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無垢と笑えよサイコパス
束の間の
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宿を出た3人は、先ほど魔獣車で通り抜けた坂道を徒歩で下った。速足で10分も歩けば山林の風景は賑やかな街並みとなる。日暮れ時であるにも関わらず地獄谷の街中は多くの人でごった返し、薄暗い空の下には色とりどりの提灯が灯っていた。客を呼び込む宿があり、土産を売る店があり、食べ物を売る屋台がある。他にもすでに席の埋まりそうな小さな酒場や、店先にいくつものテーブルを並べた居酒屋など、広い道の両脇には色彩豊かな店が立ち並ぶ。店や屋台の店員はもっぱら鬼族であるが、通りを歩く観光客は多くの種族が混在していた。人間も魔族も皆楽しそうな様子である。
初めに立ち入った土産店でビットは大量の菓子を買い込んだ。「今夜皆で食べましょう」と上機嫌である。次に立ち入った酒屋ではゼータが紙袋一杯の酒瓶を購入した。にこにこ笑顔で酒瓶の紙袋を抱え込むゼータを見て、レイバックは怪訝な顔である。
「どうするんだ、その酒」
「今夜飲みますよ。珍しいお酒ですし、皆で飲みましょう」
「酒は強いのか?」
「強いですよ。かなりの酒豪であると自負しています」
「…それは知らなかったな」
いくつかの土産物店を回り、両手いっぱいの酒とつまみを買い込んだ3人は賑やかな通りをのんびりと歩いた。買い込んだと言っても実際にせっせと買い物をしたのはゼータとビットの2人で、レイバックは2人が持ちきれなくなった荷物を引き受けただけである。右手にゼータの紙袋を、左手にビットの紙袋をぶら下げたレイバックは不満顔だ。「浮かれた旅行者は一体どっちだ」とでも言いたげである。
「レイは地獄谷を訪れた経験は?」
「視察目的ならば何度かある。地獄谷はポトスの街に続くドラキス王国内の一大観光地だからな。しかしこうしてのんびりと街を歩くのは初めての経験だし、温泉に浸かるというのも初めてだ」
「視察の時はどこに泊まるんですか?野宿?」
「地獄谷まで来てさすがに野宿はしない。街外れに王宮で贔屓にしている小さな御宿があるんだ。大人数で雑魚寝ができる大部屋があって、宿泊費が安いのが魅力でな。風呂は付いているが温泉ではないんだよな。しかし食事は美味い」
「雑魚寝?王様がお供の者と一緒に雑魚寝をするんですか?」
「する。俺だけ別部屋というのも寂しいだろう」
「皆気を使いません?王様が同室って」
「王宮を出れば気を遣う必要はないと常々言ってある。官吏にも兵士にもだ。魔獣討伐で野営をするときは薪だって拾うし飯も作るぞ。怪我人が出れば手当もするし、人を担ぐこともある」
「へぇ…」
気安い王でありながらも確固たる威厳を築いていられるのは、国内最強と称される戦闘能力ゆえであろうか。呑気と分析するゼータの横では、ビットは「王様が薪拾い?」と呟いていた。
雑談をしながら歩くうちに、3人は賑やかな通りを抜けた。人波は途絶え、辺りは一気に静寂となる。引き返そうと向きを変えた3人の目に、木でできた立て看板が飛び込んできた。
―この先、地獄谷
おどろおどろしい文字で書かれた看板をしばし眺め、3人は誰が率先するともなく看板の指す小路に足を踏み入れる。ぽつりぽつりと街灯が設置された小道を歩き、狭い石造りの階段を下れば目の前に巨大な山肌が現れた。茶色と黄色の織り交ざった不思議な色をした山肌で、あちらこちらに不自然な穴が開いている。人が身を屈めて通れるほどの大きさの、無数の穴だ。穴の中からは白煙が立ち上っていた。
「臭っ。何ですか、ここ」
