島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

文字の大きさ
3 / 105

3.監視官

しおりを挟む
「あー、良い天気ねえー、うーむ…」

潮の風が心地よい。わたくしは船の甲板に立ち、もう二度と戻れないであろう王都を眺めている。そしておもっきり背伸びをした。気持ちいい。

でもさっきから鋭い視線を感じる。一緒に乗り込んだ事務官。眼鏡を掛けて薄い唇が特徴の男性だ。

何だか愛想のない御方ね。

彼は一言も話さず、じーっと睨んでおいでです。ちょっと不気味で怖いけど気にすまい。わたくしを送り届ける役目なんだろう。



やがて、ペチェア島の小さな港に着いた。何やら手を振ってる男性が居る。黄色系ゴールドの髪色でセミロングヘアの人だ。

「何だあいつは…」

初めて事務官の声を聞いた。

「ようこそ、ペチェア島へ!ささ、どうぞー!」

屈託のない可愛らしい笑顔で出迎えられて嬉しかった。わたくしは差し出された手を握り下船する。

「初めまして!いやあ、噂に聞いてたけどアニエス様ってお美しい!」
「あ、ありがとう」
「僕は貴女の監視役と言うか、お世話をするバルナバと申します。二十二歳、独身です!あ、そうだ、一軒家をご用意してますから案内しますね」

ハイテンションの彼に少々たじろいだけど、明るいのは何よりね。島生活に不安があったのも吹っ飛んだ気分になる。でも事務官がその良い雰囲気をぶち壊した。

「おい、お前。何を勘違いしてるんだ?」
「え?あ、そう言えば貴方は…どなたですか?」
「俺は王都から派遣された監視官、ブリスだ。この島に住むことになった。いいか、アニエスに“さま”など不要。こいつは要人ではない。ただの罪人だ。それを忘れるな!」
「…い、いや、まあそう固いこと言わず…彼女は特別待遇なんだし。と言うか王都からの派遣って聞いてないですよお」
「後でジェラール殿下に話しとく。お前はさっさと罪人の住まいへ案内しろ!」
「いてっ!」

監視官…いえ、この薄唇さんは冷酷な眼差しで彼を軽く小突いた。わたくしは『ジェラール殿下』という言葉にドキッとしたけど、直ぐにその感情は掻き消される。

「あの、監視官殿。暴力はいけませんわ」
「なんだと?」
「あー、僕は全然大丈夫だから!」
「いえ、いけません」
「お前、罪人の癖に私に歯向かうつもりか?」
「罪人の分際で申し訳ありません。でも…」

その瞬間、薄唇さんから正拳突きが飛んだ。なんと、殴りかかってきたのだ。思わず躱して彼の喉元へわたくしの拳を突き上げる。寸止めだけど。

「……」
「あ、ごめんなさい。つい反応して」
「ふん、流石は悪役令嬢だ。そうやって同級生を虐めてきたのか?あ、王太子も倒したそうだな。そりゃあ婚約破棄される訳だ」

な、何とでも言うがいいわ。何にも知らない癖に。

「凄いです、アニエス様!カッコいいです!」
「だーかーらー、“様”を付けるな!」
「バルナバさん、ありがとう。お家へ案内して!」
「はい、アニエス様!」
「……チッ」

それから薄唇さんは何も言わなくなった。わたくしは親切で陽気なバルナバさんと一緒に一軒家へ向かう。



「ここがご用意した古民家です。おっきくて広々としてますよー、ほら、お庭も十分でしょう!」
「まあ、素敵!海も見えて最高だわ!」

目の前に広がる美しい光景と味のある古民家、何だか嬉しくなっちゃいます。思わず感動したわたくしに薄唇さんがまたしても水を差す。

「おい、俺はこれからペチェア城へ向かう。お前、ちゃらちゃらせず、しっかり監視しとけよ!」
「はーい、かしこまりました。監視官殿!」

敬礼したバルナバさんは不満げな彼が去った後、わたくしに向かって舌を出した。

「うふふ」
「ヘンな奴が来たけど気にしない、気にしない」
「そうね~」

さて、改めて古民家を眺める。

ああ、ここがわたくしの故郷になるのね…。









しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません

由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。 破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。 しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。 外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!? さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、 静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。 「恋をすると破滅する」 そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、 断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。 灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

処理中です...