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第138話「少年は約束を取り付け、約束を取り付けられる」
しおりを挟む六月十一日(土)八時四十六分 真希老獪人間心理専門学校・一年教室
「そうだったの。全然知らなかったー。」
まりあ様のにこやかスマイル。
世界が浄化されていく……。
「そうね…確かに、授業が無くなったら、予定も無くなっちゃうね。」
嵐山の機転によってなんとか話を進めることができたが、しかしこれだとまりあ様を騙してるみたいで(いや、騙してるのか)気が引ける。
しかし、まりあ様とのデート権獲得が見えてきたぞ!
「あ、じゃあ、僕と一緒に」
「うーん、どうしよっかなー?」
「えぇっ⁉」
なん…だとっ……!
あの優しく社交性抜群なまりあ様が断ろうとしている⁉
やっぱり俺、嫌われて……
「あっ、でも、敬語と様付けやめてくれたらいいよっ♪」
‼
「ウンワカッタヨマリアサン」
「なんでカタコト?」
思わず吹き出すまりあさん。
やった!
やったぞ!
俺はやった!
嵐山と二人、顔を見合わせる。
嵐山も僅かに微笑している。
俺はついに、まりあさんとデートに———
「楓くんも、明日はよろしくねっ。」
「え?」
俺と嵐山、もう何度目かのハモリ。
嵐山も明日?
「え?」
まりあさんも同じ調子で驚く。
「だって、楓くんも一緒にいるってことは、明日は三人で買い物ってことでしょ?」
「うん。その通り。」
「はぁっ⁉」
思わず即答する俺を、嵐山は睨みつけてくる。
「嵐山が明日どうしても三人で買い物に行きたいっていうんです…だよ。」
「あぁっ⁉」
ついでに言い出しっぺに仕立て上げてしまった。
悪いな。
「そうなんだ。なんだかちょっと意外だけど。」
そう言いつつも微塵も疑った様子を見せないまりあさんマジ女神。
「二人とも、明日はよろしくね♪」
「はい…あ、うん! えへへ」
この笑顔だけで俺はエベレスト登頂も実現可能…な気がする。
「あ、じゃあ…明日は十一時に校舎の玄関に集合ってことで」
「うん。オッケー。」
親指を立てるまりあさんにつられ、親指を立てる。
その場の思いつきとは言え、十一時という開始時間はデートとして丁度いいんじゃないだろうか。
デートしたことねぇから知らんけど。
ちなみに、後にこの時間設定は後金によって一笑にふせられることになる。
曰く、「最初のデートは早い時間帯から長丁場に持っていくとグダるから失敗しがち。一、二時間ほどの食事とかにした方がよかった。普通の遊びみたいに接せられ、お互いに楽しめるのなら問題ないけど、お前、心音と普通に接せられねぇだろ。」とのことだ。
したり顔で語ってるが、お前もデートとかしたことねぇだろ。と言ってやった。
まりあさんに深々と頭を下げ、手を振る女神を背に嵐山と二人、元いた席へと戻る。
しかし、やった!
本当にやった!
まりあさんとプライベートで遊べる!
夢みたいだ!
まだ明日の事にもかかわらず、既に達成感に満ち溢れてしまっている。
こんなにも世界に希望が満ちていたなんてっ……!
「最悪だ。」
嵐山は隣であからさまに不機嫌な声を出す。
「悪かったよ。でも、いきなり二人っきりとかよく考えたら自信ないし、さっきみたいにナイスなフォローしてくれたら超助かる。マダガスカル。さっきは本当に助かったし。」
さっき、とは勿論、明日は休校日という例の嘘。
「あ、ああ……」
目を逸らす嵐山。
照れてんのか?
男に照れられたって嬉しくともなんともないが。
「けど、明日は休校日なんて嘘、すぐにバレそうで怖いな。いや、このまま嘘貫き通すよりかはいっそバレた方がいいのか?」
「問題ない。多分、バレない。」
人に嘘をつかせておいて罪悪感を勝手に感じてるところはスルーする流石の嵐山。
「後金と木梨は明日も登校しないだろうし、アンナカもこの様子だと明日も休みだろう。」
「ふぅん?」
アンナカさんはこの間久々に登校したって言っててもう休みだし、案外いつも通りなのか?
「一年は俺らだけ。上級生ともそうそう会うことはねぇし、あとは下田先生と口裏合わせとけば大丈夫だ。」
「すげぇ……」
あの段階でそこまで考えてたのか。
「やっぱお前、イケメンだな!」
「よせ。嫌な奴を思い出す。」
「?」
誰?
「ま、明日は頑張れよ。俺は急病ってことで行かないから。」
「駄目だ。二人っきりとかダメ、ゼッタイ。逃げようとするな。」
「お前が逃げようとするな! ………言わなきゃよかったな」
ボソリと呟く嵐山。
後悔したってもう遅いぜ?
なんせ、今の俺は誰にも止められないんだからな!
…………。
「……なぁ、イケメン。」
「その呼び方やめろ。なんだ?」
お互い席に座り、嵐山がこっちを見る。
「……デートってなにするんだ?」
「そこからかよっ!」
明くる日の六月十二日、日曜日。
ついに、女神とのデートが始まるっ!
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