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「リリアーナ嬢、まずは私の部屋へ――」
「いや、俺だ。彼女は俺が案内する」
「待て。そんなに強く腕を掴むな、ライナルト」
「喧しい。お前こそ離せ、ルシアン」
「……ふむ、若造の喧嘩はいつ見ても微笑ましいな」
国王陛下と第二王子、第三王子、そして王弟殿下が、まるで幼子のおもちゃを奪い合うように、同時に私の腕や肩に手を伸ばしてくる。
やめて、本当に腕がもげる……!
「ちょ、ちょっと皆さま! 落ち着いてください!」
私が半ば悲鳴のように声を上げると、四人は同時に動きを止めた。
――その一瞬だけは静寂が訪れた。
しかし次の瞬間。
「リリアーナ嬢、まずはどこへ行きたい?」
「行きたい、ではない。行くべき場所は私の書斎だ」
「黙れ、王弟。彼女に負担をかける気か?」
「俺の訓練所の方が安全だ」
「いや、そもそも私の私室が一番――」
……静寂は三秒で終わった。
四方向から同時に引っ張られ、私は本当に泣きそうだった。
(これは、絶対に間違っている……!)
そのとき。
「――リリアーナ嬢!」
甲高い声が大広間に響いた。
振り返ると、聖女フローラが涙目でこちらに駆け寄ってくる。
後ろには、まだ状況を理解しきれていない王太子アレクシス。
フローラはアレクシスの腕にしがみつき、叫んだ。
「アレク様! どうして皆さん、リリアーナ様に……!?
わ、わたしこそが聖女で、王太子妃になるのに!」
ただの聖女気取りの少女が、王族たちに向かって喚き散らす。
自然と謁見の間はざわめきに包まれる。
王弟殿下はため息をついた。
「……あの娘、まだ状況が分かっていないようだな」
ルシアン殿下は私に寄り添うように一歩前へ出た。
「リリアーナ嬢は、この国の結界を維持する唯一の結界師だ。
聖女などとは比べものにならない重要な存在だと、なぜ気づかない?」
その声は静かだったが、はっきりした怒気が混じっていた。
会場全体が息を呑む。
アレクシスが青ざめた顔で、呻くように声を出した。
「け、結界師……? リリアーナが……?」
「知らなかったのか。嘆かわしい」
ライナルト殿下が冷たく告げる。
「婚約者でありながら、彼女の本質を見抜けない者が何を語る」
「……!」
アレクシスは悔しそうに口を動かす。
しかし、言い返せる言葉はひとつもなかった。
私は視線をそらし、小さく息を吐いた。
――これが、ざまぁというものかもしれない。
胸の奥で、静かな痛快さが広がる。
そのときだった。
「――リリアーナ様!」
重厚な扉が勢いよく開き、ひとりの青年が駆け込んできた。
銀の髪、黒いマント。見覚えのある姿に私は思わず目を見開く。
「クレイグ……!」
彼は私の従者であり、唯一の護衛。
幼い頃に拾った孤児で、今では立派な魔導騎士だ。
クレイグは王族たちの前に立ちはだかり、鋭い眼差しで言い放った。
「リリアーナ様を力ずくで奪い合うなど、正気ですか!?
彼女はおもちゃではない!」
その言い方に、王族たちが一気に表情を変える。
ルシアン殿下は微笑を消し、凛とした瞳を向けた。
「……君は立場を理解しているのか?」
「もちろんです。
ですが、たとえ相手が誰であっても――
リリアーナ様に無礼を働く者は、俺が斬り捨てます。」
会場が凍りついた。
クレイグがこんな強気な台詞を口にするのは初めてだ。
(こ、怖い……!)
私が慌てて彼の袖を引くと、彼はすぐに柔らかい顔に戻った。
「申し訳ありません、リリアーナ様。ですが……どうしても許せません」
……そんな真剣に?
と胸が熱くなる。
王族たちの視線が、クレイグに向けて鋭く研ぎ澄まされる。
今度は従者と王族の奪い合いが始まる予感しかしない。
「リリアーナ嬢、どうかこちらへ」
ルシアン殿下が再び私の手を取る。
だが、クレイグが遮った。
「おやめください。リリアーナ様はお疲れなのです」
「お疲れ……? この程度で?」
「この“程度”のせいで混乱しているんですよ。あなた方のせいで」
「なんだと?」
王族の眉間に深い溝が刻まれた。
そうしている間にも、迫り来る気配がある。
(……また誰か来た?)
大広間の奥から、重い足音が響いた。
鎧をつけた騎士団長リアムが現れ、その後ろにずらりと並ぶ精鋭騎士たち。
その中心に、ひときわ大柄な男性が立っていた。
「リリアーナ嬢。お怪我はないか?」
その声は、侯爵家の当主――オルフェン侯爵。
私の母方の親戚にあたる人物であり、騎士団を統括する重鎮だ。
侯爵は私を見るなり、険しい顔をした。
「王族が……君を奪い合っていると聞いたが、本当か?」
「え、ええと……」
返事に困る私の代わりに、ルシアン殿下が答えた。
「彼女を引き取るのは当然だ。家柄も地位も申し分ない。何より――」
「何より?」
侯爵が険しい目を向ける。
ルシアン殿下はためらわず言った。
「彼女は私が愛している。
だから、絶対に渡さない」
大広間が爆発したようにざわついた。
「ル、ルシアン殿下!?」
「お、おおおお落ち着いてください!?」
私は真っ赤になって彼の腕を振りほどこうとする。
しかし、ルシアン殿下は逃がす気ゼロだった。
「リリアーナ嬢。君が誰を選ぶかは自由だ。
だが、それでも私は君を諦めない」
その目は本気だった。
クレイグが一歩前へ出る。
「殿下。俺も……リリアーナ様をお守りしたい。
俺の気持ちは――ずっと前から変わりません」
「お前まで……」
ライナルト殿下がため息をつきながらも、静かに言う。
「俺も、譲る気はない」
国王陛下は頭を抱え、王弟殿下は「面白くなってきたな」と笑い、
騎士団長は呆れ、侯爵は拳を震わせている。
――混沌の極み。
「……あの、皆さま。そろそろよろしいでしょうか?」
精一杯の声で呼びかけると、全員がぴたりと動きを止めた。
王族も騎士団も従者も、皆が私を見つめる。
(どうしよう……とても言いにくいけど……)
覚悟を決め、私ははっきりと言った。
「私は、まだ誰のものにもなりません。
自由が欲しくて、婚約破棄を受け入れたのです。
今すぐ“誰か”を選ぶつもりはありません」
あまりに静まり返った大広間。
しかし――四人の王族は同時に微笑んだ。
「……だからこそ、選ばれたい」
ルシアン殿下。
「焦らなくていい。最後に俺が選ばれれば」
ライナルト殿下。
王弟殿下。
「リリアーナ嬢を守れるのは私だ」
国王陛下。
更にクレイグが真っ直ぐな瞳で言う。
「リリアーナ様。誰を選ぶかは、あなたが決めてください。
ですが……どうか俺も、その候補に入れてください」
騎士たちがざわめく。
侯爵は頭を抱えながら呟く。
「……なんだこの国は。リリアーナ一人で王族と騎士団と従者が争うなど聞いたことがない……!」
――本当に私もそう思う。
私はただ静かに、自由に生きていきたかっただけだ。
それなのに。
気づけば――
一国の王族総出での奪い合いに、従者と騎士団長まで参戦している。
そして、遠くでは王太子アレクシスが打ちひしがれた様子で立ち尽くしていた。
「なんでだ……なんで皆リリアーナなんだ……
聖女のフローラじゃなくて……!」
その情けない声が私の耳に届く。
私は静かに彼を見つめ、微笑んだ。
「――それが、あなたの“見る目”の差ですよ、アレクシス殿下」
アレクシスの顔が真っ青になる。
これ以上ないほどの、ざまぁ。
けれど、物語はまだ終わらない。
なぜなら――
「リリアーナ嬢、近日中に正式な“求婚会議”を開く」
国王陛下がそう宣言したからだ。
「王族、騎士、貴族、すべての候補の中から……
君が誰を選ぶか決めるのだ」
やめて。本当にやめて。
(どうして私の自由はこんなに遠いの……!?)
そして、その夜。
私は王宮の客室に移された。
理由は「安全確保のため」らしい。
もちろん、部屋の前には王族が交代で見張りに来ている。
最初の訪問者は――もちろん、ルシアン殿下だった。
「リリアーナ嬢。寝る前にお話を……」
その次にライナルト殿下。
「護衛に来た」
さらに王弟殿下。
「夜は冷える。毛布を持ってきた」
そして国王陛下まで。
「……寝る前に体調を確認しに来ただけだ」
(嘘です絶対に!!)
結局、私は一睡もできないまま朝を迎えた。
翌朝。
王宮は新たな騒動に包まれていた。
「リリアーナ様に近づくな!」
「いや、俺が先に話す!」
「落ち着け!」
「離せ!」
「剣を抜くな!」
廊下の向こうで、王族と騎士団が衝突している。
私は呆然とした。
けれど同時に、胸の奥で何かがじんわりと温かくなる。
――こんなにも必死に求められているなんて。
私は誰かの“飾り”ではなかった。
最初から、ただの無価値な令嬢ではなかった。
そう思えた瞬間、目の奥が熱くなった。
そして、ついにその時が近づく。
王族、騎士団、魔導士団、貴族家――
国中の有力者が集う「求婚会議」。
その開催が、正式に決定されたのだ。
「いや、俺だ。彼女は俺が案内する」
「待て。そんなに強く腕を掴むな、ライナルト」
「喧しい。お前こそ離せ、ルシアン」
「……ふむ、若造の喧嘩はいつ見ても微笑ましいな」
国王陛下と第二王子、第三王子、そして王弟殿下が、まるで幼子のおもちゃを奪い合うように、同時に私の腕や肩に手を伸ばしてくる。
やめて、本当に腕がもげる……!
