずいのりお? 変わった名だな」
「緯度経度からしてこの辺だと思うけどー」

 見渡す限り多くのマンションや店舗が立ち並び、中々の都会だと感じる。

 この風景から彼の住まいを探し当てるのか? こりゃ大変だ。

 そう途方に暮れかかった時、もみこがある建物を指差した。

「あっ、あれ」

 それはいかにも学生向けアパートだった。というより、その部屋の前にマァンティスが一匹いる。

「うわ、出たな。どこにでも現れるな」
「青葉さん、正随さんはあの部屋よ!」
「……は?」
「良かったあ、あっさり見つかって!」
「い、いやあの」
「行きましょう」

 何を言い出すんだ? マァンティスがいるだろ?

 俺の動揺など無視して、もみこは小走りにマンションへと向かう。

「あ、ちょっと」

 置き去りにされては困る。もみこに守ってもらわなきゃ。でも、そこにはヤツがいるぞ?

「青葉さん、早く」
「ったく、恐ろしくないのか」

 仕方ない。俺はなるべく彼女にピタッと寄り添って走った。出来れば手を繋いでほしいが。

「おい、マァンティスに気づかれるぞ?」
「大丈夫、大丈夫。襲ってこないから」
「何を根拠に……あああっ」

 やばい。完璧に目と目が合ってしまった。本当に大丈夫なのかあ?

 が、しかしーー、

 マンションの手前でマァンティスはプイっと横を向いて飛び立っていった。もう何が何だかわからない。

 やっぱり俺は相手にされてない……のか?

「ビンゴですね。表札に“正随”って書かれてるわ」
「……そう、良かったな」
「でもインターホン鳴らしても出ませんねえ」
「何やら物音が聞こえるぞ」
「ふむ。鍵かかってないようだし開けちゃいましょう」

 もみこは「正随さーん」と、叫びながら扉を開けた。が、そこから見えた光景は、なんとマァンティス三匹に裸の男が戯れていたのだ!

「……は?」
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