ビットは顔をしかめ、手で鼻と口を覆った。柵が付いているためそれ以上山肌に近づくことはできない。しかしまだ山肌まではかなりの距離があるにも関わらず、汗ばむような熱気と鼻を突く刺激臭が漂ってきた。獣人族であり人より鼻が利くビットにとっては耐え難い臭いであろう。
「ここが地獄谷という名の由来となる景色らしい。山肌にある穴のうちのどれか一つが地獄に繋がっていると言われている…数年に一度地獄谷では神隠しが起こり、それは地獄からやって来た閻魔と呼ばれる存在が人を連れ去るからであると言われている…。言い伝えのようなものだろうか」
レイバックが柵の近くにある看板を見ながら説明を行った。この地が地獄谷と呼ばれるのにはそれ相応の由来があったのだ。地獄とは果たしてどのような場所なのであろう。あるかどうかもわからぬ土地に思いを馳せ、しばらく白煙立ち昇る地獄の風景に見入っていた3人であったが、やがてビットが強烈な匂いに耐え兼ね逃走した。そこでレイバックとゼータも彼の後を追って、元来た道を引き返したのであった。
***
いっぱいの手土産を抱えた3人が御宿に戻ると、丁度夕食の時間であった。客室のちゃぶ台の上には5人分の膳料理が並べられている。皆が席に着くと間もなく仲居がやって来て、料理の食べ方を丁寧に説明した。膳に並ぶ料理は食べなれたポトスの街の料理とも。王宮の料理ともまるで違う。説明を聞かなければどこから手を付けて良いのかわからぬ料理ばかりなのだ。
膳には乾杯の酒が付いており、ゼータとビットは料理よりも先に乾杯である。なみなみと注がれた一杯を飲み干し、すぐさま買い溜めてきた酒瓶の栓を抜く。集落の酒は集落の料理とよく合う。ぷんとアルコールの香る透明な酒をちびちび飲みながら、ゼータとビットは豪勢な料理に舌鼓を打つ。部屋に漂う酒の香りに喉を鳴らしたレイバックがゼータに向けてグラスを差し出すが、そのグラスに酒が注がれることはなかった。「温泉に入ると酒が回ります。地獄谷の湯は温度が高いですから、少しの酒でも泥酔に繋がります。お気を付けください」そうカシワギが忠告したためである。王様という身分を隠しこの場に参加する以上、酔っぱらってカシワギとフランシスカにボロを出すのは避けなければならない。
夕食を終えた後は各自自由時間だ。カシワギとフランシスカは御宿お勧めの焼酎を片手に談笑、レイバックとゼータは温泉へと向かった。
買い込んだ酒はまだまだ残っているが、入浴を先に済ませなければ思う存分身体に酒を回すことはできない。「温泉へ行く」と言って客室を出るゼータの背には、当然ビットが張り付いて来ようとする。しかし足元をふらつかせ漆喰の壁に衝突したため、カシワギの制止が掛かった。「そこの酔っぱらい、入浴は明日朝になされよ」と。
レイバックとゼータが浴場の入口である青いのれんをくぐると、人気のない4畳ほどの部屋があった。壁面の棚にはいくつものかごが置かれている。棚の上にはよく見える筆文字でこう書かれていた。
―脱いだ衣類はかごの中へ
成程、ここで衣服を脱いで浴場に向かうのか。レイバックとゼータはそれぞれかごの位置を決め、脱いだ衣類を放り込んでゆく。
「…何を見ている?」
ふと視線を感じたレイバックがゼータを見れば、黒い瞳はレイバックの上半身を凝視していた。無遠慮な視線はレイバックの裸の胸元を見つめ、たくましい二の腕を辿り、そして6つに割れた腹筋へと辿り着く。
「随分といい身体をしているじゃないですか」
「ん?ああ、刀を振れるように鍛えているからな。触るか?」
「結構です。別に羨ましいと思ったわけではないですよ。ただの感想」
ふん、と鼻を鳴らしたゼータは脱いだシャツを籠に放り入れた。残念、とレイバックは小さく呟く。
