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SCENE.1【抗憑依体質者、御手洗凛】
Capture.7『うさぎのイラスト』
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【凛ちゃんへ……いつもお疲れ様! 颯ちゃんの件、残念だと思うけど凛ちゃんなら大丈夫! 他の男の人が放っておかないよ! うちは陽菜ちゃんより凛ちゃんの方が好みだよ? うちの好みは聞いてないか(笑)今度の水曜日、お互い休みみたいだから、一緒に釣り行こう! これは強制だからね~(笑)明日も元気に仕事しようね! 奈々より】
「本当、奈々さんって優しいな~。何だろ、これ? ……ハングル?」
家に戻った私は、シャワーを済ませ、帰りにコンビニで買ったお弁当をテーブルに広げる。そして、テレビをつけ、クッションに座り、手紙を読んでいた。
奈々さんからもらったオシャレな手提げ付きの紙袋には、手のひらサイズの長方形の箱が入っていた。その中には、液体の入った小瓶。ハングル文字がパッケージに使われていて読めない。裏面の英語の部分を読むと美容液のようだった。
「韓国に行ったのかな?」
私はチャットツールで奈々さんへお礼のメッセージを送る。
<奈々さん! プレゼントありがとうございました! 美容液? 大事に使います! 韓国に行ったんですか?>
そう送って、食事をしていると着信音が鳴る。確認すると奈々さんからだった。
<ソウルにね! それ今あっちだと流行りの美容液らしいよ?>
<そうなんですね。いつも気にかけてもらってありがとうございます!>
<気にしないで。それじゃまた明日>
そう言って、可愛らしいうさぎのイラストで手をバイバイしているスタンプがチャット欄に流れる。奈々さんは、チャット終わりに必ずこれを使う。
「その瓶は何だ?」
美容液を手に持つ小太郎さん。底から見たり、横にしてみたりしている。
「美容液です」
「びようえき?何だそれは?」
首を傾げる小太郎さん。彼のこれまでの発言と行動から、私の中で今の時代の人じゃないという答えが出ていた。だから、なるべく分かりやすく伝える努力をする事にしたんだけど――
「肌をお手入れのための物です」
「肌を手入れ? お前の肌は刀なのか?」
それでも伝わり切らないのは、やっぱり文化の違いが大きいのかもしれない。
◇
「おはようございまーす」
次の日の私は、遅番シフトだった。事務所に着くと、休憩中の澪ちゃんが椅子に座って、スマホを覗いていた。
「澪ちゃん、おはよう」
声をかけても、反応がなかった。何をしているんだろう。そう思った私は、彼女の近くに行き、悪いとは思いながらもスマホの画面をチラ見する。
チャットツールの奈々さんの画面だった。その画面を認識すると同時に、彼女が私に気付いたようで、慌てて振り向いた。
「あ、凛さん……」
「澪ちゃん、おはよう? 休みはどうだっ……た?」
私の顔を見るなり、突然、彼女は目にいっぱいの涙を溜め始めた。
「どうしたの、澪ちゃん?」
「凛さ、ん……な、奈々……さんが……」
「え? 奈々さんがどうしたの?」
動悸がした。ただならぬ澪ちゃんの態度に、私の体に嫌な予感が電撃のように走った。思い出されるある言葉――
『あの女、死ぬぞ』
小太郎さんの告げた死神の笑み。後ろを振り返ると小太郎さんはいなかった。私に抱き付き、泣きじゃくる澪ちゃんがますます不安を加速させる。
「ねぇ澪ちゃん? 奈々さんがどうしたの?」
まだ死んだと決まった訳じゃない。喧嘩して嫌われちゃったと落ち込んでいるだけかもしれない。でも、奈々さんは温厚な人だった。喧嘩なんて考えられない。
それにいつもはクールな澪ちゃんが、ここまでボロ泣きしている。その事も私の不安を煽る。
「ねぇ澪ちゃん?」
