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第58話 仮面の教師と、見えざる生徒たち
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翌日、私が再び王立学院の門をくぐった時、降り注ぐ陽光とは裏腹に、肌を刺すような冷たい記憶の残滓が首筋を撫でた。
非の打ち所なく手入れされた芝生。寸分の狂いもなく左右対称に設計された白亜の校舎。窓ガラスの一枚一枚が、まるで監視の目のように、私の姿を冷ややかに映し出している。ここは、美しさと権威で塗り固められた、巨大な鳥籠。そしてかつて、私の翼がへし折られた場所だ。
「――レイナ・フローレンス先生。本日から、生徒たちの作法指導をお願いする」
学院長室の重厚なマホガニーの机の向こうで、人の良さそうな白髪の学院長が、当たり障りのない笑みを浮かべて言った。壁には歴代学院長の肖像画がずらりと並び、その誰もが、私という異分子を値踏みするように、無言の圧力を放っている。
「ええ、光栄ですわ、学院長。未来ある若者たちを、正しい道へと導くお手伝いができるのですもの」
完璧な淑女の笑みを貼り付けながら、私は内心で毒づいた。正しい道、ですって? この学院に渦巻いているのは、選民意識と、腐臭を放つほどの嫉妬と、そして見えざる悪意だというのに。
その時、控えめなノックと共に、二人の男子生徒が学院長室へ入ってきた。
一人は、金刺繍の施された豪奢な制服を着こなした、いかにも高位貴族といった風情の青年。プラチナブロンドの髪を優雅にかき上げ、私を一瞥すると、その唇に侮蔑の色を隠そうともしない。
もう一人は、対照的だった。着古された、しかし清潔な制服をまとった黒髪の青年。貴族ではない、奨学生だろうか。彼は誰にも興味がないといった様子で、窓の外を眺めている。しかし、その瞳の奥には、剃刀のような鋭い知性が宿っていた。
「紹介しよう。生徒会長のオルダス・フォン・シュライアー公爵子息と、特待生のキアン君だ」
「これはこれは、臨時講師殿」オルダスが、芝居がかった仕草で一礼する。「我が学院の伝統ある作法を、いかにご指導いただけるのか、楽しみにしておりますよ」
その言葉には、「我々に教えることなど何もないだろう」という傲慢さが透けて見えた。
「…どうも」黒髪の青年――キアンは、短くそれだけ言うと、再び沈黙した。しかし、彼の視線が一瞬だけ、私の胸元――ドレスの下に隠した護身用の短剣の、僅かな膨らみを捉えたのを、私は見逃さなかった。
面倒なことになりそうだわ。私の探偵としての勘が、けたたましく警鐘を鳴らしていた。
◇◆◇
最初の授業は、大講義室で行われた。
高い天井の窓から差し込む光が、空気中の埃をきらきらと照らし出し、まるで聖堂のような荘厳さを醸し出している。しかし、そこに座る生徒たちの視線は、決して敬虔なものではなかった。好奇、侮蔑、そして無関心。様々な感情が渦巻く中、私は静かに教壇に立った。
「皆様、ごきげんよう。本日から皆様の作法を担当する、レイナ・フローレンスです」
私の自己紹介に、教室のあちこちから、ひそひそとした囁きが聞こえてくる。「フローレンス家の…」「あの、追放されたはずの…」。悪意の針が、四方八方から飛んでくるのがわかった。
「さて、皆様。貴族の作法とは、何のためにあるとお考えかしら?」
私は、そんなざわめきを意にも介さず、最初の問いを投げかけた。最前列に座るオルダスが、待ってましたとばかりに手を挙げる。
「決まっている。血筋と教養に裏打ちされた、我々選ばれし者の気品と権威を、愚かな民に示すためだ」
「結構ですわ。では、そちらのキアン君は?」
私が指名すると、彼は億劫そうに顔を上げた。
「…無用な争いを避け、社会秩序を円滑に維持するための、ただの記号でしょう。それ以上でも、それ以下でもない」
教室が、二つの対照的な答えに、再びざわめく。
私は、その喧騒を制するように、パン、と乾いた音で教鞭を机に打ち付けた。
「どちらも、不正解よ」