脱衣を済ませ引き戸を開ければ、そこは熱気立ち込める浴場であった。檜造りの小さな浴槽があり、浴槽の正面には3つの洗い場が備えられている。洗い場に置かれた木桶も木椅子も全て檜製だ。檜と硫黄の混じり合う人生で初めての香りを嗅ぎながら、レイバックとゼータはそろそろと浴場に立ち入る。「温泉に入る前に掛け湯をするように」とのカシワギの忠告を思い出し、木桶で救い上げた湯を数度身体に掛けた後、硫黄漂う温泉に浸かり込む。
「うわぁ…気持ち良い。癖になりそう…」
手拭いを頭に載せたゼータはご満悦だ。「湯に浸かるときは手拭いを頭に載せるべし」というのも事前にカシワギに教わった温泉の作法である。この作法に何の意味があるのだろうと不思議に思いながらも、レイバックはゼータと同じように自身の手拭いを頭頂に載せた。
「いざ湯に浸かると硫黄臭さも気にならないものだな。確かにこれは良い。観光客が集まるのも頷ける」
「良いですねぇ。また来ましょうか」
「2人でか?」
「そうそう。新婚旅行に来ましょう」
「今来ているじゃないか」
「だって新婚旅行っぽくないじゃないですか。2人きりになる機会もあまりないし。これはこれで楽しいけれど新婚旅行とは言えません」
顎下まで湯に浸かり込んだゼータを見下ろしながら、レイバックは目を瞬かせた。「新婚旅行に行こう」と誘った言葉を一刀両断された過去から、ゼータは2人きりでの旅行になど興味がないと思っていたのだ。その気になれば2人きりになれる客車内にビットを誘い込み、街歩きにも皆を誘うくらいなのだから、この旅行中に甘い空気を作り出すつもりも更々ないのだと。しかしどうやら、それはレイバックの思い違いであったようだ。
「2人きりになりたかったのか?」
「そりゃあね。新婚旅行と言うくらいだから多少は甘い雰囲気を期待しますよ」
「…ひょっとしてかなり酔っているか?すぐに上がるか?」
「何で?折角正直に物申しているんだから素直に受けとってくださいよ」
「そうか…」
呟いたレイバックはもぞもぞと尻を動かし、ゼータの左隣に張り付いた。いつもならば「この熱い湯船の中で傍に寄るな」と押し返されるところであろうが、今日のゼータからは苦情は出ない。それどころか鍛え上げられたレイバックの二の腕に頬をすり寄せるご機嫌具合だ。
新婚旅行とは程遠い旅路の中で、つかの間甘美な時が過ぎる。
初めに立ち入った土産店でビットは大量の菓子を買い込んだ。「今夜皆で食べましょう」と上機嫌である。次に立ち入った酒屋ではゼータが紙袋一杯の酒瓶を購入した。にこにこ笑顔で酒瓶の紙袋を抱え込むゼータを見て、レイバックは怪訝な顔である。
「どうするんだ、その酒」
「今夜飲みますよ。珍しいお酒ですし、皆で飲みましょう」
「酒は強いのか?」
「強いですよ。かなりの酒豪であると自負しています」
「…それは知らなかったな」
いくつかの土産物店を回り、両手いっぱいの酒とつまみを買い込んだ3人は賑やかな通りをのんびりと歩いた。買い込んだと言っても実際にせっせと買い物をしたのはゼータとビットの2人で、レイバックは2人が持ちきれなくなった荷物を引き受けただけである。右手にゼータの紙袋を、左手にビットの紙袋をぶら下げたレイバックは不満顔だ。「浮かれた旅行者は一体どっちだ」とでも言いたげである。
「レイは地獄谷を訪れた経験は?」
「視察目的ならば何度かある。地獄谷はポトスの街に続くドラキス王国内の一大観光地だからな。しかしこうしてのんびりと街を歩くのは初めての経験だし、温泉に浸かるというのも初めてだ」
「視察の時はどこに泊まるんですか?野宿?」
「地獄谷まで来てさすがに野宿はしない。街外れに王宮で贔屓にしている小さな御宿があるんだ。大人数で雑魚寝ができる大部屋があって、宿泊費が安いのが魅力でな。風呂は付いているが温泉ではないんだよな。しかし食事は美味い」
