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緋糸たぐる御伽姫
32.精霊族祭-2
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王宮の紋様の付いた馬車に15分揺られ、辿り着いた場所はポトスの街の馬車留まりである。精霊族祭の会場までは少し距離があるが、混雑を避けるため会場への馬車の乗り入れは禁止されているのだ。
精霊族祭の会場となる場所は、ポトスの街の民からは「憩いの広場」と呼ばれる場所で、ポトスの街を見下ろすことができる高台に位置している。塀で囲まれた大きな広場は、普段は民の憩いの場として開放されている。天気の良い日には、柔らかな芝生に寝転がりうたた寝をする人の姿が多く見受けられる場所だ。広場に隣接する建物は、聖ジルバード教会を縦横に押し縮めたような外観をしており、内部には休憩室やシャワー室、多目的室などが備えられている。
普段はひっそりとした雰囲気の憩いの広場だが、毎年精霊族祭の夜だけはその様子を様変わりさせる。広場を囲う塀には色とりどりの灯りが灯り、聖ジルバード教会似の建物前に作られた簡易的な舞台の上には、揃いの衣装を纏った演奏隊。広場の至る所には丸テーブルが置かれ、手でつまめる料理や酒類が所狭しと並べられている。開宴直後は比較的落ち着いた雰囲気の広場であるが、夜闇が深まるほどに人は増え、直に声を張り上げねば会話が困難なほどの喧騒となる。
道が混み合う前にと早めに王宮を出発してきたルナのクリスであったが、憩いの広場に到着した時には既に演奏隊が音楽を奏で始めていた。軽やかな音楽が、芝生の広場に響き渡る。集まった人々は音楽に合わせ軽快と踊り、中には酒のグラスを片手に手を取り合う器用な二人組もいた。ドレスや燕尾服を着用している者は多いが、中にはワンピースや白シャツを羽織っただけという気楽な格好の者もいる。ダンスパーティーとは言っても所詮は庶民のお祭り。細かいマナーに気を遣う必要などないのだ。
「早速ですが、踊りましょうか?」
人波を避け広場の中心に辿り着いたときに、クリスはルナに向けて手を差し出した。迷うことなくルナはその手を取る。
「会場に到着してから言うのも何ですけれど、私ダンスは下手ですよ。まともに踊った経験がありません」
「僕だって。庶民にはダンスの機会などありませんからね。昨日のお昼休みに魔獣管理部の官吏に頼み込んで教えてもらいました。下手くそ同士、気楽に踊りましょう」
「良いですね」
ルナとクリスは顔を見合わせて笑う。
ぎこちない動きでダンスを開始したルナとクリスであったが、下手くそということで言えばルナの方が一枚上手であった。クリスは慣れぬ動きながらも、周りの人々と比べて特段酷い動きというわけではない。そもそも自由が売りのドラキス王国の中には厳かなダンスの風習などなく、一般の民が着飾って踊る機会と言えば年に一度の精霊族祭の他にないのだ。最近こそ魔族の間にも結婚の風習が根付き、結婚式の催しの一つとしてダンスパーティーが企画されることがある。しかしそれだって、一人の人物が参列する機会など一生の内に数回程度なのだ。
ダンスに馴染まぬ人々のために、精霊族祭の会場には「踊り子」と呼ばれるスタッフが紛れており、皆の手本となるべく優雅な踊りを披露している。皆が踊り子の動きを真似るからダンス会場には最低限の規律が生まれるが、中には好き勝手に跳ね回る者もいる。踊り子を除き、目を見張るほどにダンスの上手い者など会場内には滅多にいない。そしてクリスの踊りは会場内の平均を著しく下回る動きではなかった。
方やルナのダンスはと言えば、酷いものである。周りの皆が右に回れば左に回るし、前に進み出れば後ろに下がる。手足の動きに秩序はなし、クリスと共に踊っているというよりはクリスに引き摺られていると言った方が正しい有様であった。それでも踊り始めて30分を経過した頃には場の雰囲気にも慣れ、「周りが目を剥くほどの下手くそ」から「ちょっと目立つ程度の下手くそ」へと成長を遂げたのである。その頃にはルナのクリスの間には、多少の会話を交わす程度の余裕も生まれていた。
