汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!

虹湖🌈

文字の大きさ
48 / 54

第48話 仲間(パートナー)のための設計図と、深き道への旅立ち

 私の聖域(ライブラリー)は、一夜にして、前代未聞の大プロジェクトのための、騒がしい作戦司令室へと姿を変えた。
 とは言っても、騒がしいのは、私の頭の中と、通信の向こう側にいる、私の秘書だけだ。

『師匠! 神界のデータベースを、過去一万年分、遡って調査しました! ですが、『石化の呪い』に、完全に一致する記録は、一件も…! ただ、古代のドワーフ族が、「不滅」を求めて、大地そのものに手を加える、禁断の儀式を行った、という、おとぎ話のような記述が一つだけ…!』

 画面の向こうで、アストライアが、山のような資料に埋もれながら、報告してくる。彼女は、今や、ただの秘書ではない。このプロジェクトにおける、情報分析を担う、重要な一員だ。

「結構です。どんな情報も、ないよりはまし。引き続き、調査を。特に、その儀式とやらで使われた、『素材』について、重点的に」

 私は、彼女に指示を出しながら、自らは、目の前のホログラムに、新たな「神具」の設計図を描き出すことに、全神経を集中させていた。
 今回の現場は、光の届かない、未知の地下空間。そして、敵は、これまでのどんな汚れとも違う、絶対的な「停滞」の呪い。
 既存の装備では、話にならない。

「アシスタント。この設計図の、耐圧性能をシミュレート。同時に、地脈ソナーのデータを元に、最適な掘削ルートを、三通り、提示してください」
『御意ニ、マスター。シミュレーションヲ、開始シマス』

 私の傍らでは、アーカイビスト・ゴーレムが、私とジルドンの技術を結集させた、新たな探査車――【プロジェクト・モール】の、最終設計を行っている。

 そして、部屋の隅では。
 リオが、石化した歯車のかけらを前に、腕を組み、唸っていた。

「…くそっ。やっぱ、ダメだ。俺の力は、『在る』ものを『無い』ものにするだけだ。…『在る』けど、『動かない』、この、停滞した状態そのものを、どうこうすることは…」

 彼の顔には、初めて見る、プロとしての「壁」にぶつかった、苦悩の色が浮かんでいた。
 私は、そんな彼に、一枚の設計図を転送した。

「研修生。いつまで、自分の力だけで、何とかしようとしているのですか」
「あ?」
「プロの仕事は、チームで行うもの。あなたのその大雑把な力を、精密な『針』の先端に集め、撃ち出すための、増幅器(アンプリファイア)です。…あなたの新しい『仕事道具』ですよ」

 画面に表示された、音叉のような形をした、複雑な魔導具の設計図。
 リオは、それを見て、一瞬、呆然とし、やがて、その口元に、不敵な笑みを浮かべた。

「…へぇ。なるほどな。…俺の、この、クソ面倒な力を、使いこなすための道具、か。…いいじゃねえか」

 こうして、私たちのチームは、それぞれの持ち場で、一つの目的のために、動き出した。
 アストライアは、情報で。
 ゴーレムたちは、分析と、後方支援で。
 リオは、自らの力の、新たな可能性で。
 そして、私は、その全てを束ね、最適化する、設計と、指揮で。

 全ての準備が整った日。
 私は、ジルドンへと、【プロジェクト・モール】の完成版の設計図と、チーム全員の、新たな専用装備のデータを、転送した。
 報酬の魔晶石は、添えない。
 ただ、一言、メッセージを、付け加えた。

 ――『あなたの家に、行きます。最高の道具と、最高の仲間と、共に』

 その夜。
 遠く、ジルドンの工房があるであろう山脈の方角が、オーロラのように、七色に、輝いた。
 それは、ドワーフ族の伝説の鍛冶師が、自らの魂の、その全てを、炉にくべる時にだけ、見られるという、奇跡の光だった。
 言葉はいらない。それが、彼の、最高の「返事」だった。

 数日後。
 ジルドンが、地図で示してきた、古代の地下道『深き道(ディープ・ロード)』の入り口。
 そこに、私たちは、立っていた。
 私の前には、ジルドンの魂が宿った、最新鋭の地底探査車【モール】と、私たちの、新たな専用装備一式が、完璧な状態で、届けられていた。

 私は、新たな作業着――深部の高圧環境にも耐える、特殊な地底活動用スーツを身にまとう。
 リオもまた、背中に、音叉のような増幅器を背負い、その顔つきは、もはや、ただの研修生ではない。一人の、専門家の顔つきだ。

「アストライア。地上との通信は、あなたに、全て任せます。内部の状況は、リアルタイムで、あなたに送る」
『はい、師匠! ご武運を…! いえ、最高の『お仕事』を!』

 彼女らしい、激励の言葉に、私は、小さく頷く。

 私は、モールの操縦席に乗り込むと、固く閉ざされた、古代の巨大な扉を、見据えた。
 この先に、私の、大切なパートナーが、待っている。
 そして、彼を苦しめる、史上最も硬質で、最も厄介な「汚れ」が、待ち構えている。

「これより、わたくしたちの、初めての、チームによる『お仕事』を開始します」

 私は、静かに、しかし、力強く、宣言した。

「――行きましょう。相棒の、故郷へ」

 私の言葉を合図に、モールの、巨大なドリルが、回転を始める。
 数千年の沈黙を破り、重々しい音を立てて、古代の扉が、ゆっくりと、開いていった。
 その向こうに広がるのは、光の届かない、未知の、暗闇だけだった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。