「ちょ、ちょっと皆さま! 落ち着いてください!」
私が半ば悲鳴のように声を上げると、四人は同時に動きを止めた。
――その一瞬だけは静寂が訪れた。
しかし次の瞬間。
「リリアーナ嬢、まずはどこへ行きたい?」
「行きたい、ではない。行くべき場所は私の書斎だ」
「黙れ、王弟。彼女に負担をかける気か?」
「俺の訓練所の方が安全だ」
「いや、そもそも私の私室が一番――」
……静寂は三秒で終わった。
四方向から同時に引っ張られ、私は本当に泣きそうだった。
(これは、絶対に間違っている……!)
そのとき。
「――リリアーナ嬢!」
甲高い声が大広間に響いた。
振り返ると、聖女フローラが涙目でこちらに駆け寄ってくる。
後ろには、まだ状況を理解しきれていない王太子アレクシス。
フローラはアレクシスの腕にしがみつき、叫んだ。
「アレク様! どうして皆さん、リリアーナ様に……!?
わ、わたしこそが聖女で、王太子妃になるのに!」
ただの聖女気取りの少女が、王族たちに向かって喚き散らす。
自然と謁見の間はざわめきに包まれる。
王弟殿下はため息をついた。
「……あの娘、まだ状況が分かっていないようだな」
ルシアン殿下は私に寄り添うように一歩前へ出た。
「リリアーナ嬢は、この国の結界を維持する唯一の結界師だ。
聖女などとは比べものにならない重要な存在だと、なぜ気づかない?」
その声は静かだったが、はっきりした怒気が混じっていた。
会場全体が息を呑む。
アレクシスが青ざめた顔で、呻くように声を出した。
「け、結界師……? リリアーナが……?」
「知らなかったのか。嘆かわしい」
ライナルト殿下が冷たく告げる。
「婚約者でありながら、彼女の本質を見抜けない者が何を語る」
「……!」
アレクシスは悔しそうに口を動かす。
しかし、言い返せる言葉はひとつもなかった。
私は視線をそらし、小さく息を吐いた。
――これが、ざまぁというものかもしれない。
胸の奥で、静かな痛快さが広がる。
そのときだった。
「――リリアーナ様!」
重厚な扉が勢いよく開き、ひとりの青年が駆け込んできた。
銀の髪、黒いマント。見覚えのある姿に私は思わず目を見開く。
「クレイグ……!」
彼は私の従者であり、唯一の護衛。
幼い頃に拾った孤児で、今では立派な魔導騎士だ。
クレイグは王族たちの前に立ちはだかり、鋭い眼差しで言い放った。
「リリアーナ様を力ずくで奪い合うなど、正気ですか!?
彼女はおもちゃではない!」
その言い方に、王族たちが一気に表情を変える。
ルシアン殿下は微笑を消し、凛とした瞳を向けた。
「……君は立場を理解しているのか?」
「もちろんです。
ですが、たとえ相手が誰であっても――
リリアーナ様に無礼を働く者は、俺が斬り捨てます。」
会場が凍りついた。
クレイグがこんな強気な台詞を口にするのは初めてだ。
(こ、怖い……!)
私が慌てて彼の袖を引くと、彼はすぐに柔らかい顔に戻った。
「申し訳ありません、リリアーナ様。ですが……どうしても許せません」
……そんな真剣に?
と胸が熱くなる。
王族たちの視線が、クレイグに向けて鋭く研ぎ澄まされる。
今度は従者と王族の奪い合いが始まる予感しかしない。
「リリアーナ嬢、どうかこちらへ」
ルシアン殿下が再び私の手を取る。
だが、クレイグが遮った。
「おやめください。リリアーナ様はお疲れなのです」
「お疲れ……? この程度で?」
「この“程度”のせいで混乱しているんですよ。あなた方のせいで」
「なんだと?」
王族の眉間に深い溝が刻まれた。
そうしている間にも、迫り来る気配がある。
(……また誰か来た?)