「申し訳ありません…まれに見る下手くそで…」
「いえいえ、お気になさらずに。上手な人と緊張しながら踊るよりずっと楽しいですよ」
「足も大分踏みましたが」
「幸いルナ様は平靴ですから、踏まれても痛くありません。カミラさんに感謝ですね」
「そうですね…」
乾いた笑いを零しながら、ルナは遥か頭上にあるクリスの顔を仰ぎ見た。慣れぬダンスに額に汗を浮かべるルナとは打って変わって、クリスは涼やかな表情だ。夜風になびく金の髪は薄暗闇でも良く目立ち、顔に浮かぶ柔和な笑みはルナが足を踏み付けても崩れることはない。周りで踊る婦女がクリスの顔をちらと眺め、「まるで王子様のよう」と溜息を零しているのがわかる。
精霊族祭の会場を訪れる者は、必ずしも決まった共を連れた者ばかりではない。会場での出会いを求めて単身広場に乗り込む者もいれば、適当に相手を見繕って会場に入り込み、好みの相手に声を掛けては一曲限りのダンスを楽しむ者もいる。今クリスの顔面を眺めて感嘆の息を零す者は、そうした会場での出会いを求めた婦女達であろう。今ルナが一時でもクリスの傍を離れようものならば、王子様とのダンスを求める人々が殺到することは免れない。男前過ぎるというのも困り物だ。
「クリス様は燕尾服がよく似合います」
「…そうですか?」
「そうですよ。カミラは冗談めかして王子様なんて言っていましたけど、本当に王子様みたいですよ。過去にそう言われた経験はありませんか?」
ルナの問いに、クリスの顔は途端に憂いを帯びる。良からぬ質問をしてしまったかと身体を強張らせるルナであるが、返されたクリスの言葉は意外にもくすりと笑いを誘うものであった。
「あだ名です」
「…あだ名?王子様がですか?」
「そう。魔導大学内では専ら王子と呼ばれています。クリスと言う本名を知る人はまれです」
「クリス様は魔導大学内では有名人なんですか?」
「有名人と言うか…望まずして顔は知られていますね。魔導大学では年に一度大学祭が開催されるんです。4日間の日程で、外部から人も招き入れてかなり大規模な催しですよ。それで、催しの一つに王子様選手権とお姫様選手権という物があるんです。通称王子コン、姫コンと呼ばれています」
「まさかクリス様は王子コンの優勝経験が?」
「その通りです。決して僕自身が志願したわけではないですよ。友人に『一緒に王子コンを見に行こう』と誘われて会場に行ったら、あれよあれよという間に着替えさせられて…舞台の上に…」
ルナの脳裏に、観衆見守る舞台の上に一人放り出されるクリスの姿が浮かぶ。王子コンの優勝者と言えば聞こえは良いが、何も知らぬまま身ぐるみを剥がされ王子の衣装を着せられ、好奇の目に満ち溢れた舞台の上に放り出されたとなれば哀れだ。繰り返すが、男前過ぎるというのも困り物である。
「優勝経験は一度きりですか?」
「いえ、望まずして3連覇です。嘘の誘いを受けた翌年は僕も警戒していたんですけれど、突然研究室にやって来た友人数人に簀巻きで連行されました。その翌年も同様に…」
「…そこまで行くと気の毒ですね。なぜ友人方はそこまでしてクリス様を王子コンに?」
「商品が結構豪華なんですよ。金一封に、お酒と多種のおつまみが付いてくるんです。優勝すればそれだけで一度豪勢な飲み会が開催できます」
「へぇ。良いじゃないですか。嫌と言わずに積極的に志願すれば良いのでは?」
「自前の衣装が許されるのなら僕だって賞金稼ぎを目論みますけどね。衣装は全て運営側で用意されているんです。王子様選手権、お姫様選手権の名に相応しい豪華絢爛の衣装がね。初回、僕が着た衣装は白地に金の刺繍が入った燕尾服ですよ。それだけならまだしも、同じく純白の外套に、丈の長いブーツに…あと何と言うんでしょうね。肩に付ける掃除用具みたいな奴」
「ああ、分かります。何て言うんでしょうねぇ。あの掃除用具」
正に御伽話の王子様の格好をしたクリスの姿が目の前に浮かび、ルナは声を上げて笑った。笑いに気を取られクリスの足を踏みかけるものの、ルナの奇天烈な動きにも慣れたクリスはそれをひょいと躱す。
