イヴたちの館

さくら乃

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第三章

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「あの花瓶……華さんの机にあったのも、本当は華さんに対してじゃなかったの」
「えっ」
 凜音が初めて隠していた事実を明かす。
「華さんの席の子も九月の初めに姿を消して、あの花瓶が置かれた……そこへ華さんが転入して来たんだけど……あの花瓶は置かれ続けた。その辺りは前に言った理由だと思うの」
『外から来た子を排除したがる』
 凜音の言っているのはそのことだろう。
「この学院のどの教室にもああやって花瓶が置いてあるのよ……」
(それは……つまり、姿を消してるのはこのクラスだけではないと言うこと……)
 そんなことってあるのだろうか、華は衝撃を覚えた。
 しん……として、お互い顔を見合わせる。
「ねぇ……もう行きましょう」
 瑞希が寒がるようにして自分の腕を擦った。
「そうね、行きましょう」
 今全員が恐らく不気味な何かを感じたに違いない。瑞希の言葉に頷いて後方の扉に身体を向けた。華も椅子から立ち上がり凜音の隣を歩く。他の二人は少し前を歩いていた。
「華さんの席……前の涼さまのルームメイトなの」
 華だけに聞こえる声で凜音は言った。秘密というわけでなくそれは周知の事実だが、大きな声で言える内容でもない。
 華にとっては初めて知ることだったが。
「その子だけじゃなくて、涼さまのルームメイトが他にも……だから、あたし華さんのことが心配で。もし何かあったら相談してね」
「え……」
 じわっと恐怖を感じてどう答えていいのかわからない。
(本当のことなのかしら……嘘言ってるようには思えないけど……単なる偶然とか……それとも、黒染さんに関係が……)
「……ありがとう。そうするわ……」
 頭の中ではいろいろ考えたが聞いてはいけないような気がして、そう答えるしかなかった。
 華と凜音が後方の扉から出ようとした時、前方の扉から誰が教室に入った。それが目に入って華は扉を出てから振り返る。
 その女性ひとはグレーのワンピースを着て、それよりも淡いグレーの頭巾を被っていた。彼女は音も立てずに絵玲奈の席の前に来るとそこに立ち尽くした。何処か辛そうに花瓶の置いてある机を見詰めている。
「あの人……」
 食事時に見掛ける。配膳や小さな子たちの面倒を見ているシスターだ。
「シスター・ユリアね」
 凜音も立ち止まって覗き込んでいた。
 シスター・ユリアはやがて花瓶を手にすると、それを持って教室の外へと出て行った。他に目が行かなかったのか華たちのことは気づかなかったようだ。
「行きましょう」
 見ると瑞希と亜津沙が少し先で待っていたのでパタパタと小走りに走り寄った。
「シスター・ユリア、花瓶持って行きましたわね」
 と瑞希。彼女たちからもその姿が見えたらしい。

    
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