私のきっぱりとした声に、生徒たちの視線が、驚きと共に私に集中する。
「作法とは――情報を引き出し、相手を支配し、そして自らを守るための、最も高度な戦術ですわ」
私は、ゆっくりと生徒たちを見回し、そして続けた。
「お辞儀の角度一つで、相手への敬意と侮蔑を同時に示すことができる。紅茶を注ぐその手つきから、相手の心の動揺を読み取ることができる。そして、完璧な微笑みの仮面の下で、相手の嘘を暴き、こちらの真意を隠し通すことができる」
「作法とは、沈黙の対話。見えざる刃。あなた方がこれから渡っていく、この腐敗した社会で生き抜くための、最強の武器なのですわ」
私の言葉に、教室は水を打ったように静まり返った。オルダスの顔からは傲慢な笑みが消え、キアンの瞳には、初めて強い興味の色が浮かんでいる。
「これからの授業では、その『戦術』の基礎を、皆様の骨の髄まで叩き込んで差し上げます。覚悟は、よろしくて?」
悪役令嬢の仮面の下で、私は探偵としての獰猛な笑みを浮かべた。
授業の終了を告げる鐘が鳴った後、私は一人、講師室で仲間たちからの報告を確認していた。
セレナより: 『茶会は大成功。オルダス派とキアン派は、水面下で激しく対立中。最近、深夜の図書館で「啜り泣くような声が聞こえる」との噂あり』
アンセルより: 『オルダス様の父親、シュライアー公爵の妨害で、公式記録の閲覧に難航中。「息子の成績は完璧であり、調査は名誉毀損にあたる」の一点張り』
ルークより: 『夜間警備完了。異常なし。ただし、学院の西塔の周辺だけ、微かにオゾンのような…魔力が乱れた痕(あと)の匂いがする』
どれも断片的な情報。しかし、パズルのピースは、少しずつ集まり始めている。
私は、最後に今回の調査対象である、脅迫事件の被害者生徒の供述書に目を通した。そこには、震えるような文字で、こう記されていた。
『誰に脅されたわけでもありません。誰かに唆されたわけでもありません。あの行動は、間違いなく、私自身の意思で決めたことです。…ただ、なぜあんなことをしてしまったのか、今となっては、どうしても思い出せないのです』
――自分の、意思…?
その言葉の裏に潜む、底知れない闇の気配に、私の背筋を冷たいものが走り抜けた。この学院に巣食う悪意は、私が想像していたよりも、遥かに深く、そして巧妙なものなのかもしれない。
非の打ち所なく手入れされた芝生。寸分の狂いもなく左右対称に設計された白亜の校舎。窓ガラスの一枚一枚が、まるで監視の目のように、私の姿を冷ややかに映し出している。ここは、美しさと権威で塗り固められた、巨大な鳥籠。そしてかつて、私の翼がへし折られた場所だ。
「――レイナ・フローレンス先生。本日から、生徒たちの作法指導をお願いする」
学院長室の重厚なマホガニーの机の向こうで、人の良さそうな白髪の学院長が、当たり障りのない笑みを浮かべて言った。壁には歴代学院長の肖像画がずらりと並び、その誰もが、私という異分子を値踏みするように、無言の圧力を放っている。
「ええ、光栄ですわ、学院長。未来ある若者たちを、正しい道へと導くお手伝いができるのですもの」
完璧な淑女の笑みを貼り付けながら、私は内心で毒づいた。正しい道、ですって? この学院に渦巻いているのは、選民意識と、腐臭を放つほどの嫉妬と、そして見えざる悪意だというのに。
その時、控えめなノックと共に、二人の男子生徒が学院長室へ入ってきた。
一人は、金刺繍の施された豪奢な制服を着こなした、いかにも高位貴族といった風情の青年。プラチナブロンドの髪を優雅にかき上げ、私を一瞥すると、その唇に侮蔑の色を隠そうともしない。
もう一人は、対照的だった。着古された、しかし清潔な制服をまとった黒髪の青年。貴族ではない、奨学生だろうか。彼は誰にも興味がないといった様子で、窓の外を眺めている。しかし、その瞳の奥には、剃刀のような鋭い知性が宿っていた。
「紹介しよう。生徒会長のオルダス・フォン・シュライアー公爵子息と、特待生のキアン君だ」
「これはこれは、臨時講師殿」オルダスが、芝居がかった仕草で一礼する。「我が学院の伝統ある作法を、いかにご指導いただけるのか、楽しみにしておりますよ」
