92 / 105
92.大号泣
しおりを挟む
「アニエス様ーー、許可証持って来ましたよお」
コリンヌと羊舎をお掃除してたら、バルナバさんが嬉しそうに走ってきた。
「ありがとう、バルナバさん」
「いえいえ、長期の滞在が許可されました。これで半年は往来可能です!」
「半年も?」
「はい。あ、短期だと十日なので、ちょっと慌ただしいですからね。良かったですよ」
そっか。何だか島に長くいられそうな気がして嬉しいわ。それに一旦戻っても、またいつでも来れる。
「あ、バルナバさん…彼は見つかったの?」
実は昨日、子供たちから薄唇さんらしき人の目撃を聞いて、コリンヌが城へ戻って彼に報告していたのだ。あれから島では大捜索が始まったと聞いていたけど…?
「いや…まだ見つからない。でもあいつはこの島に居る。聞き込みでは港でベロムも見たって言うし」
「あの、彼は…」
わたくしは何故彼が逃亡してるのか気になって仕方ない。あの日、議会から飛び降りたのは何故?薄唇さんは何をしたのだろう?コリンヌもベルティーユも皆んな心配してる。でも、聞いてはいけない雰囲気を感じるの…。
「アニエス様、いつか殿下がお話されると思いますよ。でも、一応警戒はしておいてくださいね。この屋敷にも警護の者を配置してます。暫くは敷地内でお過ごしください」
彼がわたくしたちに危害を加えるとは思えない。だって羊舎も鶏舎もパンの焼き窯や発酵する専用小屋も、敷地内の柵もアニエス牧場の看板も全て彼が手作りでこしらえてくれたの。最初は嫌な人だと思っていたけど一緒に過ごしてるうちに彼なりの優しさに触れて、今は仲間だと思ってる。
だから彼にもう一度会いたい。元気な姿を見たい。
「う、うん。分かった」
バルサバさんはそれから慌ただしく城へ戻り、わたくしたちもお野菜を摘んでお屋敷へ帰った。そこで信じられない光景を目の当たりにする。
ダイニングルームに男性が座っていた。ベルティーユが固まっている。
「腹が減ったな…何か食わせろ」
その後ろ姿は紛れもないあの人だった。
「ブ、ブリス監視官!?」
彼は似合わない笑顔を彼女へ向ける。
「お前のめしが食いたくなってな。つい戻って来たんだ」
「な、な、何をなさってたのですかっ!?」
「ん?まあ、俺なりの世直しってやつかな」
「心配しました…皆んな心配したんですよお!!」
わあーーっと彼女がその場で泣き崩れた。
「おいおい、泣くか?」
「泣きますよ!!監視官殿!!」
背後から思わずわたくしは叫んでしまった。
「あ、アニエス…それにコリンヌ。ソフィアはどうした?」
「彼女は王都へ一時的に戻りました。それより…」
自然にポロポロと涙が溢れ落ちてきた。
「ははは…俺がこんなにモテるとはな」
うわーーん!と、わたくしもコリンヌも泣いてしまった。三人で大号泣だ。
コリンヌと羊舎をお掃除してたら、バルナバさんが嬉しそうに走ってきた。
「ありがとう、バルナバさん」
「いえいえ、長期の滞在が許可されました。これで半年は往来可能です!」
「半年も?」
「はい。あ、短期だと十日なので、ちょっと慌ただしいですからね。良かったですよ」
そっか。何だか島に長くいられそうな気がして嬉しいわ。それに一旦戻っても、またいつでも来れる。
「あ、バルナバさん…彼は見つかったの?」
実は昨日、子供たちから薄唇さんらしき人の目撃を聞いて、コリンヌが城へ戻って彼に報告していたのだ。あれから島では大捜索が始まったと聞いていたけど…?
「いや…まだ見つからない。でもあいつはこの島に居る。聞き込みでは港でベロムも見たって言うし」
「あの、彼は…」
わたくしは何故彼が逃亡してるのか気になって仕方ない。あの日、議会から飛び降りたのは何故?薄唇さんは何をしたのだろう?コリンヌもベルティーユも皆んな心配してる。でも、聞いてはいけない雰囲気を感じるの…。
「アニエス様、いつか殿下がお話されると思いますよ。でも、一応警戒はしておいてくださいね。この屋敷にも警護の者を配置してます。暫くは敷地内でお過ごしください」
彼がわたくしたちに危害を加えるとは思えない。だって羊舎も鶏舎もパンの焼き窯や発酵する専用小屋も、敷地内の柵もアニエス牧場の看板も全て彼が手作りでこしらえてくれたの。最初は嫌な人だと思っていたけど一緒に過ごしてるうちに彼なりの優しさに触れて、今は仲間だと思ってる。
だから彼にもう一度会いたい。元気な姿を見たい。
「う、うん。分かった」
バルサバさんはそれから慌ただしく城へ戻り、わたくしたちもお野菜を摘んでお屋敷へ帰った。そこで信じられない光景を目の当たりにする。
ダイニングルームに男性が座っていた。ベルティーユが固まっている。
「腹が減ったな…何か食わせろ」
その後ろ姿は紛れもないあの人だった。
「ブ、ブリス監視官!?」
彼は似合わない笑顔を彼女へ向ける。
「お前のめしが食いたくなってな。つい戻って来たんだ」
「な、な、何をなさってたのですかっ!?」
「ん?まあ、俺なりの世直しってやつかな」
「心配しました…皆んな心配したんですよお!!」
わあーーっと彼女がその場で泣き崩れた。
「おいおい、泣くか?」
「泣きますよ!!監視官殿!!」
背後から思わずわたくしは叫んでしまった。
「あ、アニエス…それにコリンヌ。ソフィアはどうした?」
「彼女は王都へ一時的に戻りました。それより…」
自然にポロポロと涙が溢れ落ちてきた。
「ははは…俺がこんなにモテるとはな」
うわーーん!と、わたくしもコリンヌも泣いてしまった。三人で大号泣だ。
0
あなたにおすすめの小説
断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る
黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。
(ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~
深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。
灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる