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第9話-ミニダンジョンの異変-
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白石雪乃との予期せぬ接触以来、私は常に彼女の影を意識するようになっていた。大学の講義中、ふと窓の外を見ると、遠くに彼女らしき人影が見える気がしたし、図書館で本を探していると、背後に彼女の気配を感じるような気がした。もちろん、それは私が神経質になったせいかもしれない。けれど、あの冷たい眼差しが、どうしても頭から離れなかった。
そんな私の様子を、美咲と健太は敏感に察知していた。
「花梨、なんか元気なくない?どうかした?」
いつものように三人で学食でランチを食べている時、美咲が心配そうな顔で尋ねてきた。健太も、眼鏡の奥からじっと私を見つめている。
「うーん……実はね」
私は、数日前に白石雪乃と会ったこと、彼女が私の周りの「特殊な物品」について探っていたことを、二人に打ち明けた。
「ええ!?その人、一体何者なの?」
美咲は驚いた声を上げた。健太は腕を組み、難しい表情で考え込んでいる。
「国立ダンジョン科学研究所の研究員、だって言ってた。私の持ってるダンジョン素材が、普通のものとは違うって、気づいているみたい」
私の言葉に、二人は顔を見合わせた。
「ヤバいんじゃないか?それ、私たちのミニダンジョンのことだよね?」
美咲の声には、 明確な 不安の色が滲んでいた。
「おそらく……。だから、これからどうすればいいか、二人にも相談したくて」
健太は少し考えた後、言った。「まずは、その人に不用意な情報を与えないことだな。向こうが何を知っているのか、まだ分からない。下手に刺激しない方がいい」
美咲も頷いた。「うん、そうだね。花梨は、しばらくその人に会わないようにした方がいいよ」
二人の言葉に、少しだけ心が落ち着いた。一人で悩んでいたことが、少し楽になった気がした。
その夜、私はいつものようにミニダンジョンに足を踏み入れた。最近、ダンジョン内部の様子が、以前と少し異なっているように感じていた。以前は、薄暗く静かな空間だったのに、最近は、奥の方から微かに何かの気配が感じられるようになっていたのだ。
今日、奥へと進んでみると、これまで見たことのない、小さな影が蠢いているのが見えた。それは、犬くらいの大きさで、全身が黒い毛で覆われた、狼のような姿をしていた。目は赤く光っている。
「な、なにこれ……?」
私は思わず後ずさりした。これが、健太が言っていた「スライムみたいなもの」とは明らかに違う。もっと、こう……生き物としての威圧感がある。
その狼のような影は、ゆっくりとこちらを向いた。低い唸り声が、静かなダンジョン内に響く。
「まずい!」
直感的に危険を感じた私は、咄嗟に持っていた「麻痺の粉」を投げつけた。以前、ミニダンジョン内で偶然手に入れた、微量の麻痺効果のある粉末だ。
粉末が狼のような影にかかると、その動きが一瞬鈍った。その隙に、私は急いでダンジョンの入り口へと駆け戻った。
なんとか部屋に戻り、深く息を吐き出す。
「あれは……一体何だったんだろう?」
これまで、ミニダンジョンには、本当に害のない、小さなスライムのようなものしか現れなかった。それが、今日は明らかに敵意を持った生き物が現れた。
この変化は、一体何を意味するのだろうか。
翌日、私は昨夜ミニダンジョンで遭遇した出来事を、美咲と健太に話した。二人は、私の話に いぶかしげな表情で耳を傾けていた。
「狼みたいなモンスター……?そんなの、今までいなかったじゃないか」
美咲は不安そうに言った。健太は顎に手を当てて考え込んでいる。
「ミニダンジョンの環境が変化しているのかもしれないな。花梨がダンジョンに『世話』をするようになってから、内部のエネルギーの流れが変わった、という可能性も考えられる」
「じゃあ、これからもっと強いモンスターが出てくるかもしれないってこと?」
私の問いかけに、健太は 神妙に頷いた。
「その可能性は否定できない。花梨、これからは一人でダンジョンに入るのは控えた方がいい」
その時、美咲が何かを思い出したように言った。
「そうだ!この前、おじいちゃんの家の倉庫で見つけたんだけど、こんなものがあったんだ!」
そう言って、彼女は古びた革製のグローブを取り出した。所々擦り切れているが、頑丈そうな作りをしている。
「これ、昔、おじいちゃんが趣味で狩りをしていた時に使っていたらしいんだ。ちょっと古いけど、素手よりはマシでしょ?」
そして、健太は自分のリュックから、登山用のロープを取り出した。「もしもの時のために、これも持っておくといい。それに、何かあったら、二人で協力して戦えばいい」
その言葉に、私の胸が熱くなった。危険な目に遭ったのに、二人は私を責めることなく、一緒に立ち向かおうとしてくれている。
「ありがとう」
私は心から感謝の気持ちを伝えた。
その日の午後、私たちは初めて三人で、ミニダンジョンに足を踏み入れた。少し怖いけれど、二人と一緒なら、きっと大丈夫。
ミニダンジョンは、私たちにとって、ただの不思議な空間ではなくなりつつあった。それは、私たちの友情を試す、新たな「舞台」なのかもしれない。そして、その変化の裏には、白石雪乃の存在が、影のように付きまとっているのを感じていた。
そんな私の様子を、美咲と健太は敏感に察知していた。
「花梨、なんか元気なくない?どうかした?」
いつものように三人で学食でランチを食べている時、美咲が心配そうな顔で尋ねてきた。健太も、眼鏡の奥からじっと私を見つめている。
「うーん……実はね」
私は、数日前に白石雪乃と会ったこと、彼女が私の周りの「特殊な物品」について探っていたことを、二人に打ち明けた。
「ええ!?その人、一体何者なの?」
美咲は驚いた声を上げた。健太は腕を組み、難しい表情で考え込んでいる。
「国立ダンジョン科学研究所の研究員、だって言ってた。私の持ってるダンジョン素材が、普通のものとは違うって、気づいているみたい」
私の言葉に、二人は顔を見合わせた。
「ヤバいんじゃないか?それ、私たちのミニダンジョンのことだよね?」
美咲の声には、 明確な 不安の色が滲んでいた。
「おそらく……。だから、これからどうすればいいか、二人にも相談したくて」
健太は少し考えた後、言った。「まずは、その人に不用意な情報を与えないことだな。向こうが何を知っているのか、まだ分からない。下手に刺激しない方がいい」
美咲も頷いた。「うん、そうだね。花梨は、しばらくその人に会わないようにした方がいいよ」
二人の言葉に、少しだけ心が落ち着いた。一人で悩んでいたことが、少し楽になった気がした。
その夜、私はいつものようにミニダンジョンに足を踏み入れた。最近、ダンジョン内部の様子が、以前と少し異なっているように感じていた。以前は、薄暗く静かな空間だったのに、最近は、奥の方から微かに何かの気配が感じられるようになっていたのだ。
今日、奥へと進んでみると、これまで見たことのない、小さな影が蠢いているのが見えた。それは、犬くらいの大きさで、全身が黒い毛で覆われた、狼のような姿をしていた。目は赤く光っている。
「な、なにこれ……?」
私は思わず後ずさりした。これが、健太が言っていた「スライムみたいなもの」とは明らかに違う。もっと、こう……生き物としての威圧感がある。
その狼のような影は、ゆっくりとこちらを向いた。低い唸り声が、静かなダンジョン内に響く。
「まずい!」
直感的に危険を感じた私は、咄嗟に持っていた「麻痺の粉」を投げつけた。以前、ミニダンジョン内で偶然手に入れた、微量の麻痺効果のある粉末だ。
粉末が狼のような影にかかると、その動きが一瞬鈍った。その隙に、私は急いでダンジョンの入り口へと駆け戻った。
なんとか部屋に戻り、深く息を吐き出す。
「あれは……一体何だったんだろう?」
これまで、ミニダンジョンには、本当に害のない、小さなスライムのようなものしか現れなかった。それが、今日は明らかに敵意を持った生き物が現れた。
この変化は、一体何を意味するのだろうか。
翌日、私は昨夜ミニダンジョンで遭遇した出来事を、美咲と健太に話した。二人は、私の話に いぶかしげな表情で耳を傾けていた。
「狼みたいなモンスター……?そんなの、今までいなかったじゃないか」
美咲は不安そうに言った。健太は顎に手を当てて考え込んでいる。
「ミニダンジョンの環境が変化しているのかもしれないな。花梨がダンジョンに『世話』をするようになってから、内部のエネルギーの流れが変わった、という可能性も考えられる」
「じゃあ、これからもっと強いモンスターが出てくるかもしれないってこと?」
私の問いかけに、健太は 神妙に頷いた。
「その可能性は否定できない。花梨、これからは一人でダンジョンに入るのは控えた方がいい」
その時、美咲が何かを思い出したように言った。
「そうだ!この前、おじいちゃんの家の倉庫で見つけたんだけど、こんなものがあったんだ!」
そう言って、彼女は古びた革製のグローブを取り出した。所々擦り切れているが、頑丈そうな作りをしている。
「これ、昔、おじいちゃんが趣味で狩りをしていた時に使っていたらしいんだ。ちょっと古いけど、素手よりはマシでしょ?」
そして、健太は自分のリュックから、登山用のロープを取り出した。「もしもの時のために、これも持っておくといい。それに、何かあったら、二人で協力して戦えばいい」
その言葉に、私の胸が熱くなった。危険な目に遭ったのに、二人は私を責めることなく、一緒に立ち向かおうとしてくれている。
「ありがとう」
私は心から感謝の気持ちを伝えた。
その日の午後、私たちは初めて三人で、ミニダンジョンに足を踏み入れた。少し怖いけれど、二人と一緒なら、きっと大丈夫。
ミニダンジョンは、私たちにとって、ただの不思議な空間ではなくなりつつあった。それは、私たちの友情を試す、新たな「舞台」なのかもしれない。そして、その変化の裏には、白石雪乃の存在が、影のように付きまとっているのを感じていた。
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