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第二十六章
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しおりを挟む『カナと日下部はつき合っている』
樹からその話を聞いたのは修学旅行の時だから、もう一年以上も前のことだ。
「えっと……」
どう答えるのが正解なのか。
大地には聞かないでやれ、とあの時樹は言った。だから、この話には触れたことはない。このまま知らないふりをしたほうがいいのか。
僕は驚きはしたが、でも一方で納得もいった。二人の醸し出す雰囲気がだんだん違って来るのを感じていたから。
それに自分も。
男である七星は、やっぱり男である樹のことを好きだから。それは友だちの好きとは違う。
「……言わなくてもいいよぉ」
明が優しい笑みを浮かべながら言った。
たぶん顔に全部出てしまっているのだろう。
「あのコがその話に触れたくないから黙っててくれたんだよね。ありがとう」
いつものように頭を撫でてくれる。
「……ボクらもそうだから。ななちゃんの気持ちも前からわかってたんだよ」
「メイさん」
僕が樹を想う気持ちはもう二人にはわかっていたのか。
それなら樹はどうなんだろう。
(バレバレで実は引いてる……とか? それとも思いも寄らな過ぎてまったく気づいてないとか?)
(彼女いたくらいだし……男を好きになるなんてありえないよね)
「ボクらはななちゃんの味方だからね。二人は今はどんな感じなの」
(どんな……感じか……)
本当は涙が出そうなくらい切なさを感じているけれど。
僕は笑った。
「どうやら『親友』に収まったようです!」
途端に憐れむような、労るような眼差しで見られた。
「アイツ、マジでにぶちんだから」
ぎゅっと抱き締められ、またよしよしと頭を撫でられる。
本当に涙が出てきそうになったけれど。
「ま……お互いさまってヤツか」
ぼそっと声が降ってきた。
「えっ?」
なんのことだろうと思った時。
「こらーっ、何やってんだーっっ」
そんな怒鳴り声と共にドアがバーンっと開いた。
あっという間にまた別の腕に抱き締められる。
「俺の七星にっ」
「うぁっ、また、あんたそんなこと言って」
二人にぎゅうぎゅう抱き締められて、涙は出ずに終わった。
ついでにさっき明が言ったことも聞きそびれた。
でも。
相変わらずの二人に酷くほっとした。
★ ★
僕は大学生活に慣れるのに忙しくて。
瞬く間に季節は、春から夏へと変わって行く。
ほっと一息吐く時に、ふと樹に会いたくなる。
でも、明が言うところの『一か十しかない』樹は、あの時言った言葉通り僕に「会おう」とも言わないし、会いに来ることもない。
理由もわからず離れて行って交わることのなかったあの数年間と、なんのわだかまりもなく会えるのに会わない今とどちらが辛いだろうか。
あの時は何もかも諦めていた。樹を想う気持ちも今のほうが強い。
だから、今のほうがあの時よりも辛いかも知れない。
でも連絡だけは取り合っている。
ラインで。時々通話もする。
だから、樹が会ってもいいと思える時まで、僕は待つことが出来るんだ。
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