「そういうわけで、僕は魔導大学では王子の名で通っているんです。もう二年王子コンには出場していないんですけれどね。一度ついたあだ名は中々消えなくって」
「簀巻きでの連行は逃れているんですか?」
「王子コンの開催日は、里帰りを銘打って学外に避難しているんです。23歳にもなって純白の燕尾服で王子様と呼ばれるのはちょっと…」
「似合うと思いますけれどねぇ」
他愛のない会話を交わしながら踊るうちに時は過ぎ、気が付けば芝生の広場は人で埋め尽くされていた。時刻は20時を回り、最も多くの人が会場内に留まる時間帯だ。籠る熱気、肘がぶつかるほどの距離で踊る人々。ルナとクリスは人混みを抜け、喧噪から離れた広場の端へと身を寄せる。
「凄い人数ですね」
クリスは額に浮いた汗を拭った。ダンスで息は切らさずとも、熱気孕んだ人波に揉まれれば誰だって多少の汗は掻く。ルナは広場に置かれた丸テーブルの一つを指さした。
「休むなら、何か飲み物でも取ってきましょうか」
「僕が行ってきますよ。人混みで逸れると合流が困難です。ルナ様はここで待っていてください。お酒は飲めますか?」
「飲めますけど今日は止めておきます」
「でしたら果実水を持ってきますね」
そう言い残し、クリスは人だかりへと向かって行く。2人同様溢れるほどの人混みに音を上げ、一休みすべく丸テーブルを囲う者は多い。長身のクリスは人だかりの中でも頭一つ分飛び出て見えるが、ルナがそこに入れば、洗濯桶に放り込まれた手拭いのごとく揉みくちゃになることだろう。
何となしに広場を見やったルナの視界に、見知った色が飛び込んできた。今日ばかりは品よく整えられた緋色の髪、ぶつかり合う人混みを物ともせず優雅に踊るその人物はレイバックだ。彼が腰を抱く人物は勿論メアリ。栗色の髪は結い上げずに背中に垂らし、薄桃色のドレスが暗闇に映える。大国の王と姫であるだけに、彼らのダンスは見事としか言いようがない。「踊り子」と勘違いされているのか、周りで踊る人々の視線を十二分に集めている。
―お似合いじゃないか。
ルナは思う。踊りながら会話を楽しんでいるのか、レイバックの口元は頻繁に動く。メアリも同様だ。遠く離れたルナの耳に彼らの会話が届くことはない。しかし手を取り合った二人の口元には和やかな笑みが浮かぶ。千年の統治を誇る神獣の王と、一途に彼を想い続けた人間の姫君。二人が結ばれることがあれば、メアリの恋物語はさぞや美しく民の間で語られることであろう。それは誰も悲しむことのない、理想的とも言える未来だ。
レイバックとメアリから視線を外し、ルナがクリスの姿を探し始めた時である。突然背中に冷水を浴びせられ、ルナは悲鳴を上げた。振り向けばそこには空のグラスを手にした少年が、唖然とした表情で立ち竦んでいる。柔らかそうな獣耳の生えた少年だ。
「申し訳ありません!つまづいてしまって…」
少年は声を上げ、ルナの元へと駆け寄った。懐から取り出したハンカチをルナの背中へと押し当てるが、グラスの中の液体はかなりの量であったようだ。背中を伝うひやりとした感触は消えず、気持ちの悪さにルナは思わず背筋を伸ばす。
「気にしないで良いですよ。グラスの中身は水ですか?」
「いいえ、赤ワインです。申し訳ありません。ドレスに色が…」
緋色のドレスに赤ワインならばさほど目立ちはしないはずだ。しかし辺りはすっかり暗闇で、人混みを離れた今、通り抜けて行く風は冷たい。濡れたドレスを着たままでいるのは少々酷だ。どうしたものかと考え込むルナの元に、一人の男性が近づいてくる。
「どうされました?」
声のする方を振り返れば、黒の燕尾服を纏った中年の男性が笑みを浮かべて立っていた。ルナの知った顔である。名前はわからぬが、ドラキス王国の重鎮である十二種族長の一人だ。几帳面な印象を与える顔立ちに、長めの黒髪は頭頂でぴったりと左右に分けられている。男性の側も、ルナの顔を把握している様子であった。
空のグラスを下げたままの少年が、男性の問いに答える。