大広間の奥から、重い足音が響いた。
鎧をつけた騎士団長リアムが現れ、その後ろにずらりと並ぶ精鋭騎士たち。
その中心に、ひときわ大柄な男性が立っていた。
「リリアーナ嬢。お怪我はないか?」
その声は、侯爵家の当主――オルフェン侯爵。
私の母方の親戚にあたる人物であり、騎士団を統括する重鎮だ。
侯爵は私を見るなり、険しい顔をした。
「王族が……君を奪い合っていると聞いたが、本当か?」
「え、ええと……」
返事に困る私の代わりに、ルシアン殿下が答えた。
「彼女を引き取るのは当然だ。家柄も地位も申し分ない。何より――」
「何より?」
侯爵が険しい目を向ける。
ルシアン殿下はためらわず言った。
「彼女は私が愛している。
だから、絶対に渡さない」
大広間が爆発したようにざわついた。
「ル、ルシアン殿下!?」
「お、おおおお落ち着いてください!?」
私は真っ赤になって彼の腕を振りほどこうとする。
しかし、ルシアン殿下は逃がす気ゼロだった。
「リリアーナ嬢。君が誰を選ぶかは自由だ。
だが、それでも私は君を諦めない」
その目は本気だった。
クレイグが一歩前へ出る。
「殿下。俺も……リリアーナ様をお守りしたい。
俺の気持ちは――ずっと前から変わりません」
「お前まで……」
ライナルト殿下がため息をつきながらも、静かに言う。
「俺も、譲る気はない」
国王陛下は頭を抱え、王弟殿下は「面白くなってきたな」と笑い、
騎士団長は呆れ、侯爵は拳を震わせている。
――混沌の極み。
「……あの、皆さま。そろそろよろしいでしょうか?」
精一杯の声で呼びかけると、全員がぴたりと動きを止めた。
王族も騎士団も従者も、皆が私を見つめる。
(どうしよう……とても言いにくいけど……)
覚悟を決め、私ははっきりと言った。
「私は、まだ誰のものにもなりません。
自由が欲しくて、婚約破棄を受け入れたのです。
今すぐ“誰か”を選ぶつもりはありません」
あまりに静まり返った大広間。
しかし――四人の王族は同時に微笑んだ。
「……だからこそ、選ばれたい」
ルシアン殿下。
「焦らなくていい。最後に俺が選ばれれば」
ライナルト殿下。
王弟殿下。
「リリアーナ嬢を守れるのは私だ」
国王陛下。
更にクレイグが真っ直ぐな瞳で言う。
「リリアーナ様。誰を選ぶかは、あなたが決めてください。
ですが……どうか俺も、その候補に入れてください」
騎士たちがざわめく。
侯爵は頭を抱えながら呟く。
「……なんだこの国は。リリアーナ一人で王族と騎士団と従者が争うなど聞いたことがない……!」
――本当に私もそう思う。
私はただ静かに、自由に生きていきたかっただけだ。
それなのに。
気づけば――
一国の王族総出での奪い合いに、従者と騎士団長まで参戦している。
そして、遠くでは王太子アレクシスが打ちひしがれた様子で立ち尽くしていた。
「なんでだ……なんで皆リリアーナなんだ……
聖女のフローラじゃなくて……!」
その情けない声が私の耳に届く。
私は静かに彼を見つめ、微笑んだ。
「――それが、あなたの“見る目”の差ですよ、アレクシス殿下」
アレクシスの顔が真っ青になる。
これ以上ないほどの、ざまぁ。
けれど、物語はまだ終わらない。
なぜなら――
「リリアーナ嬢、近日中に正式な“求婚会議”を開く」
国王陛下がそう宣言したからだ。
「王族、騎士、貴族、すべての候補の中から……
君が誰を選ぶか決めるのだ」
やめて。本当にやめて。
(どうして私の自由はこんなに遠いの……!?)
そして、その夜。
私は王宮の客室に移された。
理由は「安全確保のため」らしい。
もちろん、部屋の前には王族が交代で見張りに来ている。
最初の訪問者は――もちろん、ルシアン殿下だった。
「リリアーナ嬢。寝る前にお話を……」
その次にライナルト殿下。
「護衛に来た」
さらに王弟殿下。
「夜は冷える。毛布を持ってきた」
そして国王陛下まで。
「……寝る前に体調を確認しに来ただけだ」
(嘘です絶対に!!)
結局、私は一睡もできないまま朝を迎えた。
翌朝。
王宮は新たな騒動に包まれていた。
「リリアーナ様に近づくな!」
「いや、俺が先に話す!」
「落ち着け!」
「離せ!」
「剣を抜くな!」
廊下の向こうで、王族と騎士団が衝突している。
私は呆然とした。
けれど同時に、胸の奥で何かがじんわりと温かくなる。
――こんなにも必死に求められているなんて。
私は誰かの“飾り”ではなかった。
最初から、ただの無価値な令嬢ではなかった。
そう思えた瞬間、目の奥が熱くなった。
そして、ついにその時が近づく。
王族、騎士団、魔導士団、貴族家――
国中の有力者が集う「求婚会議」。
その開催が、正式に決定されたのだ。
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