追放令嬢(20)、お忍び遊郭で最強スパイに成り上がり、私を陥れたクズ貴族どもに地獄を見せます 〜前世はエリート諜報員なので、情報操作も潜入も

虹湖🌈

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約束の国のレクイエム

第35話 虹色の英雄と、女王陛下の覚悟

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 夜明けの光が、リントヴルム村の傷跡を優しく照らし出していた。
 ギルドの兵士たちは、ヴォルフガング中佐の部下たちによって捕縛され、村には解放された人々の歓声と、安堵の涙が満ちていた。戦いは、私たちの勝利に終わったのだ。

「うおおぉ! 英雄様だ!」
「我らの村を救ってくださった、聖人様たちだ!」
 村人たちは、私たちを英雄として迎え、手放しでその勝利を讃えてくれた。特に、二人の人物が、絶大な(そして少し困惑ぎみの)人気を集めていた。

「ひゃっ、くすぐったいですぅ! そんなに肩を揉まなくても、もう大丈夫ですからぁ!」
 ミラベルは、村のお年寄りたちから「シャボン玉の聖女様!」と崇められ、感謝の肩もみ(という名の、もみくちゃ)の嵐にあっていた。

 そして、もう一人の英雄は――。
「…おい、だから、くっつくなって言ってんだろ! 俺は聖人でもなければ、光る置物でもねぇ!」
 虹色のオーラを放ちながら廃教会の壁に寄りかかるカレルの周りには、村の子供たちがキラキラした目で群がっていた。「わーい、聖人様ピカピカだー!」「触るとご利益あるかなー?」と、彼の体を遠慮なくペタペタと触っている。カレルはタジタジになりながらも、その手を本気で振り払おうとはしなかった。その光景に、私は思わず笑みをこぼした。

 その夜、村人たちは、私たちのためにささやかな祝宴を開いてくれた。広場に焚かれた大きな焚き火を囲み、村で採れた野菜のスープと、少し硬いが味わい深い黒パンを分け合う。それは、王宮のどんな豪華な晩餐会よりも、温かく、そして心に染みる食事だった。

 私は、スープ皿を手に、少し離れた場所で夜空を見上げているカレルの隣に座った。彼の腹部の傷は、ミラベルの治療のおかげで塞がってはいるが、まだ痛むのだろう。
「…死ななくて良かったわ、本当に。心配させないでちょうだい」
「へっ…余計な世話だぜ。俺様が、あんな連中に遅れを取るわけねぇだろ」
 彼は憎まれ口を叩きながらも、スープを一口啜った。
「だが…まあ、その…なんだ。…礼は、言っとくぜ、リアナ」
 その、あまりにも素直な言葉に、私の方が戸惑ってしまう。
「…どういたしまして」
 そう返すのが、精一杯だった。彼の横顔は、焚き火の光と、自らが放つ虹色のオーラに照らされて、見たこともないほど穏やかに見えた。

 宴の輪から少し離れた場所で、リリアーナ姫が、村の子供たちに囲まれているのが見えた。
「リーナお姉ちゃん、大丈夫だった?」
「うん、もう大丈夫よ。みんながいてくれたから」
 彼女は、まだ自分の運命に戸惑いながらも、その生まれ持った優しさで、不安な子供たちを安心させていた。私は彼女の元へ行き、静かに声をかけた。
「…女王になる覚悟は、できたかしら?」
 私の問いに、リリアーナはまっすぐに私を見つめ返した。その瞳には、もう迷いはなかった。
「はい。最初は、私にそんな資格があるのかと、怖くてたまりませんでした。でも、皆さんが、私のために命を懸けて戦ってくれた。カレルさんが、私を守るために傷ついた。…もう、ただ守られているだけの私ではいられません」
 彼女は、自分の胸に手を当てて、はっきりと宣言した。
「私も、戦います。兄上と、ギルドと。そして、エスターニアの民が、心から笑える国を取り戻すために」
 その姿は、もはや村娘リーナではなく、エスターニアの未来を背負う、若き女王そのものだった。

 その時、ヴォルフガング中佐が、厳しい表情で私たちのもとへやってきた。彼が持ってきた魔導通信機から、レオニード王子の切羽詰まった声が聞こえてくる。
『リアナ様か! 大変なことになった! 兄上が、ギルドのボス"夜想"の後ろ盾を得て、三日後に強引に「王位継承の儀式」を執り行うと、全貴族に通達を出した!』
 タイムリミットは、三日後。あまりにも短い。

『リアナ様、どうか姫君と共に王都へ! 私が内部から、儀式を阻止するための手引きをします。これが、最後のチャンスです!』
 私たちは顔を見合わせた。やるべきことは、一つだ。

 私は、集まってくれた仲間たち――虹色に光りながらも、その瞳には鋭い光を取り戻したカレル、覚悟を決めたリリアーナ姫、やる気に満ちた(そして少し眠そうな)ミラベル、そして、静かに頷くヴォルフガング中佐――を見渡し、最終作戦を告げた。

「儀式の場で、本物のリリアーナ姫の存在を明らかにし、ギルドの悪事と、アルフォンス王子の王としての器の無さを、全ての貴族たちの前で暴露するわ」
「作戦名は…そうね、『女王陛下のお披露目会』よ!」

 翌朝、私たちは、村人たちの涙の見送りを受けながら、王都へ向けて出発した。
「姫様、必ずやお戻りください!」
「聖人様、聖女様、どうかご武運を!」
「すごくカタそうな騎士様も、お気をつけてー!」(ヴォルフガング中佐、ちょっと不満げ)

 その声援を背に、私たちは馬を走らせる。
 その先には、シリーズ最強の敵、ギルドのボス"夜想"と、歪んだ野心に燃える第一王子が待ち受けている。
 エスターニアの、そしてカレルの過去との本当の決着をつけるため、私たちの最後の戦いが、今、始まろうとしていた。
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