『ダンジョンシード』~芽生える異能、彼女の日常~

Nico11

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第39話-アマゾンの深淵、古の守護者-

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西安での激戦を終え、私たちはついに南米、アマゾンの奥地へと足を踏み入れた。熱帯雨林特有の湿った空気が肌を包み込み、耳を澄ませば、未知の生物たちの鳴き声がこだまする。これまで訪れたどの場所とも違う、圧倒的な生命の息吹に満ちた土地だった。

「ここが、例のポータルがある場所ですか……」

美咲が周囲を見回しながら、少し緊張した面持ちで呟いた。鬱蒼と茂る木々の間から、時折、動物たちの気配がする。

「ええ。このジャングルのさらに奥地です。今回のポータルは、その規模も、放出される負のエネルギーも、これまでで最も大きいと報告されています」

白石先生が、タブレット端末に表示された地図を示しながら説明してくれた。地図のポータルを示す赤い点は、これまで見てきた点よりもはるかに大きく、まるで心臓のように脈打っているかのようだった。

研究所の現地チーム、そして護衛として同行する専門部隊と共に、私たちはジャングルの奥深くへと進んでいった。道なき道を切り開き、巨大な植物の根を乗り越えていく。アマゾンの自然は、その美しさの中に、抗いがたいほどの原始的な力を秘めているように感じられた。

数日間の行軍の末、ついに私たちは目的地にたどり着いた。しかし、そこに広がっていた光景は、私たちの想像をはるかに超えるものだった。

巨大な空間の歪みが、まるで空にぽっかりと穴が開いたかのように、私たちの目の前に広がっていたのだ。そのポータルは、これまでのものとは一線を画し、まるで広大な宇宙の星雲のように、黒と赤、そして不気味な紫の光が渦巻いていた。そこからは、大地を揺るがすほどの低いうなり声が響き渡り、周囲のジャングルは、その影響で黒く変色し、植物は異形に歪んでいた。

「まさか、これほど大規模なポータルとは……」

健太が、計測器の数値を見つめながら、息を呑んだ。計測器は、これまでにない異常な数値を叩き出している。

「このポータルは、直接、偉大なる者バリキーの深い層と繋がっている可能性が高いです。注意を最大限に高めてください!」

白石先生の声は、これまでになく緊迫していた。私も、新しいグローブを強く握りしめ、内なる光を研ぎ澄ませた。この場所の負のエネルギーは、これまでのポータルをはるかに凌駕する。

ポータルの中へと足を踏み入れると、そこは、闇と混沌に満ちた異空間だった。地面は黒い泥に覆われ、不気味な黒い植物が奇妙な形状で生え放題だ。空には、常に黒と紫の靄が立ち込め、視界は極めて悪い。

『……光の導き手……愚かなる抵抗……』

偉大なる者バリキーの意志が、直接私の脳に響き渡る。その圧力は、これまでの何よりも強く、まるで物理的な重圧のように私の全身を押し潰そうとする。光の力が、わずかに揺らぐのを感じた。

「花梨さん!精神攻撃です!耐えてください!」

白石先生が叫ぶ。私は、白いクリスタルを装着したグローブに意識を集中させ、内なる光を最大限に引き出した。光は、私の精神を蝕む偉大なる者バリキーの意志を押し返し、周囲の黒い靄をわずかに払拭した。

その時、ポータルの深部から、巨大な影がゆっくりと姿を現した。それは、これまでの連結者とは全く異なる存在だった。岩のような皮膚を持ち、太く隆々とした手足、そして複数の目が不気味に光っている。まるで、このジャングルの古き守護者が、闇に堕ちた姿のようだった。

「あれは……!伝説の守護者、『ジャングル・タイタン』に似ています!」

現地チームの隊員の一人が、驚愕の声を上げた。ジャングル・タイタンとは、このアマゾンに古くから伝わる、森の創造と破壊を司る巨大な守護者の伝説だという。

偉大なる者バリキーに侵蝕されたジャングル・タイタンは、低く、しかし空間全体を震わせる咆哮を上げた。その咆哮と共に、周囲の黒い泥が盛り上がり、巨大な黒い蔓となって私たちに襲いかかってきた。

