アブノーマル・ラプソディー

星ノ宮幻龍

文字の大きさ
3 / 186

第3話「転校生と被害妄想と突然の好機」

しおりを挟む
「ったく、クソお巡りめ。」
 大柄な男が倒れている警官に唾を吐きかける。
「良いから急ぎましょう。あんたのせいで余計な時間、取られちゃったし。」
 女はフードを被り直すと、男を激しく睨みつけた。
 男も女を睨み返す。
「いいや、お前のせいだね。」
「あんたのせいよ。」
「お前のせいだ。」
「あんたっ!」
「なんだよやんのか⁉」
「やったろーやないか!」
「なんで関西弁やねん!」
「あんたも関西弁やっちゅーねん!」



嵐山あらしやまかえでと言います。突然の転校に戸惑っていますが、早く皆さんと仲良くなりたいです。」
 転校生の挨拶に、クラスの女子から歓声が上がる。
 理由は明白、彼がイケメンだからだ。
 ホームルームが終わる頃には、彼の机の周りを女子たちが取り囲んでいた。
 クラスの女子のみならず、噂を聞きつけた他クラスの女子までも女子の壁の一部となっていた。
 というか、情報早すぎるだろ。
「あーあ…。イケメンはやっぱずりぃよなぁ。見ろよ、あれ。転校生、明らかに嫌がってんのに、女子ども全然退かねぇんだもん。」
 後ろに座る友人、一馬かずまが転校生の方を見てぼやく。
「俺らみてぇなフツメンが同じ表情してみろ。すぐに相手されなくなっちまうぜ。」
 確かに転校生は、露骨に嫌な表情を浮かべているが、それでも女子の壁は消えるどころかどんどん増築されていくばかりだ。
「まぁ、顔が整ってるってのは優性遺伝子の証だからな。」
 メンデルの法則とかっていうのの曲解らしいが、真理でもあると思う。
「くっそー。俺が金髪ピアスにした時だって、あんなに相手してもらえなかったってのによぉ。」
「まぁ、イケメンの定義も時代によって変わるし、モテる要素はなにも顔だけじゃないだろ?」
 適当なことを言って俺は席を立つ。
「どこ行くの?」
「トイレ。ちょっと催した・・・。」
 嘘。
 ムラムラしたからオナニーだ。
 俺が教室のドアを開けると、「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。」という声が聞こえた。
 廊下の窓に、転校生が歩いてくる姿が映っている。
「トイレの場所わかる? よかったら案内するけど。」
「あ、抜け駆けしないでよ!」
「私! 私が連れてってあげるよ!」
「ああ。大丈夫。さっき通ったから。」
 女子たちの猛アピールに、転校生は不愛想に答えて、教室を出る。
 そんな姿を遠目にちらりと見て、思う。
 確かに、不愛想な態度を見せようと、イケメンであれば許される、というのには不条理を感じる。
 一馬の気持ちもわからない。
 でも、フツメンだとかイケメンだとかブサメンだとか、俺にはもう関係ない。
 それ以前に、俺は……。
「なぁ、お前。」
 転校生がいつの間にか隣に並んで歩いていた。
「お前、神室秀青だろ?」
 初対面の転校性にいきなり名前を呼ばれた。
「……なんで俺の名前を知ってるの?」
「お前に話がある。少し付き合ってくれないか?」
転校生は相変わらず不愛想な無表情だ。
「話…って?」
 俺の問いに転校生は、何か言いにくそうに目を逸らす。
「……ここじゃちょっとマズい。大事な話なんだ。どこか人気のない場所で」
「あ、すみません。急いでるんで。」
 俺は足早にトイレへと向かう。
 なんだこいつ⁉
 気持ち悪っ!
 イケメンに急に大事な話があるとかで人気のないところに連れ込まれそうになった。
 俺男なのに。
「ちょっと待てって。ほんとに大事な話なんだ。」
 転校生が俺の肩を掴む。
「ひぃっ⁉」
 瞬間、全身が泡立つ。
 こいつ、もしかしてソッチ系か⁉
 女子に不愛想だったのも、単に女に興味がないからなのか⁉
 冗談じゃねぇ!
 ソッチの趣味を否定する気はサラサラないけど、俺は女が好きなんじゃ!
「ごめんなさい! 勘弁してください!」
「あ、おいっ!」
 俺は全速力でトイレまで向かうと、個室に入り、ドアに手を伸ばした。
「だから待てって。」
「ひゃあっ⁉」
 転校生がドアを抑えた。
 息が荒い。
 怖ぇっ!
「だから、話が」
「いや、ほんと俺、うんこなんで! うんこなんですよ! もう漏れそうなんですよ! あっち行ってくださいなんですよ!」
 俺は転校生を押しのけ、ドアを閉めて鍵をかけた。
「………なんなんだよ。」
 怖ぇよマジで!
 個室にまで押しかけて!
 なんなんだよあいつ!
 なんか息荒いし!
 危なかった。もし個室に入られでもしたら、レイプされてたかもしんねぇ!
 逃げ場ないし、相手、背高いし、イケメンだし、こんなん勝ち目ねぇじゃん!
「はぁーあ。」
折角オナニーする気だったのに、なんかもう萎えちまったよ……。
「仕方ないからテキトーにだらついてから教室戻るか。」
 さっきの転校生がまだいたら嫌だし。
「……って、ん?」
 壁越しから伝わる閉扉音。
 その先にあるのは、女の花園・女子トイレだ。
 俺は反射的に息を潜める。
「これは……」
 チャンス到来!
半ば諦めモードの股間だったが、僥倖を告げる音に敏感に反応し、先端からは既に汁が溢れていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...