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第零章 天女の始まり
18 懇願(2)
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おやつを手に奥の書院へと移動する。この部屋は割と広めの全面床張りの部屋である。居間的な感じで使っているようだ。襖障子を全開にすることによって風が通り、夏場でも涼しい。
地球温暖化が始まっていないのか、はたまた高い建物がないので風通しが良いためか、暑いっちゃ暑いがエアコンなしでも生活が苦ではない。
「確かに俺が知っているみたらし団子と違うようだ。トロッと輝いているな。」
「はい。砂糖醤油で味をつけたので、とろみがついておりまして…。」
「砂糖醤油?」
「はい。私が今まで食べてきたみたらし団子は砂糖醤油だったので…。」
「なるほど…。まさに甘未だな。気を使わせてしまったか?」
眉を下げながら微笑をこぼした信繁はやはり美しい。意外と信繁は笑う人なんだなと思いながら、徳は焦って返事を返す。
「いえ!そういうわけではなくって、私が作りたかったというか、感謝の気持ちといいますか…。」
「感謝?」
「はい…。…気を使っていただいたり、今日もいろいろ買ってくださいましたし…。」
「別に気を使ったわけではない。大谷の姫なのであろう?それが本当なら必要な生活用品はそろえておくべきだ。…それに、姫だと主張しているあんたに侍女のような作業をさせているのだ。むしろ、憤慨して罵られてもしょうがないとも思っているがな。」
「えっ!?罵るなんて、そんな!…むしろ、私がスパイ…えーと、つまり間者とか、どっかの回し者だと怪しんでいながらも置いてくださっているんですよね…。考えてみたらいつ寝首を掻かれるんじゃないかと気が気でないんじゃと。…それなのに、屋敷においていただいてるので、いろいろ考えたら申し訳なく思って…。」
「寝首を掻く?」
「はい。」
「あんたが?俺に?」
「え、ハイ…。」
「ぷッ、…ははは!」
「…な、…なんで笑うんですかっ…!」
真剣に話していたのに、可笑しそうに笑われてしまって戸惑っているという理由が1割。信繁の笑顔が眩しすぎてドギマギしてしまうというのが9割を占め、徳はうろたえる。…のと共に一気に赤面した。
(し、心臓がうるさい…!)
「――いや、すまない…。俺は別にあんたに寝首を掻かれるんじゃないかとかは考えてはない。」
「え…。でも、素性が分からないと城へ文を出してはくれないと…。佐助さんも私の行動を見張ってるし…。」
「佐助のことは気にするな。…確かにそうは言ったが、…そういう理由ではなくてだな。…あんたの様子を見る限り間者や刺客ではないとは思っている。佐助もそうだ。――…だが、あんたが言っていることが事実なら、どうやって城から離れたこの場所に一瞬で移動したのかとか、本当に大谷吉継殿の娘なのかとか、あの時の力はなんなのか、と引っかかることがあってな。分からんことが多いから、そこがもう少し確証を得て文を出さなければ。間違えれば家同士の争いになりかねん。」
「え…、争い…、ですか?」
「もし、あんたが仮に大谷の姫でないとして、姫を預かっているという文が届いたら吉継殿はどう考えると思う?」
「あ…、」
「姫を標的に何かが企てられていると思案するだろう?」
「…。」
「逆に本当に姫だとして、俺らが誘拐したとも思われかねん。」
「なっ!それは違います!」
「姫がどんなに主張しても判断を下すのは吉継殿だ。まぁ、少し様子を見るさ。」
「……巻き込んでしまってごめんなさい…。」
今になってとんでもないことに巻き込んでしまっていることに気づいた徳は、自身のお願い事など言いだす余地もない。
見ず知らずの厄介者を受け入れてくれている信繁と、疑いの目を向けつつもフレンドリーに接してくれる佐助のことを思い出すと、徳はこの場に居ることさえも申し訳なく思ってしまう。
(…なんでここに来ちゃったんだろう…?なんでこんないい人たちを巻き込んでしまったの…。これ以上迷惑はかけたくない…。…でも…、)
「……信繁様と佐助さんのことは何が何でも絶対に守ります。私が父上様を説得します。だから…――
(私には、家族の幸せも捨てられない。)