「散開!そして、蔓を焼き払う!」

白石先生の指示が飛ぶ。私たちはそれぞれに身をかわし、光の奔流やエネルギー弾で黒い蔓を焼き払った。しかし、蔓は次々と再生し、私たちの動きを制限しようとする。

『……侵蝕の時……光は消え去る……』

ジャングル・タイタンを通して響く偉大なる者バリキーの意志は、以前よりも強く、そして確信に満ちていた。

「このままでは埒が明きません!タイタンを止めるには、核を浄化するしかない!」

健太が叫んだ。しかし、ジャングル・タイタンはあまりにも巨大で、その動きは素早く、簡単には近づけない。

私は、光の奔流でジャングル・タイタンの注意を引きつけた。しかし、タイタンはビクともせず、その複数の目で私を捉え、巨大な拳を振り上げてきた。

「花梨さん、危険です!」

白石先生の声が響く。私は、とっさにグローブで拳を受け止めたが、その衝撃で体が大きく吹き飛ばされ、近くの黒い岩に叩きつけられた。

「くっ……!」

全身を激痛が走る。視界がかすみ、光の力が弱まっていくのを感じた。

『……終わりだ……光の導き手……』

偉大なる者バリキーの意志が、耳元で囁く。絶望が、再び私の精神を蝕もうとする。

その時、デーモンの声が、私の意識の深淵から響いた。『……恐れるな……お前の光は……この世界の真の希望……決して屈するな……』

デーモンの声は、以前よりもクリアで、私の内なる光を奮い立たせた。私は、再び立ち上がり、全身に満ちる光を強く意識した。この光は、私一人のものではない。仲間たちの、そして世界の希望だ。

私は、新しいグローブを強く握りしめ、ジャングル・タイタンに向かって再び光の奔流を放った。光は、タイタンの巨大な体を貫き、その動きを一時的に停止させた。

「今です!核を見つけて浄化する!」

私は、白石先生に指示を出し、健太と美咲を促した。私と白石先生がタイタンの注意を引きつけ、健太と美咲がその隙に核を探す作戦だ。

ジャングル・タイタンは、すぐに動きを取り戻し、私たちに再び襲いかかってきた。その猛攻をかわしながら、私は光の奔流でタイタンの動きを封じようとする。

美咲は、加速の草の効果で素早く動き回り、タイタンの体に麻痺胞子を散布した。健太は、解析デバイスを最大出力にし、タイタンの体組織をスキャンしながら、核の位置を特定しようとする。

「タイタンの核は、その胸部にあります!心臓のように脈打っている!」

健太の叫びが響いた。

私は、光の力を最大限に高め、タイタンの胸部に向かって渾身の光の槍を放った。光の槍は、タイタンの岩のような皮膚を貫き、その胸部に深々と突き刺さった。

ジャングル・タイタンは、苦悶の咆哮を上げ、その巨大な体がゆっくりと傾いていく。その胸部に突き刺さった光の槍からは、純粋な光が脈打つように放出され、タイタンの体を侵蝕していたバリキーの負のエネルギーを浄化していく。

タイタンの目が、これまでの憎悪に満ちた赤色から、ゆっくりと穏やかな緑色へと変わっていく。そして、その体は、黒い岩と泥の塊ではなく、再び古の樹木と生命の光を放つ存在へと変化していくのだった。

タイタンの体が完全に浄化されると、その場に鎮座していたのは、巨大な樹木そのものだった。そして、その根元には、このポータルの核である、巨大な赤いクリスタルが、純粋な光を放ちながら輝いている。

「やった……!浄化できた!」

美咲が、喜びの声を上げた。

私は、巨大な樹木の根元にある赤いクリスタルに手を触れた。内なる光が、クリスタルと共鳴し、ポータル全体に純粋な光が満ち渡っていく。ポータルを覆っていた黒と紫の靄は消え去り、そこには、清らかな空気と、穏やかな光が満ちていた。

周囲のジャングルも、ポータルからの負のエネルギーが消え去ったことで、徐々にその生命の輝きを取り戻し始めるだろう。

しかし、私の心には、デーモンのもう一つの言葉が響いていた。『……真なる敵は……深淵に潜む……』

偉大なる者バリキーの本体との戦いは、まだ遠い。だが、私たちは、その絶対的な闇に対抗する力を、確実に手にしつつある。光の導き手として、この世界の希望を守るために、私は歩み続ける。
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