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第十五章
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しおりを挟む(いっくんがまた、僕の部屋に……)
樹の向かいに座った僕は、そわそわしてしまう。
なんだか気恥ずかしい。
樹もまたそんな気持ちなのか、二人同時に母が用意してくれた温かい紅茶を飲んだ。
今日は蒸し暑いが、樹は雨に濡れて寒そうにしていたし、心も寒そうに見えた。温かい飲み物はほっとするだろう。
黙っているのも気詰まりになったのか、
「相変わらず、お前んちのお母さんの飯美味いよな」
ぼそっと言った。何処か懐かしそうに。
まだ僕らがいつも一緒にいた頃、うちで一緒に食べたことがあった。
「え、そうかなー? いっくんちのお母さんのお菓子もすごく美味しかったよね~」
夏休みの宿題を樹の家でやった時に、よく手作りのお菓子を出してくれた。
僕も懐かしくなる。
でもすぐにはっとした。
その母親も今は家にいないのだと。
「そ……だな」
今度は別な意味で気詰まりになってしまい、また同時に紅茶を飲む。
「ねぇ……痛くない? そこ」
樹の左頬にはまだ少し赤味が残っていた。
「や……そうでも」
「そこって…………」
「…………」
樹がその時のことを思い出したように眉間に皺を寄せて黙り込んだ。
また、失言だ。
「あ……えっと……お母さん、いっくんのことイケメンになったねーって言ってたねー……」
何か別の話題を、と思ったけど、話が続かない。
「親父に……」
「え?」
しばらく黙ったままの樹が口を開いた。
「……殴られた」
彼は左頬を左手で覆った。
「ええっ! なんで……あ……言いたくなかったら、いいよぉ……」
また余計なことを言うところだった。
「黙ってバイトしてるのがバレた」
「……内緒だったんだ? でもそれだけで……」
「理由を聞かれた。金が必要なら言えばいい、何も不自由させてないだろうって──だから言ってやったんだ、あんたといたくないから高校卒業したら、この家を出るって」
「え……」
思えば子どもの頃からそうだった。
樹の家に行っても父親に遭遇したことはほぼない。樹も父親の話をほとんどしない。二、三度聞いたことある話は、彼が父親を余り好きではないのだろうという印象のものだった。
(でも。
家を出ることを考える程って。
もしかして、いっくんのお母さんと関係している……?)
いつの間にか、城河家から姿を消していたらしい、樹の母親。
僕の怪我の責任を詫びていた彼女の姿を思い浮かべた。涙を流しながら、頭が地につきそうなくらい低頭していた。
樹が怪我をさせたわけじゃないのに。
「いっくん……」
余計なことかも知れない。
でもこれはずっと聞きたかったことの一つで、今を逃したらもう聞けないかも知れない。
「いっくんのお母さんが家を出たのって、僕の怪我のせいなの?」
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