「僕が彼女のドレスに飲料をかけてしまって…」
「でしたら休憩室にご案内致しましょう。踊りに夢中で、料理や酒を零すというのは多々ある出来事です。替えのドレスの貸し出しが行われておりますよ」
そう言って男性の指さす先は、聖ジルバード教会に似せた建物だ。建物に立ち入る者はほとんどいないが、建物内の下階の部屋の窓には明かりが灯されている、
「連れがいますから、彼が戻ったら一緒に向かいます」
「外交使節団の青年でしょう。顔は把握しておりますから、後ほどお連れ致しますよ。一度冷えた身体は中々温まりません。すぐに着替えに向かわれるのが宜しい」
「わかりました。お願いします」
早足で建物へと向かう男性の背にルナも続いた。去り際に、人混みの中にクリスの姿を探すが、目の届く範囲に目立つ金の頭は見つからない。休憩を取る者が多い今、好みの飲み物を探すのに苦労しているのだろう。
建物の入り口を潜ったルナと男性は、無機質の廊下を無言で歩く。間もなくして廊下の一角に開かれた扉があった。男性が中を覗き込むと、祭りのスタッフと思われる若い女性が椅子に腰掛けている。
「替えのドレスを頼む。飲料が掛かってしまったようだ」
男性の声に、女性スタッフはすくと席を立った。濃い化粧の施された顔がルナに向けられる。
「こちらへどうぞ。すぐにお召替え致しましょう」
手招きをされルナが立ち入った休憩室は、王宮の会議室と同じような造りの部屋であった。折り畳まれた長テーブルが部屋の隅に置かれ、その横には簡素な作りの椅子が積み上がっている。壁には小さな黒板が掛けられ、木造りの棚には文具や紙の束が押し込められていた。そして会議室の内装とは不釣り合いに、壁一面には多種多彩のドレスが掛けられている。数は少ないが燕尾服もある。他にも床には20に及ぶほどの靴が並べられ、窓際の長テーブルの上にはアクセサリーや化粧品の類も置かれている。
女性はルナを部屋奥にある椅子に座らせ、長テーブルに置かれたメモ紙を手に取った。
「先にお名前とお住まいを教えてください。ドレスの返却は後日で構いませんが、お忘れになっている場合はこちらから回収に赴く場合がございます」
「わかりました。名前はルナ。住まいは…今は一時的にポトス城の王宮に滞在しています」
ペンを持つ女性の指先が止まる。不審に思ったルナは女性の顔を仰ぎ見るが、その頃には女性は淀みない動きで記述を再開していた。ルナの名と住まいを紙に書き終えた頃には、扉付近に十二種族長の男性の姿はなかった。
「身体が冷えるといけませんから、先にお拭き致しますね。ドレスはどのような体型の方でも着られるデザインとなっていますから、後ほど好きな物をお選びください」
女性はルナの背後に立ち、濡れた背中に手拭いを当てる。すぐ後ろに立つ女性の姿を、ルナの側からは見ることができない。部屋には鏡がないのだ。着替えをするための部屋なのに、鏡がないのは奇妙だ。疑問を感じながらもルナは女性の奉仕に身を任せる。
「首飾りを一度お取り致しますね。ワインが掛かっておりますから」
「あ、はい」
女性の手が首裏に伸び、ややあって革紐の首飾りはルナの首元から外される。女性の手元はルナの背後で動く。そして数秒の後に、首飾りは再びルナの首元に宛てがわれた。
「…あれ?」
ルナは思わず声を上げる。首元に宛がわれた紐の感触が、先程までの物と違う。鎖骨にあたるガラス玉の感触は変わりないが、これはレイバックに貰った首飾りではない。なぜ?ルナが疑問の声を上げるよりも先に、女性の手が首飾りの留め具を嵌め終えた。
途端ルナの視界は揺れる。壁一面の鮮やかなドレスがぐるりと回り、力をなくした身体は冷たい床に落ちた―
精霊族祭の会場となる場所は、ポトスの街の民からは「憩いの広場」と呼ばれる場所で、ポトスの街を見下ろすことができる高台に位置している。塀で囲まれた大きな広場は、普段は民の憩いの場として開放されている。天気の良い日には、柔らかな芝生に寝転がりうたた寝をする人の姿が多く見受けられる場所だ。広場に隣接する建物は、聖ジルバード教会を縦横に押し縮めたような外観をしており、内部には休憩室やシャワー室、多目的室などが備えられている。
