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46.書簡
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※ジェラール視点
「ルーク様、お初にお目にかかり光栄でございます。国王陛下の使者に命じられたブリス・オラールと申します」
特別室に設けられたサロンでルーク様は一人、ソファーに腰掛けておられた。三人で現れたことに少々驚いている様子だ。
「彼の提案で我々も同席することに致しました」
ビソンの言葉にルーク様は一応、頷いてはいるものの、納得してない表情を浮かべる。
「まあ、来てしまったのなら仕方ない…か」
「早速ですが、陛下からの書簡をお渡し致します」
「うむ」
書簡そのものは小さいが、大層豪華な入れ物に入っていた。表には王冠が印してあり、間違いなく国王からの書簡であることを証明している。
ブリスは鍵を開けて手紙を渡す。ここまでは何も問題ない。手紙を受け取り、サラッと読まれたルーク様は考え込む様に天井を見上げた。
…何て書かれてるんだ?
気になるが聞くわけにはいかない。
「返事を書かなくてはな」
そうルーク様が呟いた。だが、ブリスは微笑しながらそれを拒否する。
「その必要はございません」
その言葉と同時にビソンが席を立つ。“今から殺すから返事は要らない”と思ったのだろう。内ポケットから武器を取り出そうとしていた。
お、おい、どういう意味だ!?まさか私の目の前でことを起こすつもりなのか!?
サロンは緊張に包まれた。私も闘うしかないっ!と、身構える。だが、ブリスはそんな我々に首を横に振りながら両手を上げた。
「ブリスとやら。お前、儂を殺しに来たのではないのか?」
「まさか。まあ皆さん、話を聞いてください」
ルーク様は我々に『落ち着け』と指示してるかの様に目で合図する。それを受けてビソンは席に座り直した。
「確かに俺は陛下からルーク様の始末を命じられました。今回の書簡の意図は貴方様の健康状態と、周りの世話人及び生活環境の確認が目的であります」
私は驚きを隠せなかった。陛下たる者が、罪のない弟君の「始末」を現実的に指示されたのだ。
「し、信じられない。幾ら何でも」
「…で?ブリス、お前はどうしたいのだ?」
ルーク様はあくまでも冷静だ。
「政治のことはよく分かりませんが、この殺しに正義は感じられない。それに鉄壁な要塞の中で始末するのは極めて困難です。それこそ俺の命と引き換えになるくらい危険な仕事ですよ」
全く、こいつはルーク様を前にしても言葉遣いこそマシな方だが、滲み出る態度は太々しいままだ。
「つまり、寝返るのか?」
「あからさまには出来ません。今度は俺が狙われますからね」
「では?」
ブリスは四人しかいないサロンの周りを確認して、慎重に声を発した。
「ルーク様、…死んだことにして貰えませんか?」
「ルーク様、お初にお目にかかり光栄でございます。国王陛下の使者に命じられたブリス・オラールと申します」
特別室に設けられたサロンでルーク様は一人、ソファーに腰掛けておられた。三人で現れたことに少々驚いている様子だ。
「彼の提案で我々も同席することに致しました」
ビソンの言葉にルーク様は一応、頷いてはいるものの、納得してない表情を浮かべる。
「まあ、来てしまったのなら仕方ない…か」
「早速ですが、陛下からの書簡をお渡し致します」
「うむ」
書簡そのものは小さいが、大層豪華な入れ物に入っていた。表には王冠が印してあり、間違いなく国王からの書簡であることを証明している。
ブリスは鍵を開けて手紙を渡す。ここまでは何も問題ない。手紙を受け取り、サラッと読まれたルーク様は考え込む様に天井を見上げた。
…何て書かれてるんだ?
気になるが聞くわけにはいかない。
「返事を書かなくてはな」
そうルーク様が呟いた。だが、ブリスは微笑しながらそれを拒否する。
「その必要はございません」
その言葉と同時にビソンが席を立つ。“今から殺すから返事は要らない”と思ったのだろう。内ポケットから武器を取り出そうとしていた。
お、おい、どういう意味だ!?まさか私の目の前でことを起こすつもりなのか!?
サロンは緊張に包まれた。私も闘うしかないっ!と、身構える。だが、ブリスはそんな我々に首を横に振りながら両手を上げた。
「ブリスとやら。お前、儂を殺しに来たのではないのか?」
「まさか。まあ皆さん、話を聞いてください」
ルーク様は我々に『落ち着け』と指示してるかの様に目で合図する。それを受けてビソンは席に座り直した。
「確かに俺は陛下からルーク様の始末を命じられました。今回の書簡の意図は貴方様の健康状態と、周りの世話人及び生活環境の確認が目的であります」
私は驚きを隠せなかった。陛下たる者が、罪のない弟君の「始末」を現実的に指示されたのだ。
「し、信じられない。幾ら何でも」
「…で?ブリス、お前はどうしたいのだ?」
ルーク様はあくまでも冷静だ。
「政治のことはよく分かりませんが、この殺しに正義は感じられない。それに鉄壁な要塞の中で始末するのは極めて困難です。それこそ俺の命と引き換えになるくらい危険な仕事ですよ」
全く、こいつはルーク様を前にしても言葉遣いこそマシな方だが、滲み出る態度は太々しいままだ。
「つまり、寝返るのか?」
「あからさまには出来ません。今度は俺が狙われますからね」
「では?」
ブリスは四人しかいないサロンの周りを確認して、慎重に声を発した。
「ルーク様、…死んだことにして貰えませんか?」
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