アブノーマル・ラプソディー

星ノ宮幻龍

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第6話「孤独を語る転校生と突如の危機」

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 夕日が差し込む放課後の教室。
 時計の針は既に十六時四十三分を指していた。
 今日という日もあっという間に過ぎ去っていく。
 俺は未だに悩んでいた。
 これから、嵐山に会うべきか否か。
 いや、わかっている。
 さっき、あんなに良い感じのこと考えといて、未だに迷っているのかと、そう言いたいんだろう?
 でも、やっぱり、人はそう簡単には成長しない。変われない。
 授業中、あいつからの視線を感じる度に、やっぱり抵抗感は出てしまっていた。
 ちらりと、携帯の画面を見る。
 そこには、嵐山から送られてきたメールが表示されていた。
 返信もなにもしないまま、放課後まできてしまっている。
「どーっすかなぁー。」
 俺は未だに悩んでいた。
 時計の針が十六時四十四分を指した。

 フードを被った二人組の男女が、神室秀青のいる教室の隣の空き教室に潜んでいた。
「あんなガキでも『鍵』だ。奴ら・・に引き合わせるのはかなりマズい。」
 男が、夕日を眺めながら言う。
「やっぱり今からあなたが捕まえた方が良いんじゃない?」
 女は男を見据える。
「なんで俺だけなんだよ。」
「男に触りたくない。」
「我儘かっ。」
 男が女に向き直る。
「じゃなくても、駄目だ。『鍵』が奴ら・・と接触しそうになったらひっ捕らえる。これがボスの命令だ。もう少し待て。」
「そんなに待ってていいのかしら。あんたも視たでしょ? あの子のエーラ・・・。あんな異常な量、うちでも奴ら・・の中でも視たことないわよ。」
 女が片手を広げる。
「だったらお前、ボスの命令に背いてあいつ捕まえてくるか?」
 男が女を見つめる。
「それはごめんね。」
 女は肩を竦めた。
「嫌だったら待つことだ。俺達には、それしかねぇ。」
 男は女から視線を外す。
「俺だって、ボスが何考えてるのかなんざわかんねぇよ。でも、あの人についていけば間違いはないんだ。俺達が考えることじゃねぇさ。」



 人はいつだって孤独だ。誰だって孤独だ。
 親がいようと兄弟がいようと友達がいようと恋人がいようと、独りきりなのは拭えない。
 今の時代、SNSでいつでも誰とでも繋がることが出来る。
 でも、それすらも人の孤独を加速させる。
 たとえグループトークで笑いを取ろうとも、つぶやきアプリに裸を晒して話題になろうとも、真の孤独が消え去ることはない。
 生まれてから死ぬまで、この孤独を埋めることはきっと叶わないのだろう。
 首を上げ、頭の後ろで組んでいた手を外して起き上がる。
 誰もいない放課後の屋上は、西日に朱く染まっている。
 嫌でも孤独を増長させる。
 携帯を取り出し、メールを開く。
「………。」
 返信はない。
 エーラ・・・の位置にも変動はない。
 あんだけの量を間違えるわけもないし、あいつはまだ教室にいるのか。
「……確かに放課後としか言ってねぇが、にしてもいくらなんでも待たせすぎだろ。」
 来ないなら来ないで、返事くらい寄こせって話だ。
 思えば初対面からあいつは俺のことを避けてたな。理由は全くわからないが。
 そうじゃないにしても、そもそもこの任務・・自体、俺に合ってなさすぎるんだよなぁ。
 強硬手段が有りならいくらでもやりようはあるんだが、それは止められてるしな……。
「わからない。」
 なんで俺にこの任務を与えたのか。
 よりにもよって、この俺なんか・・・に———
「お。」
 エーラ・・・が動いた。
 教室のドアを開け、真っ直ぐこっちに向かってきている。
 動きに不自然さはない。
 あいつの意思での行動で間違いはなさそうだな。
 とりあえず、第一段階は終了、か。
「……⁉」
 反射的に立ち上がる。
「な、なんだ……これ…⁉」
 急に神室が立ち止まったと思ったら……。
 エーラ・・・の量が爆発的に増大している……⁉
 今朝の比じゃないぐらいに……。
 しかも、まだ増え続けてっ……。
「くそっ!」
 俺は屋上から校舎内へ一気に駆ける。
 マズい!
 これはマズいぞ!
 この量は、下手をすればここが更地になる!
 百人は死ぬ!
 階段を一気に飛び降り、廊下を駆け抜ける。
 次の角を右に曲がれば、あいつがいるはずっ!
「おいっ! 神室っ!」
 俺の叫びは、しかし虚しく廊下を突き抜けていくだけだった。
「……嘘、だろ?」
 いない⁉
 いや、そんなはずはない。
 今も確かに、エーラ・・・は出続けて……。
「……まさかっ!」
 この階の一つ下にいるのか⁉
 エーラ・・・が膨大過ぎて、縦の位置を見誤った⁉
「くそっ!」
 俺が再び階段へと向かおうとした時。
「こらっ!」
 後ろから急に怒鳴られた。
 振り返ると、そこには一人の教師が立っていた。
「廊下は走るな! 危ないだろうがっ!」
 中年男性の教師は、恐らくこの学校の教頭。
 クラスの女子が言っていた、説教が長くて細かくてキモくてうざい奴———
「全く、何度注意してもうちの生徒は…………ああだこうだ…………どうしたこうした…………」
「はい、すみません。はい、はい。」
 くそっ!
 こんなことしてる場合じゃねぇのに……。
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