6 / 186
第6話「孤独を語る転校生と突如の危機」
しおりを挟む
夕日が差し込む放課後の教室。
時計の針は既に十六時四十三分を指していた。
今日という日もあっという間に過ぎ去っていく。
俺は未だに悩んでいた。
これから、嵐山に会うべきか否か。
いや、わかっている。
さっき、あんなに良い感じのこと考えといて、未だに迷っているのかと、そう言いたいんだろう?
でも、やっぱり、人はそう簡単には成長しない。変われない。
授業中、あいつからの視線を感じる度に、やっぱり抵抗感は出てしまっていた。
ちらりと、携帯の画面を見る。
そこには、嵐山から送られてきたメールが表示されていた。
返信もなにもしないまま、放課後まできてしまっている。
「どーっすかなぁー。」
俺は未だに悩んでいた。
時計の針が十六時四十四分を指した。
フードを被った二人組の男女が、神室秀青のいる教室の隣の空き教室に潜んでいた。
「あんなガキでも『鍵』だ。奴らに引き合わせるのはかなりマズい。」
男が、夕日を眺めながら言う。
「やっぱり今からあなたが捕まえた方が良いんじゃない?」
女は男を見据える。
「なんで俺だけなんだよ。」
「男に触りたくない。」
「我儘かっ。」
男が女に向き直る。
「じゃなくても、駄目だ。『鍵』が奴らと接触しそうになったらひっ捕らえる。これがボスの命令だ。もう少し待て。」
「そんなに待ってていいのかしら。あんたも視たでしょ? あの子のエーラ。あんな異常な量、うちでも奴らの中でも視たことないわよ。」
女が片手を広げる。
「だったらお前、ボスの命令に背いてあいつ捕まえてくるか?」
男が女を見つめる。
「それはごめんね。」
女は肩を竦めた。
「嫌だったら待つことだ。俺達には、それしかねぇ。」
男は女から視線を外す。
「俺だって、ボスが何考えてるのかなんざわかんねぇよ。でも、あの人についていけば間違いはないんだ。俺達が考えることじゃねぇさ。」
人はいつだって孤独だ。誰だって孤独だ。
親がいようと兄弟がいようと友達がいようと恋人がいようと、独りきりなのは拭えない。
今の時代、SNSでいつでも誰とでも繋がることが出来る。
でも、それすらも人の孤独を加速させる。
たとえグループトークで笑いを取ろうとも、つぶやきアプリに裸を晒して話題になろうとも、真の孤独が消え去ることはない。
生まれてから死ぬまで、この孤独を埋めることはきっと叶わないのだろう。
首を上げ、頭の後ろで組んでいた手を外して起き上がる。
誰もいない放課後の屋上は、西日に朱く染まっている。
嫌でも孤独を増長させる。
携帯を取り出し、メールを開く。
「………。」
返信はない。
エーラの位置にも変動はない。
あんだけの量を間違えるわけもないし、あいつはまだ教室にいるのか。
「……確かに放課後としか言ってねぇが、にしてもいくらなんでも待たせすぎだろ。」
来ないなら来ないで、返事くらい寄こせって話だ。
思えば初対面からあいつは俺のことを避けてたな。理由は全くわからないが。
そうじゃないにしても、そもそもこの任務自体、俺に合ってなさすぎるんだよなぁ。
強硬手段が有りならいくらでもやりようはあるんだが、それは止められてるしな……。
「わからない。」
なんで俺にこの任務を与えたのか。
よりにもよって、この俺なんかに———
「お。」
エーラが動いた。
教室のドアを開け、真っ直ぐこっちに向かってきている。
動きに不自然さはない。
あいつの意思での行動で間違いはなさそうだな。
とりあえず、第一段階は終了、か。
「……⁉」
反射的に立ち上がる。
「な、なんだ……これ…⁉」
急に神室が立ち止まったと思ったら……。
エーラの量が爆発的に増大している……⁉
今朝の比じゃないぐらいに……。
しかも、まだ増え続けてっ……。
「くそっ!」
俺は屋上から校舎内へ一気に駆ける。
マズい!
これはマズいぞ!
この量は、下手をすればここが更地になる!
百人は死ぬ!
階段を一気に飛び降り、廊下を駆け抜ける。
次の角を右に曲がれば、あいつがいるはずっ!
「おいっ! 神室っ!」
俺の叫びは、しかし虚しく廊下を突き抜けていくだけだった。
「……嘘、だろ?」
いない⁉
いや、そんなはずはない。
今も確かに、エーラは出続けて……。
「……まさかっ!」
この階の一つ下にいるのか⁉
エーラが膨大過ぎて、縦の位置を見誤った⁉
「くそっ!」
俺が再び階段へと向かおうとした時。
「こらっ!」
後ろから急に怒鳴られた。
振り返ると、そこには一人の教師が立っていた。
「廊下は走るな! 危ないだろうがっ!」
中年男性の教師は、恐らくこの学校の教頭。
クラスの女子が言っていた、説教が長くて細かくてキモくてうざい奴———
「全く、何度注意してもうちの生徒は…………ああだこうだ…………どうしたこうした…………」
「はい、すみません。はい、はい。」
くそっ!