「雑魚寝?王様がお供の者と一緒に雑魚寝をするんですか?」
「する。俺だけ別部屋というのも寂しいだろう」
「皆気を使いません?王様が同室って」
「王宮を出れば気を遣う必要はないと常々言ってある。官吏にも兵士にもだ。魔獣討伐で野営をするときは薪だって拾うし飯も作るぞ。怪我人が出れば手当もするし、人を担ぐこともある」
「へぇ…」
気安い王でありながらも確固たる威厳を築いていられるのは、国内最強と称される戦闘能力ゆえであろうか。呑気と分析するゼータの横では、ビットは「王様が薪拾い?」と呟いていた。
雑談をしながら歩くうちに、3人は賑やかな通りを抜けた。人波は途絶え、辺りは一気に静寂となる。引き返そうと向きを変えた3人の目に、木でできた立て看板が飛び込んできた。
―この先、地獄谷
おどろおどろしい文字で書かれた看板をしばし眺め、3人は誰が率先するともなく看板の指す小路に足を踏み入れる。ぽつりぽつりと街灯が設置された小道を歩き、狭い石造りの階段を下れば目の前に巨大な山肌が現れた。茶色と黄色の織り交ざった不思議な色をした山肌で、あちらこちらに不自然な穴が開いている。人が身を屈めて通れるほどの大きさの、無数の穴だ。穴の中からは白煙が立ち上っていた。
「臭っ。何ですか、ここ」
ビットは顔をしかめ、手で鼻と口を覆った。柵が付いているためそれ以上山肌に近づくことはできない。しかしまだ山肌まではかなりの距離があるにも関わらず、汗ばむような熱気と鼻を突く刺激臭が漂ってきた。獣人族であり人より鼻が利くビットにとっては耐え難い臭いであろう。
「ここが地獄谷という名の由来となる景色らしい。山肌にある穴のうちのどれか一つが地獄に繋がっていると言われている…数年に一度地獄谷では神隠しが起こり、それは地獄からやって来た閻魔と呼ばれる存在が人を連れ去るからであると言われている…。言い伝えのようなものだろうか」
レイバックが柵の近くにある看板を見ながら説明を行った。この地が地獄谷と呼ばれるのにはそれ相応の由来があったのだ。地獄とは果たしてどのような場所なのであろう。あるかどうかもわからぬ土地に思いを馳せ、しばらく白煙立ち昇る地獄の風景に見入っていた3人であったが、やがてビットが強烈な匂いに耐え兼ね逃走した。そこでレイバックとゼータも彼の後を追って、元来た道を引き返したのであった。
***
いっぱいの手土産を抱えた3人が御宿に戻ると、丁度夕食の時間であった。客室のちゃぶ台の上には5人分の膳料理が並べられている。皆が席に着くと間もなく仲居がやって来て、料理の食べ方を丁寧に説明した。膳に並ぶ料理は食べなれたポトスの街の料理とも。王宮の料理ともまるで違う。説明を聞かなければどこから手を付けて良いのかわからぬ料理ばかりなのだ。
膳には乾杯の酒が付いており、ゼータとビットは料理よりも先に乾杯である。なみなみと注がれた一杯を飲み干し、すぐさま買い溜めてきた酒瓶の栓を抜く。集落の酒は集落の料理とよく合う。ぷんとアルコールの香る透明な酒をちびちび飲みながら、ゼータとビットは豪勢な料理に舌鼓を打つ。部屋に漂う酒の香りに喉を鳴らしたレイバックがゼータに向けてグラスを差し出すが、そのグラスに酒が注がれることはなかった。「温泉に入ると酒が回ります。地獄谷の湯は温度が高いですから、少しの酒でも泥酔に繋がります。お気を付けください」そうカシワギが忠告したためである。王様という身分を隠しこの場に参加する以上、酔っぱらってカシワギとフランシスカにボロを出すのは避けなければならない。
夕食を終えた後は各自自由時間だ。カシワギとフランシスカは御宿お勧めの焼酎を片手に談笑、レイバックとゼータは温泉へと向かった。