持病があるなんて話は知らない。病気じゃないとしたら、事故? 昨日の帰り? でも、奈々さん、車通勤じゃない。駅も遠くないし、電車の事故は聞いてない。一体何が起こったのだろう。
思考が迷走する中、ようやく澪ちゃんが口を開いた。
「奈々、さんが……自殺……しました……」
「え……」
「本当、奈々さんって優しいな~。何だろ、これ? ……ハングル?」
家に戻った私は、シャワーを済ませ、帰りにコンビニで買ったお弁当をテーブルに広げる。そして、テレビをつけ、クッションに座り、手紙を読んでいた。
奈々さんからもらったオシャレな手提げ付きの紙袋には、手のひらサイズの長方形の箱が入っていた。その中には、液体の入った小瓶。ハングル文字がパッケージに使われていて読めない。裏面の英語の部分を読むと美容液のようだった。
「韓国に行ったのかな?」
私はチャットツールで奈々さんへお礼のメッセージを送る。
<奈々さん! プレゼントありがとうございました! 美容液? 大事に使います! 韓国に行ったんですか?>
そう送って、食事をしていると着信音が鳴る。確認すると奈々さんからだった。
<ソウルにね! それ今あっちだと流行りの美容液らしいよ?>
<そうなんですね。いつも気にかけてもらってありがとうございます!>
<気にしないで。それじゃまた明日>
そう言って、可愛らしいうさぎのイラストで手をバイバイしているスタンプがチャット欄に流れる。奈々さんは、チャット終わりに必ずこれを使う。
「その瓶は何だ?」
美容液を手に持つ小太郎さん。底から見たり、横にしてみたりしている。
「美容液です」
「びようえき?何だそれは?」
首を傾げる小太郎さん。彼のこれまでの発言と行動から、私の中で今の時代の人じゃないという答えが出ていた。だから、なるべく分かりやすく伝える努力をする事にしたんだけど――
「肌をお手入れのための物です」
「肌を手入れ? お前の肌は刀なのか?」
それでも伝わり切らないのは、やっぱり文化の違いが大きいのかもしれない。
◇
「おはようございまーす」
次の日の私は、遅番シフトだった。事務所に着くと、休憩中の澪ちゃんが椅子に座って、スマホを覗いていた。
「澪ちゃん、おはよう」
声をかけても、反応がなかった。何をしているんだろう。そう思った私は、彼女の近くに行き、悪いとは思いながらもスマホの画面をチラ見する。
チャットツールの奈々さんの画面だった。その画面を認識すると同時に、彼女が私に気付いたようで、慌てて振り向いた。
「あ、凛さん……」
「澪ちゃん、おはよう? 休みはどうだっ……た?」
私の顔を見るなり、突然、彼女は目にいっぱいの涙を溜め始めた。
「どうしたの、澪ちゃん?」
「凛さ、ん……な、奈々……さんが……」
「え? 奈々さんがどうしたの?」
動悸がした。ただならぬ澪ちゃんの態度に、私の体に嫌な予感が電撃のように走った。思い出されるある言葉――
『あの女、死ぬぞ』
小太郎さんの告げた死神の笑み。後ろを振り返ると小太郎さんはいなかった。私に抱き付き、泣きじゃくる澪ちゃんがますます不安を加速させる。
「ねぇ澪ちゃん? 奈々さんがどうしたの?」
まだ死んだと決まった訳じゃない。喧嘩して嫌われちゃったと落ち込んでいるだけかもしれない。でも、奈々さんは温厚な人だった。喧嘩なんて考えられない。
それにいつもはクールな澪ちゃんが、ここまでボロ泣きしている。その事も私の不安を煽る。
「ねぇ澪ちゃん?」
持病があるなんて話は知らない。病気じゃないとしたら、事故? 昨日の帰り? でも、奈々さん、車通勤じゃない。駅も遠くないし、電車の事故は聞いてない。一体何が起こったのだろう。
思考が迷走する中、ようやく澪ちゃんが口を開いた。
「奈々、さんが……自殺……しました……」
「え……」
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