その言葉には、「我々に教えることなど何もないだろう」という傲慢さが透けて見えた。
「…どうも」黒髪の青年――キアンは、短くそれだけ言うと、再び沈黙した。しかし、彼の視線が一瞬だけ、私の胸元――ドレスの下に隠した護身用の短剣の、僅かな膨らみを捉えたのを、私は見逃さなかった。
面倒なことになりそうだわ。私の探偵としての勘が、けたたましく警鐘を鳴らしていた。
◇◆◇
最初の授業は、大講義室で行われた。
高い天井の窓から差し込む光が、空気中の埃をきらきらと照らし出し、まるで聖堂のような荘厳さを醸し出している。しかし、そこに座る生徒たちの視線は、決して敬虔なものではなかった。好奇、侮蔑、そして無関心。様々な感情が渦巻く中、私は静かに教壇に立った。
「皆様、ごきげんよう。本日から皆様の作法を担当する、レイナ・フローレンスです」
私の自己紹介に、教室のあちこちから、ひそひそとした囁きが聞こえてくる。「フローレンス家の…」「あの、追放されたはずの…」。悪意の針が、四方八方から飛んでくるのがわかった。
「さて、皆様。貴族の作法とは、何のためにあるとお考えかしら?」
私は、そんなざわめきを意にも介さず、最初の問いを投げかけた。最前列に座るオルダスが、待ってましたとばかりに手を挙げる。
「決まっている。血筋と教養に裏打ちされた、我々選ばれし者の気品と権威を、愚かな民に示すためだ」
「結構ですわ。では、そちらのキアン君は?」
私が指名すると、彼は億劫そうに顔を上げた。
「…無用な争いを避け、社会秩序を円滑に維持するための、ただの記号でしょう。それ以上でも、それ以下でもない」
教室が、二つの対照的な答えに、再びざわめく。
私は、その喧騒を制するように、パン、と乾いた音で教鞭を机に打ち付けた。
「どちらも、不正解よ」
私のきっぱりとした声に、生徒たちの視線が、驚きと共に私に集中する。
「作法とは――情報を引き出し、相手を支配し、そして自らを守るための、最も高度な戦術ですわ」
私は、ゆっくりと生徒たちを見回し、そして続けた。
「お辞儀の角度一つで、相手への敬意と侮蔑を同時に示すことができる。紅茶を注ぐその手つきから、相手の心の動揺を読み取ることができる。そして、完璧な微笑みの仮面の下で、相手の嘘を暴き、こちらの真意を隠し通すことができる」
「作法とは、沈黙の対話。見えざる刃。あなた方がこれから渡っていく、この腐敗した社会で生き抜くための、最強の武器なのですわ」
私の言葉に、教室は水を打ったように静まり返った。オルダスの顔からは傲慢な笑みが消え、キアンの瞳には、初めて強い興味の色が浮かんでいる。
「これからの授業では、その『戦術』の基礎を、皆様の骨の髄まで叩き込んで差し上げます。覚悟は、よろしくて?」
悪役令嬢の仮面の下で、私は探偵としての獰猛な笑みを浮かべた。
授業の終了を告げる鐘が鳴った後、私は一人、講師室で仲間たちからの報告を確認していた。
セレナより: 『茶会は大成功。オルダス派とキアン派は、水面下で激しく対立中。最近、深夜の図書館で「啜り泣くような声が聞こえる」との噂あり』
アンセルより: 『オルダス様の父親、シュライアー公爵の妨害で、公式記録の閲覧に難航中。「息子の成績は完璧であり、調査は名誉毀損にあたる」の一点張り』
ルークより: 『夜間警備完了。異常なし。ただし、学院の西塔の周辺だけ、微かにオゾンのような…魔力が乱れた痕(あと)の匂いがする』
どれも断片的な情報。しかし、パズルのピースは、少しずつ集まり始めている。
私は、最後に今回の調査対象である、脅迫事件の被害者生徒の供述書に目を通した。そこには、震えるような文字で、こう記されていた。
『誰に脅されたわけでもありません。誰かに唆されたわけでもありません。あの行動は、間違いなく、私自身の意思で決めたことです。…ただ、なぜあんなことをしてしまったのか、今となっては、どうしても思い出せないのです』
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