はじまりの朝

さくら乃

文字の大きさ
46 / 185
第十章

 2

しおりを挟む
 それをまったく何でもないことのように言って退ける明は、僕とは全然違う人種。『大物』とも思える。
 しかしその軽さに大地は更に憤ってる。
「なにっ、それっ。信じられないっ。もう、あんた、やだっ。近づくなーっ」
「だいくん、つめたっ」



 留年したこと、見た目、で判断してしまい、大地の言ったことは半信半疑であったが、その後の定期テストで正しかったことが判明した。
 一学期中間期末、二学期中間どれもトップだった。
 それはそれで。
「だからっ。なんで、最初からちゃんとやらないんだよーっっ」
 お弁当を飛ばしそうな勢いで、ご立腹の大地だった。
 それを明はスルーして、僕に話しかける。
「ななちゃんも上位だよねぇー。ななちゃんこそ、N高校受ければよかったんじゃないのぉ?」
 明に訊かれ、僕はぶんぶんと頭を横に振った。
「絶対受験の時失敗するって思って。緊張し過ぎて会場にすら行けないかも……T高校を見下してるってことじゃなくて。……ここでも、もういっぱいいっぱいだったんです……」
 だいたい僕の性格を把握している明が、何も言わず頭を撫でた。

「樹とは正反対だねー」
「いっくん?」
「樹……小学校の頃、勉強ダメだったでしょー」
 にやにや笑いをしている。
 これは答えていいことなのか。
 樹は今日は傍にいないけど。
「アイツ、ほんと、運動神経しかないヤツだったからねー」
 今度はガハハハッと大笑い。
 僕は昔、勉強を教えてたを思い出していた。

「中三になってT高校に行きたいから勉強教えてくれって、ボクに頼み込んできて。樹がボクに頼みごとするなんてないからさー。けっこう必死だったんじゃなぁい? ボクも必死だったよぉ。ダメダメ過ぎて~」
 我慢して聞いていたが、遂に笑いが漏れてしまった。

「でも……樹頑張ったよ。ちゃんと合格した。なんで、そんなに必死だったのかは、わからないけどさ」

 明の優しい言葉にじんする。
 それを聞いていた大地も、ごちそうさまの手をしながら、
「やるじゃん、城河…………金森先輩も」
 そう感心したように言う。あとのほうは不本意そうに、かなり小さい声になっていたが。
「でしょー! 樹に恩売ってやろうと思ってさっ」
 あとがいけなかった。
「さいてーっっ」
 ガツンッ。
 お弁当の入った袋を振り回し、明の頭に当てた。
「いてっ。だいくん、ひどい~」
「ふんっ」


(大くん……それは、だめだと思うよ……)



★ ★



 明が勉強を教えてなかったら、樹は今ここにいなかったかも知れない。僕が他の学校を受験していても同じこと。
 

(こうやって並んで歩くことなんて、一生なかったかも知れないな……)


 一人感慨深く思っていると、僕らの間を歩いていた明が、突然肩に手を回してきた。
 片方は樹の肩にあり、三人で肩を組んでいるような形になる。
「ところで、お二人さん、二十四日は何をしているのかな~」 
 
    
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

ショコラとレモネード

鈴川真白
BL
幼なじみの拗らせラブ クールな幼なじみ × 不器用な鈍感男子

嫌いなあいつが気になって

水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!? なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。 目に入るだけでムカつくあいつ。 そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。 同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。 正反対な二人の初めての恋愛。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

キミがいる

hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。 何が原因でイジメられていたかなんて分からない。 けれどずっと続いているイジメ。 だけどボクには親友の彼がいた。 明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。 彼のことを心から信じていたけれど…。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

処理中です...