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第二十五章
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しおりを挟む「その時には…………」
すごく何かを言いたそうな目をしているのに。
樹はまた黙った。
一瞬時間が止まったように感じたけれど、すぐに時間は動き出す。樹はぱっと僕から離れ、また海を見る。
(キス……! とか。そんなはずないのに。バカだな、僕)
樹がそんなこと考えるはずはないのに、勝手な願望が過ぎってしまい、恥ずかしくなる。赤くなる顔を隠したくて前髪を弄るが、昔みたいに隠せるほどほ長さはない。
「まあ……ナナも先に行くだろうから、実際には追いつくことなんてないんだけどな」
「──僕、留年しようか?」
軽い口調に救われて、僕も軽く返す。
そうしたら。
「馬鹿っ」
ぴしっとデコピンが返ってきた。
「ねぇ、いっくん」
自分の中にずっとあったこと。
僕はそれを訊きたくなった。
「僕たち──これからも、ずっと」
『卒業してそれぞれの道に行ったら、どうなるか分からない。その間だけでも一緒にいたい』
その考えはずっとあって。とうとう期限は切れたのだ。
「ずっと、友だちでいられる? またこんなふうには一緒に出かけられる?」
僕がこうして気持ちを伝えるには一大決心がいる。いつも思っても言い出せない。でもそれを伝えたいほど、樹を失いたくなかった。
何十年か経って『ああ、あの頃は仲良かったよね』なんていうただの思い出だけになるのは嫌だった。
自分の『想い』は叶わなくても。
友だちとしてでも。
いつか、樹が誰かを選んだとしても。
「当たり前だろ──ずっと一緒にいられる、いや、いるよ」
その嬉しい言葉を勇気に、もう一言加えた。わざわざ言うのも照れくさい言葉だけど。
今言わないともう言えない気がする。
「じゃあ、僕のこと『親友』にしてくれる?」
「え…………」
予想外に樹が固まった。
(あれ? 僕また間違えた?)
なんだか複雑な顔をしている。
「あ、図々しいよね、こんなの。『親友』っていうならメイさんのほうが……」
ついしょんぼりと零す。
「なんで、カナ」
ちっと舌打ちが聞こえて、びくびくっと身体が震えてしまう。
身を縮めて砂浜を見つめていると、隣で樹がふっと小さく息を吐く。
「──とっくに『親友』だ……まあ、こんな俺で良かったら、だけど」
「いっくん……」
ぱっと樹の顔を仰ぐ。
その言葉がじんわり染み込んで、縮こまった身体が和らいで行く。
樹も柔らかな笑みを浮かべて僕を見ていた。
「いっくん、ありがとう」
「ナナこそ、ありがとう。こんな俺をそんなふうに思ってくれて」
二人で微笑み合って、再び海を見る。
「……いっか、今は……」
そう樹が言ったように聞こえたのは、きっと僕の気の所為。
──来年の今頃、僕らはどうしているだろう……。
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