普段はひっそりとした雰囲気の憩いの広場だが、毎年精霊族祭の夜だけはその様子を様変わりさせる。広場を囲う塀には色とりどりの灯りが灯り、聖ジルバード教会似の建物前に作られた簡易的な舞台の上には、揃いの衣装を纏った演奏隊。広場の至る所には丸テーブルが置かれ、手でつまめる料理や酒類が所狭しと並べられている。開宴直後は比較的落ち着いた雰囲気の広場であるが、夜闇が深まるほどに人は増え、直に声を張り上げねば会話が困難なほどの喧騒となる。
道が混み合う前にと早めに王宮を出発してきたルナのクリスであったが、憩いの広場に到着した時には既に演奏隊が音楽を奏で始めていた。軽やかな音楽が、芝生の広場に響き渡る。集まった人々は音楽に合わせ軽快と踊り、中には酒のグラスを片手に手を取り合う器用な二人組もいた。ドレスや燕尾服を着用している者は多いが、中にはワンピースや白シャツを羽織っただけという気楽な格好の者もいる。ダンスパーティーとは言っても所詮は庶民のお祭り。細かいマナーに気を遣う必要などないのだ。
「早速ですが、踊りましょうか?」
人波を避け広場の中心に辿り着いたときに、クリスはルナに向けて手を差し出した。迷うことなくルナはその手を取る。
「会場に到着してから言うのも何ですけれど、私ダンスは下手ですよ。まともに踊った経験がありません」
「僕だって。庶民にはダンスの機会などありませんからね。昨日のお昼休みに魔獣管理部の官吏に頼み込んで教えてもらいました。下手くそ同士、気楽に踊りましょう」
「良いですね」
ルナとクリスは顔を見合わせて笑う。
ぎこちない動きでダンスを開始したルナとクリスであったが、下手くそということで言えばルナの方が一枚上手であった。クリスは慣れぬ動きながらも、周りの人々と比べて特段酷い動きというわけではない。そもそも自由が売りのドラキス王国の中には厳かなダンスの風習などなく、一般の民が着飾って踊る機会と言えば年に一度の精霊族祭の他にないのだ。最近こそ魔族の間にも結婚の風習が根付き、結婚式の催しの一つとしてダンスパーティーが企画されることがある。しかしそれだって、一人の人物が参列する機会など一生の内に数回程度なのだ。
ダンスに馴染まぬ人々のために、精霊族祭の会場には「踊り子」と呼ばれるスタッフが紛れており、皆の手本となるべく優雅な踊りを披露している。皆が踊り子の動きを真似るからダンス会場には最低限の規律が生まれるが、中には好き勝手に跳ね回る者もいる。踊り子を除き、目を見張るほどにダンスの上手い者など会場内には滅多にいない。そしてクリスの踊りは会場内の平均を著しく下回る動きではなかった。
方やルナのダンスはと言えば、酷いものである。周りの皆が右に回れば左に回るし、前に進み出れば後ろに下がる。手足の動きに秩序はなし、クリスと共に踊っているというよりはクリスに引き摺られていると言った方が正しい有様であった。それでも踊り始めて30分を経過した頃には場の雰囲気にも慣れ、「周りが目を剥くほどの下手くそ」から「ちょっと目立つ程度の下手くそ」へと成長を遂げたのである。その頃にはルナのクリスの間には、多少の会話を交わす程度の余裕も生まれていた。
「申し訳ありません…まれに見る下手くそで…」
「いえいえ、お気になさらずに。上手な人と緊張しながら踊るよりずっと楽しいですよ」
「足も大分踏みましたが」
「幸いルナ様は平靴ですから、踏まれても痛くありません。カミラさんに感謝ですね」
「そうですね…」
乾いた笑いを零しながら、ルナは遥か頭上にあるクリスの顔を仰ぎ見た。慣れぬダンスに額に汗を浮かべるルナとは打って変わって、クリスは涼やかな表情だ。夜風になびく金の髪は薄暗闇でも良く目立ち、顔に浮かぶ柔和な笑みはルナが足を踏み付けても崩れることはない。周りで踊る婦女がクリスの顔をちらと眺め、「まるで王子様のよう」と溜息を零しているのがわかる。