ここに置いていただける間でいいので、力のコントロールの仕方と、この日本の情勢や常識を私に教えてください!」
「…は?」
徳は強いまなざしで信繁の瞳を見つめた。
地球温暖化が始まっていないのか、はたまた高い建物がないので風通しが良いためか、暑いっちゃ暑いがエアコンなしでも生活が苦ではない。
「確かに俺が知っているみたらし団子と違うようだ。トロッと輝いているな。」
「はい。砂糖醤油で味をつけたので、とろみがついておりまして…。」
「砂糖醤油?」
「はい。私が今まで食べてきたみたらし団子は砂糖醤油だったので…。」
「なるほど…。まさに甘未だな。気を使わせてしまったか?」
眉を下げながら微笑をこぼした信繁はやはり美しい。意外と信繁は笑う人なんだなと思いながら、徳は焦って返事を返す。
「いえ!そういうわけではなくって、私が作りたかったというか、感謝の気持ちといいますか…。」
「感謝?」
「はい…。…気を使っていただいたり、今日もいろいろ買ってくださいましたし…。」
「別に気を使ったわけではない。大谷の姫なのであろう?それが本当なら必要な生活用品はそろえておくべきだ。…それに、姫だと主張しているあんたに侍女のような作業をさせているのだ。むしろ、憤慨して罵られてもしょうがないとも思っているがな。」
「えっ!?罵るなんて、そんな!…むしろ、私がスパイ…えーと、つまり間者とか、どっかの回し者だと怪しんでいながらも置いてくださっているんですよね…。考えてみたらいつ寝首を掻かれるんじゃないかと気が気でないんじゃと。…それなのに、屋敷においていただいてるので、いろいろ考えたら申し訳なく思って…。」
「寝首を掻く?」
「はい。」
「あんたが?俺に?」
「え、ハイ…。」
「ぷッ、…ははは!」
「…な、…なんで笑うんですかっ…!」
真剣に話していたのに、可笑しそうに笑われてしまって戸惑っているという理由が1割。信繁の笑顔が眩しすぎてドギマギしてしまうというのが9割を占め、徳はうろたえる。…のと共に一気に赤面した。
(し、心臓がうるさい…!)
「――いや、すまない…。俺は別にあんたに寝首を掻かれるんじゃないかとかは考えてはない。」
「え…。でも、素性が分からないと城へ文を出してはくれないと…。佐助さんも私の行動を見張ってるし…。」
「佐助のことは気にするな。…確かにそうは言ったが、…そういう理由ではなくてだな。…あんたの様子を見る限り間者や刺客ではないとは思っている。佐助もそうだ。――…だが、あんたが言っていることが事実なら、どうやって城から離れたこの場所に一瞬で移動したのかとか、本当に大谷吉継殿の娘なのかとか、あの時の力はなんなのか、と引っかかることがあってな。分からんことが多いから、そこがもう少し確証を得て文を出さなければ。間違えれば家同士の争いになりかねん。」
「え…、争い…、ですか?」
「もし、あんたが仮に大谷の姫でないとして、姫を預かっているという文が届いたら吉継殿はどう考えると思う?」
「あ…、」
「姫を標的に何かが企てられていると思案するだろう?」
「…。」
「逆に本当に姫だとして、俺らが誘拐したとも思われかねん。」
「なっ!それは違います!」
「姫がどんなに主張しても判断を下すのは吉継殿だ。まぁ、少し様子を見るさ。」
「……巻き込んでしまってごめんなさい…。」
今になってとんでもないことに巻き込んでしまっていることに気づいた徳は、自身のお願い事など言いだす余地もない。
見ず知らずの厄介者を受け入れてくれている信繁と、疑いの目を向けつつもフレンドリーに接してくれる佐助のことを思い出すと、徳はこの場に居ることさえも申し訳なく思ってしまう。
(…なんでここに来ちゃったんだろう…?なんでこんないい人たちを巻き込んでしまったの…。これ以上迷惑はかけたくない…。…でも…、)
「……信繁様と佐助さんのことは何が何でも絶対に守ります。私が父上様を説得します。だから…――
(私には、家族の幸せも捨てられない。)
ここに置いていただける間でいいので、力のコントロールの仕方と、この日本の情勢や常識を私に教えてください!」
「…は?」
徳は強いまなざしで信繁の瞳を見つめた。
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