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第十九章
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しおりを挟む黙り込んだまま歩いて行く。
普段はたぶん僕に歩幅を合わせてくれているのだろう。それをする余裕がないのか、僕は彼の背を見ながら歩くことになった。
漸くターミナルのバス停で追いついて後ろに並んだ。
バスの中では二人掛けの椅子に座るも、窓枠に頬杖をつき始終外を見ていた。
ずっと考えごとをしているようだ。
聞きたいことはあるものの、なかなか言い出し憎い雰囲気だった。
最寄りのバス停に到着した。
やはり黙ったまま先を歩こうとするので、堪らずちょんちょんと背中を突ついた。
はっとしたように振り返る。
「ナナ」
まるで僕がいることに今気づいたみたいに。
「……いっくん、ちょっと訊いていい?」
やっと歩幅を合わせて歩いてくれる。
答えは返って来ないが何を訊かれるかはわかっているのだろう。そして、ダメだとも言われないのは訊いてもいいんだと、勝手に解釈する。
一旦周りを見渡す。
これから訊ねることは、樹も余り他人に訊かれたくないかも知れない。
家は近い。知り合いに会う確率も高い。
しかし、平日の昼下がり。余り人はいないようだ。
「リュウセイ会って何? 身辺気をつけろって、あれ、僕にも言ってるように思えたけど……」
「難しい方の龍に、りっしんべんに星って書く惺──所謂暴走族った奴だ。『湘南』仕切ってるとか言ってイキってる馬鹿な奴らの集まりだよ」
「暴走族……いるんだ、やっぱり」
予想はしていたけれど。
「よく走ってるじゃん。あそこ」
近くを走る高速道路を指差す。
「リーダーの名前つけてるとか、かなりダセェけど。大きなチームであることは確かだな」
「いっくんも……そこに……?」
ヒーローに憧れてた、子どもの頃の樹からは想像できない。
明や大地の言っていた通り、中学時代荒れていたとしても。
「そうだな……母親が家を出て、お前もいなくなって、何もかもどうでもいいと思ってた時だったから」
(僕がいなくなった……わけじゃないよね……?
いっくんが僕から離れたんだ……)
またあの頃の痛みを思い出す。
でも今は樹の話を聞こう。
「一年の時、当時三年だった悪い奴らがそっちに繋がってた。別にそいつらと仲間だったわけじゃないけど、俺とカナは何度も誘われてた。何やっても面白くなかった……っていうか、何をする気も起きなかったし、断るのも面倒になって……なんとなくついて行った」
ゆっくりと歩きながら語る顔には酷く苦いものがあった。
目は過去を見るようにずっと先のほうを見つめている。
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