精霊族祭の会場を訪れる者は、必ずしも決まった共を連れた者ばかりではない。会場での出会いを求めて単身広場に乗り込む者もいれば、適当に相手を見繕って会場に入り込み、好みの相手に声を掛けては一曲限りのダンスを楽しむ者もいる。今クリスの顔面を眺めて感嘆の息を零す者は、そうした会場での出会いを求めた婦女達であろう。今ルナが一時でもクリスの傍を離れようものならば、王子様とのダンスを求める人々が殺到することは免れない。男前過ぎるというのも困り物だ。
「クリス様は燕尾服がよく似合います」
「…そうですか?」
「そうですよ。カミラは冗談めかして王子様なんて言っていましたけど、本当に王子様みたいですよ。過去にそう言われた経験はありませんか?」
ルナの問いに、クリスの顔は途端に憂いを帯びる。良からぬ質問をしてしまったかと身体を強張らせるルナであるが、返されたクリスの言葉は意外にもくすりと笑いを誘うものであった。
「あだ名です」
「…あだ名?王子様がですか?」
「そう。魔導大学内では専ら王子と呼ばれています。クリスと言う本名を知る人はまれです」
「クリス様は魔導大学内では有名人なんですか?」
「有名人と言うか…望まずして顔は知られていますね。魔導大学では年に一度大学祭が開催されるんです。4日間の日程で、外部から人も招き入れてかなり大規模な催しですよ。それで、催しの一つに王子様選手権とお姫様選手権という物があるんです。通称王子コン、姫コンと呼ばれています」
「まさかクリス様は王子コンの優勝経験が?」
「その通りです。決して僕自身が志願したわけではないですよ。友人に『一緒に王子コンを見に行こう』と誘われて会場に行ったら、あれよあれよという間に着替えさせられて…舞台の上に…」
ルナの脳裏に、観衆見守る舞台の上に一人放り出されるクリスの姿が浮かぶ。王子コンの優勝者と言えば聞こえは良いが、何も知らぬまま身ぐるみを剥がされ王子の衣装を着せられ、好奇の目に満ち溢れた舞台の上に放り出されたとなれば哀れだ。繰り返すが、男前過ぎるというのも困り物である。
「優勝経験は一度きりですか?」
「いえ、望まずして3連覇です。嘘の誘いを受けた翌年は僕も警戒していたんですけれど、突然研究室にやって来た友人数人に簀巻きで連行されました。その翌年も同様に…」
「…そこまで行くと気の毒ですね。なぜ友人方はそこまでしてクリス様を王子コンに?」
「商品が結構豪華なんですよ。金一封に、お酒と多種のおつまみが付いてくるんです。優勝すればそれだけで一度豪勢な飲み会が開催できます」
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「自前の衣装が許されるのなら僕だって賞金稼ぎを目論みますけどね。衣装は全て運営側で用意されているんです。王子様選手権、お姫様選手権の名に相応しい豪華絢爛の衣装がね。初回、僕が着た衣装は白地に金の刺繍が入った燕尾服ですよ。それだけならまだしも、同じく純白の外套に、丈の長いブーツに…あと何と言うんでしょうね。肩に付ける掃除用具みたいな奴」
「ああ、分かります。何て言うんでしょうねぇ。あの掃除用具」
正に御伽話の王子様の格好をしたクリスの姿が目の前に浮かび、ルナは声を上げて笑った。笑いに気を取られクリスの足を踏みかけるものの、ルナの奇天烈な動きにも慣れたクリスはそれをひょいと躱す。
「そういうわけで、僕は魔導大学では王子の名で通っているんです。もう二年王子コンには出場していないんですけれどね。一度ついたあだ名は中々消えなくって」
「簀巻きでの連行は逃れているんですか?」
「王子コンの開催日は、里帰りを銘打って学外に避難しているんです。23歳にもなって純白の燕尾服で王子様と呼ばれるのはちょっと…」
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「凄い人数ですね」
クリスは額に浮いた汗を拭った。ダンスで息は切らさずとも、熱気孕んだ人波に揉まれれば誰だって多少の汗は掻く。ルナは広場に置かれた丸テーブルの一つを指さした。
「休むなら、何か飲み物でも取ってきましょうか」
