7 / 185
第二章
1
しおりを挟む僕が今の家に越して来たのは、保育園の年長の年の、夏だった。
家を建て、それまで住んでいたアパートを出た。新しい家はわくわくしたが、それ以上に知らない場所に行くのは、不安で仕方がなかった。
その当時から気が弱くて人見知りだった。アパートの近所の子どもたちともやっと遊べるようになったところで、また一からやり直し。
入学までも半年ということもあり、転園はしなかった。そうなると、保育園の友だちとも同じ小学校に通うこともない。
新しい場所で新たな友だちを作る、これは僕にはかなり難易度が高かった。
そんな不安を抱えたなかで、僕は城河 樹と出会った。
コの字に切り取られた一角に六軒の家が並ぶという予定地。完成し入居したのは、僕の家が最初。まだ更地の場所もある。
だから、引っ越し数日前の挨拶は、すぐ隣とかではなく、もう一つ隣だったり、道路を挟んだ向かい側だったりする。
知らない人と会うのが怖くて僕は始終母の陰に隠れていた。
道路を挟んだ向こう側の家で出迎えてくれたのは、綺麗で優しそうな女の人だった。
母や姉と挨拶し合うとその女性は、母のスカートを掴んだまま後ろに隠れてる僕を軽く覗き込んで、にっこり笑った。
「お名前は? 幾つかなのかなー?」
「…………」
何も答えない僕に母はちょっと苦笑いする。
「息子の七星です。来年小学校にあがります」
「そうなのね」
楽しそうな顔をして、
「いつき~ちょっとおいで~」
すぐ後ろの階段に向かって声をかけた。
バタンっとドアを乱暴に開閉する音が聞こえたかと思うと、男の子がドタバタ階段を降りてきた。
顔も、半袖半ズボンから出ている手足も、日焼けしている。髪は短く、後ろは刈り上げれているようだ。
全体的に活発そうな雰囲気が感じられる。
(小学生かな……?)
「母さん、何?」
あと二段というところで立ち止まり、僕を見つけたらしい。ゆっくり降りて母親と並ぶと、
「誰?」
じっと見つめて、そう言った。
(こわ……っ)
スカートを握りしめるだけじゃなく、顔も隠した。
「お引っ越しのご挨拶に来られたのよ。道を挟んだ向こう側の角のお家よ」
樹の母親がそう説明する。
「ふーん」
どんな顔をして言っているのか、声は興味なさそうにしか聞こえない。
「ななせくんていうんですって──樹と同い年よ」
35
あなたにおすすめの小説
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる