『ダンジョンシード』~芽生える異能、彼女の日常~

Nico11

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第12話-対話の始まり-

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白石雪乃からの返信が届いたのは、私がメッセージを送ってからすぐのことだった。

そして私たちは、数日後に会う約束を交わした。

場所は、大学の近くにある落ち着いたカフェ。美咲と健太は「一人で行くのは危ないんじゃない?」と、心配してくれたけれど……私は彼女に会って、直接話をしてみたかったのだ。

彼女が本当に私たちを害するつもりなのか。それとも、別の目的があるのか。その目で確かめたかった。

約束の当日。カフェの奥まった席に、白石雪乃は静かに座っていた。

白いカップを手に、ゆったりとコーヒーを味わうその姿は、まるで絵画のようで――研究者というより、落ち着いた大人の女性という印象を受けた。

「佐藤さん、いらっしゃいませ」

彼女はゆっくりと立ち上がり、穏やかに微笑む。その笑顔に少し緊張しながら、私は彼女の正面の席に座った。

「今日はありがとうございます」

「いえ、こちらこそ。お時間をいただき感謝いたします」

しばらくのあいだ、形式的なやり取りが続いたあと。彼女は、ふと声のトーンを変えてきた。

「佐藤さんの周囲で、既存のダンジョン素材とは異なる性質を持つ物品が確認されています。また、あなたご自身にも、何か特別な力があるのではないかと……そう感じているのです」

……直球だった。でも、不思議と威圧感はなかった。そこには、ただ純粋に「知りたい」という知的な好奇心だけがあった。

私は一瞬、迷った。

だが彼女がすでに“何か”を掴んでいることは明らかだったし、今さら全部を否定しても意味がない。

「……確かに、私は少し、普通の人とは違うところがあるのかもしれません」

その言葉を聞いた白石さんの瞳が、静かに輝いた。

「やはり。もし差し支えなければ、その“力”について、もう少しお聞かせ願えませんか?」

私は、ミニダンジョンのことを――慎重に、言葉を選びながら語った。

その空間で手に入る不思議な素材。触れた瞬間に、その性質や用途が頭に流れ込んでくる自分の能力。そして……それが、どれほど奇妙で説明しがたいものなのか。

もちろん、ダンジョンの“種”そのものの存在については、まだ伏せておいた。

白石さんは、真剣に耳を傾けていた。鋭く、でも冷たくない視線で、時折、的確な質問を投げかけてくる。

「その素材は、どのようなダンジョンで採れるのですか?」

「情報が入ってくる、というのは……感覚としては、どういったものなのですか?」

――彼女の問いは、興味本位ではない。本気で理解しようとしている。それが伝わってくる。

ひと通り話し終えると、白石さんはカップをそっと置き、身を少し乗り出した。

「佐藤さんの話は、これまでのダンジョン研究の常識を覆すものです。もしよろしければ……その“ミニダンジョン”とやらについて、もっと詳しくお聞かせいただくことはできますか?」

私は、彼女のまっすぐな瞳を見つめた。

……本当に、研究の対象としてだけじゃなく、未知の現象そのものに強い興味を抱いているんだ。

「……私の部屋にあります。とても小さくて、不思議な空間です」

その答えに、彼女の目がふっと明るくなった。

「もし可能であれば、いつかその場所を見せていただくことはできますでしょうか?」

一瞬、迷いがよぎる。

だけど……彼女の目は、本気だった。

「……近いうちに、もしよろしければ」

「ありがとうございます。私はただ、この未知の現象を正しく理解したいだけなのです。そして……もしあなたが、その力ゆえに困っているのだとしたら、微力ながらお力になれればと考えています」

彼女のその言葉に、私は肩の力が少し抜けるのを感じた。

――これが、白石雪乃との“出会い”だった。

彼女が信頼できる人かどうか、それはまだ分からない。でも少なくとも、私たちの秘密を頭ごなしに否定したり、恐れたりする人ではない。
それだけでも、十分だった。

不安をひとりで抱え込まなくていい――そんな気がした。

白石雪乃の視点

佐藤花梨との対話は、非常に興味深いものだった。彼女の話す内容は、予感していた以上に異質で、私の研究心を強く刺激した。特に、素材に触れた瞬間にその情報が流れ込んでくるという彼女の能力は、前例のないものだ。

彼女は、自分の持つミニダンジョンの存在を慎重に語った。その慎重さの裏には、当然ながら警戒心があるのだろう。それでも、彼女が本当のことを語っていることは、その真剣な目から伝わってきた。

私がミニダンジョンを見せてほしいと頼んだ時、彼女は少しためらったが、最終的には承諾してくれた。これは大きな進展だ。実際にその空間を観察することで、多くの謎が解明される可能性がある。

私の目的は、彼女の力を研究することだけではない。もし彼女が異質な力ゆえに困難に直面しているのであれば、研究者として、そして同じように未知を追う者として、彼女を助けたいという気持ちもある。

佐藤花梨との今後の対話と、ミニダンジョンの観察。それらを通して、私は世界のダンジョンの深淵に、より深く迫ることができるかもしれない。

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