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「飲めますけど今日は止めておきます」
「でしたら果実水を持ってきますね」
そう言い残し、クリスは人だかりへと向かって行く。2人同様溢れるほどの人混みに音を上げ、一休みすべく丸テーブルを囲う者は多い。長身のクリスは人だかりの中でも頭一つ分飛び出て見えるが、ルナがそこに入れば、洗濯桶に放り込まれた手拭いのごとく揉みくちゃになることだろう。
何となしに広場を見やったルナの視界に、見知った色が飛び込んできた。今日ばかりは品よく整えられた緋色の髪、ぶつかり合う人混みを物ともせず優雅に踊るその人物はレイバックだ。彼が腰を抱く人物は勿論メアリ。栗色の髪は結い上げずに背中に垂らし、薄桃色のドレスが暗闇に映える。大国の王と姫であるだけに、彼らのダンスは見事としか言いようがない。「踊り子」と勘違いされているのか、周りで踊る人々の視線を十二分に集めている。
―お似合いじゃないか。
ルナは思う。踊りながら会話を楽しんでいるのか、レイバックの口元は頻繁に動く。メアリも同様だ。遠く離れたルナの耳に彼らの会話が届くことはない。しかし手を取り合った二人の口元には和やかな笑みが浮かぶ。千年の統治を誇る神獣の王と、一途に彼を想い続けた人間の姫君。二人が結ばれることがあれば、メアリの恋物語はさぞや美しく民の間で語られることであろう。それは誰も悲しむことのない、理想的とも言える未来だ。
レイバックとメアリから視線を外し、ルナがクリスの姿を探し始めた時である。突然背中に冷水を浴びせられ、ルナは悲鳴を上げた。振り向けばそこには空のグラスを手にした少年が、唖然とした表情で立ち竦んでいる。柔らかそうな獣耳の生えた少年だ。
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「気にしないで良いですよ。グラスの中身は水ですか?」
「いいえ、赤ワインです。申し訳ありません。ドレスに色が…」
緋色のドレスに赤ワインならばさほど目立ちはしないはずだ。しかし辺りはすっかり暗闇で、人混みを離れた今、通り抜けて行く風は冷たい。濡れたドレスを着たままでいるのは少々酷だ。どうしたものかと考え込むルナの元に、一人の男性が近づいてくる。
「どうされました?」
声のする方を振り返れば、黒の燕尾服を纏った中年の男性が笑みを浮かべて立っていた。ルナの知った顔である。名前はわからぬが、ドラキス王国の重鎮である十二種族長の一人だ。几帳面な印象を与える顔立ちに、長めの黒髪は頭頂でぴったりと左右に分けられている。男性の側も、ルナの顔を把握している様子であった。
空のグラスを下げたままの少年が、男性の問いに答える。
「僕が彼女のドレスに飲料をかけてしまって…」
「でしたら休憩室にご案内致しましょう。踊りに夢中で、料理や酒を零すというのは多々ある出来事です。替えのドレスの貸し出しが行われておりますよ」
そう言って男性の指さす先は、聖ジルバード教会に似せた建物だ。建物に立ち入る者はほとんどいないが、建物内の下階の部屋の窓には明かりが灯されている、
「連れがいますから、彼が戻ったら一緒に向かいます」
「外交使節団の青年でしょう。顔は把握しておりますから、後ほどお連れ致しますよ。一度冷えた身体は中々温まりません。すぐに着替えに向かわれるのが宜しい」
「わかりました。お願いします」
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建物の入り口を潜ったルナと男性は、無機質の廊下を無言で歩く。間もなくして廊下の一角に開かれた扉があった。男性が中を覗き込むと、祭りのスタッフと思われる若い女性が椅子に腰掛けている。
「替えのドレスを頼む。飲料が掛かってしまったようだ」
男性の声に、女性スタッフはすくと席を立った。濃い化粧の施された顔がルナに向けられる。
「こちらへどうぞ。すぐにお召替え致しましょう」
手招きをされルナが立ち入った休憩室は、王宮の会議室と同じような造りの部屋であった。折り畳まれた長テーブルが部屋の隅に置かれ、その横には簡素な作りの椅子が積み上がっている。壁には小さな黒板が掛けられ、木造りの棚には文具や紙の束が押し込められていた。そして会議室の内装とは不釣り合いに、壁一面には多種多彩のドレスが掛けられている。数は少ないが燕尾服もある。他にも床には20に及ぶほどの靴が並べられ、窓際の長テーブルの上にはアクセサリーや化粧品の類も置かれている。
女性はルナを部屋奥にある椅子に座らせ、長テーブルに置かれたメモ紙を手に取った。
「先にお名前とお住まいを教えてください。ドレスの返却は後日で構いませんが、お忘れになっている場合はこちらから回収に赴く場合がございます」
「わかりました。名前はルナ。住まいは…今は一時的にポトス城の王宮に滞在しています」
ペンを持つ女性の指先が止まる。不審に思ったルナは女性の顔を仰ぎ見るが、その頃には女性は淀みない動きで記述を再開していた。ルナの名と住まいを紙に書き終えた頃には、扉付近に十二種族長の男性の姿はなかった。
「身体が冷えるといけませんから、先にお拭き致しますね。ドレスはどのような体型の方でも着られるデザインとなっていますから、後ほど好きな物をお選びください」
女性はルナの背後に立ち、濡れた背中に手拭いを当てる。すぐ後ろに立つ女性の姿を、ルナの側からは見ることができない。部屋には鏡がないのだ。着替えをするための部屋なのに、鏡がないのは奇妙だ。疑問を感じながらもルナは女性の奉仕に身を任せる。
「首飾りを一度お取り致しますね。ワインが掛かっておりますから」
「あ、はい」
女性の手が首裏に伸び、ややあって革紐の首飾りはルナの首元から外される。女性の手元はルナの背後で動く。そして数秒の後に、首飾りは再びルナの首元に宛てがわれた。
「…あれ?」
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彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
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俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
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二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
神子は二度、姿を現す
江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結
ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。
死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが
神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。
戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。
王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。
※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。
描写はキスまでの全年齢BL
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
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【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
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