買い込んだ酒はまだまだ残っているが、入浴を先に済ませなければ思う存分身体に酒を回すことはできない。「温泉へ行く」と言って客室を出るゼータの背には、当然ビットが張り付いて来ようとする。しかし足元をふらつかせ漆喰の壁に衝突したため、カシワギの制止が掛かった。「そこの酔っぱらい、入浴は明日朝になされよ」と。
レイバックとゼータが浴場の入口である青いのれんをくぐると、人気のない4畳ほどの部屋があった。壁面の棚にはいくつものかごが置かれている。棚の上にはよく見える筆文字でこう書かれていた。
―脱いだ衣類はかごの中へ
成程、ここで衣服を脱いで浴場に向かうのか。レイバックとゼータはそれぞれかごの位置を決め、脱いだ衣類を放り込んでゆく。
「…何を見ている?」
ふと視線を感じたレイバックがゼータを見れば、黒い瞳はレイバックの上半身を凝視していた。無遠慮な視線はレイバックの裸の胸元を見つめ、たくましい二の腕を辿り、そして6つに割れた腹筋へと辿り着く。
「随分といい身体をしているじゃないですか」
「ん?ああ、刀を振れるように鍛えているからな。触るか?」
「結構です。別に羨ましいと思ったわけではないですよ。ただの感想」
ふん、と鼻を鳴らしたゼータは脱いだシャツを籠に放り入れた。残念、とレイバックは小さく呟く。
脱衣を済ませ引き戸を開ければ、そこは熱気立ち込める浴場であった。檜造りの小さな浴槽があり、浴槽の正面には3つの洗い場が備えられている。洗い場に置かれた木桶も木椅子も全て檜製だ。檜と硫黄の混じり合う人生で初めての香りを嗅ぎながら、レイバックとゼータはそろそろと浴場に立ち入る。「温泉に入る前に掛け湯をするように」とのカシワギの忠告を思い出し、木桶で救い上げた湯を数度身体に掛けた後、硫黄漂う温泉に浸かり込む。
「うわぁ…気持ち良い。癖になりそう…」
手拭いを頭に載せたゼータはご満悦だ。「湯に浸かるときは手拭いを頭に載せるべし」というのも事前にカシワギに教わった温泉の作法である。この作法に何の意味があるのだろうと不思議に思いながらも、レイバックはゼータと同じように自身の手拭いを頭頂に載せた。
「いざ湯に浸かると硫黄臭さも気にならないものだな。確かにこれは良い。観光客が集まるのも頷ける」
「良いですねぇ。また来ましょうか」
「2人でか?」
「そうそう。新婚旅行に来ましょう」
「今来ているじゃないか」
「だって新婚旅行っぽくないじゃないですか。2人きりになる機会もあまりないし。これはこれで楽しいけれど新婚旅行とは言えません」
顎下まで湯に浸かり込んだゼータを見下ろしながら、レイバックは目を瞬かせた。「新婚旅行に行こう」と誘った言葉を一刀両断された過去から、ゼータは2人きりでの旅行になど興味がないと思っていたのだ。その気になれば2人きりになれる客車内にビットを誘い込み、街歩きにも皆を誘うくらいなのだから、この旅行中に甘い空気を作り出すつもりも更々ないのだと。しかしどうやら、それはレイバックの思い違いであったようだ。
「2人きりになりたかったのか?」
「そりゃあね。新婚旅行と言うくらいだから多少は甘い雰囲気を期待しますよ」
「…ひょっとしてかなり酔っているか?すぐに上がるか?」
「何で?折角正直に物申しているんだから素直に受けとってくださいよ」
「そうか…」
呟いたレイバックはもぞもぞと尻を動かし、ゼータの左隣に張り付いた。いつもならば「この熱い湯船の中で傍に寄るな」と押し返されるところであろうが、今日のゼータからは苦情は出ない。それどころか鍛え上げられたレイバックの二の腕に頬をすり寄せるご機嫌具合だ。
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