こんなことしてる場合じゃねぇのに……。
時計の針は既に十六時四十三分を指していた。
今日という日もあっという間に過ぎ去っていく。
俺は未だに悩んでいた。
これから、嵐山に会うべきか否か。
いや、わかっている。
さっき、あんなに良い感じのこと考えといて、未だに迷っているのかと、そう言いたいんだろう?
でも、やっぱり、人はそう簡単には成長しない。変われない。
授業中、あいつからの視線を感じる度に、やっぱり抵抗感は出てしまっていた。
ちらりと、携帯の画面を見る。
そこには、嵐山から送られてきたメールが表示されていた。
返信もなにもしないまま、放課後まできてしまっている。
「どーっすかなぁー。」
俺は未だに悩んでいた。
時計の針が十六時四十四分を指した。
フードを被った二人組の男女が、神室秀青のいる教室の隣の空き教室に潜んでいた。
「あんなガキでも『鍵』だ。奴らに引き合わせるのはかなりマズい。」
男が、夕日を眺めながら言う。
「やっぱり今からあなたが捕まえた方が良いんじゃない?」
女は男を見据える。
「なんで俺だけなんだよ。」
「男に触りたくない。」
「我儘かっ。」
男が女に向き直る。
「じゃなくても、駄目だ。『鍵』が奴らと接触しそうになったらひっ捕らえる。これがボスの命令だ。もう少し待て。」
「そんなに待ってていいのかしら。あんたも視たでしょ? あの子のエーラ。あんな異常な量、うちでも奴らの中でも視たことないわよ。」
女が片手を広げる。
「だったらお前、ボスの命令に背いてあいつ捕まえてくるか?」
男が女を見つめる。
「それはごめんね。」
女は肩を竦めた。
「嫌だったら待つことだ。俺達には、それしかねぇ。」
男は女から視線を外す。
「俺だって、ボスが何考えてるのかなんざわかんねぇよ。でも、あの人についていけば間違いはないんだ。俺達が考えることじゃねぇさ。」
人はいつだって孤独だ。誰だって孤独だ。
親がいようと兄弟がいようと友達がいようと恋人がいようと、独りきりなのは拭えない。
今の時代、SNSでいつでも誰とでも繋がることが出来る。
でも、それすらも人の孤独を加速させる。
たとえグループトークで笑いを取ろうとも、つぶやきアプリに裸を晒して話題になろうとも、真の孤独が消え去ることはない。
生まれてから死ぬまで、この孤独を埋めることはきっと叶わないのだろう。
首を上げ、頭の後ろで組んでいた手を外して起き上がる。
誰もいない放課後の屋上は、西日に朱く染まっている。
嫌でも孤独を増長させる。
携帯を取り出し、メールを開く。
「………。」
返信はない。
エーラの位置にも変動はない。
あんだけの量を間違えるわけもないし、あいつはまだ教室にいるのか。
「……確かに放課後としか言ってねぇが、にしてもいくらなんでも待たせすぎだろ。」
来ないなら来ないで、返事くらい寄こせって話だ。
思えば初対面からあいつは俺のことを避けてたな。理由は全くわからないが。
そうじゃないにしても、そもそもこの任務自体、俺に合ってなさすぎるんだよなぁ。
強硬手段が有りならいくらでもやりようはあるんだが、それは止められてるしな……。
「わからない。」
なんで俺にこの任務を与えたのか。
よりにもよって、この俺なんかに———
「お。」
エーラが動いた。
教室のドアを開け、真っ直ぐこっちに向かってきている。
動きに不自然さはない。
あいつの意思での行動で間違いはなさそうだな。
とりあえず、第一段階は終了、か。
「……⁉」
反射的に立ち上がる。
「な、なんだ……これ…⁉」
急に神室が立ち止まったと思ったら……。
エーラの量が爆発的に増大している……⁉
今朝の比じゃないぐらいに……。
しかも、まだ増え続けてっ……。
「くそっ!」
俺は屋上から校舎内へ一気に駆ける。
マズい!
これはマズいぞ!
この量は、下手をすればここが更地になる!
百人は死ぬ!
階段を一気に飛び降り、廊下を駆け抜ける。
次の角を右に曲がれば、あいつがいるはずっ!
「おいっ! 神室っ!」
俺の叫びは、しかし虚しく廊下を突き抜けていくだけだった。
「……嘘、だろ?」
いない⁉
いや、そんなはずはない。
今も確かに、エーラは出続けて……。
「……まさかっ!」
この階の一つ下にいるのか⁉
エーラが膨大過ぎて、縦の位置を見誤った⁉
「くそっ!」
俺が再び階段へと向かおうとした時。
「こらっ!」
後ろから急に怒鳴られた。
振り返ると、そこには一人の教師が立っていた。
「廊下は走るな! 危ないだろうがっ!」
中年男性の教師は、恐らくこの学校の教頭。
クラスの女子が言っていた、説教が長くて細かくてキモくてうざい奴———
「全く、何度注意してもうちの生徒は…………ああだこうだ…………どうしたこうした…………」
「はい、すみません。はい、はい。」
くそっ!
こんなことしてる場合じゃねぇのに……。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる