12 / 185
第三章
2
しおりを挟む今日の“秘密基地”には先客がいた。
中央にある石碑の前に三人の後ろ姿。
それと、入口から見て右手にある二つあるブランコに二人。その両方が使われている。二人とも軽く揺らしていて、キイキイ音が聞こえた。その二人は、中学生か高校生くらいに見える。
皆一様に髪の色が黒ではない。
見た目で判断してはいけない。
でも。
何処か不穏な雰囲気を感じて、足を止めた。
樹も一瞬躊躇したが、そのままずんずんと進んで行く。僕は彼らから目を反らし、遠ざかる樹のスニーカーを見ていた。
不意に、シューッという音とシンナーの臭い。
(なに?)
顔をあげると走りだした樹の背中と、石碑にラッカーを吹きかけている三人の後ろ姿が同時に見えた。
赤、黄色、青。信号機を思わせる色で、赤面するようなセクシャルな言葉や、『K中参上!』という別な意味で恥ずかしい言葉で、瞬く間に石碑が埋めつくされる。
学校の全校集会で「最近学区内で、壁に悪戯書きをされることが多く……」と校長先生の話が思い浮かんだ。
(この人たちが? K中の生徒だったんだ)
そんなことをぼんやり考えている場合ではなかった。
「やめろーっっ!!」
樹の叫び声が響く。
軽く跳躍して足を振り上げていた。
(あれは! 飛び蹴り!)
「い……っ」
(……っくん!)
心の中で叫ぶが声にならず。
後ろを向いている三人には樹は見えておらず、声を聞いてからだと一歩反応が遅れる
「おいっ!」とか「✕✕危ない!」とかブランコの方向からは声が飛んでくる。
格好良く飛び出して行った樹だが、漫画のようにそう上手くはいかない。
一段高いところに石碑があったのと、目標にされた中学生が振り返る為に身体を移動させたのとで、飛び蹴りは不発に終わった。
樹の足は行き場を失う。バンッと音を立てて元はつやつやしていたであろう石碑の台を足裏で叩いた。
当然痛い筈で、
「いたっ」
思わずといった感じで声が漏れた。
「なんだ、お前」
他の二人も振り返り、更にブランコに乗っていた二人もそこに駆け寄る。
「俺は、M小の城河 樹だ!」
名乗りを上げられ、周りは一瞬呆気に取られた様子だ。
(い、いっくん?!)
僕も呆気に取られて固まる。
「名前なんか、聞いてねー」
「バッカじゃないのっ」
一瞬の間の後口々に囃し立てる。
「小学生は引っ込んでろっ」
どんっと押されて、樹が一、二歩よろめく。勿論それくらいで引き下がる彼ではない。
一番近くにいる金髪男子のラッカーを素早く奪い取り、ど突き返す。
不意打ちを食らい、その男子もよろめいた。運の悪いことに石段を踏み外して落ち、尻餅をつく。
「こいつっ」
再び全員が色めき立った。
それにも動じず樹はラッカーを遠くに投げ捨てた。
32
あなたにおすすめの小説
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる