『天女伝:日本版悪役令嬢なんてごめんです!』~真田幸村の婚約者という悪役令嬢ポジを回避して、幸せ実家生活を満喫します!~

海(カイ)

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第零章 天女の始まり

20 夏風(2)

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 団子を食べた信繁は、大いに砂糖醤油のみたらし団子を気に入った様子だった。その姿は普段大人びて見えていた信繁を年齢相応に見せ、失礼だが可愛らしいと思ってしまったのは内緒だ。


「じゃあ、今までやってたような練習を見せてもらってもいいか?」
「はい!」

 やっと人に教えてもらえると、徳は一気に信繁に気を許していた。こういったところが危機感や警戒心が皆無だといわれる一因だと気づかない徳は、言われた通りにいつものようにガラス玉を掌に転がし集中する。――が、これまたいつものように何も変化は現れない。

「…と、まぁ、こんな感じでして…。」
「…。」
「全く力を感じ取ることもできなければ、うんともすんとも言わないので、行き詰ってました…。」
「…吉継殿からは、あんたの力について何か話はなかったか?」
「覚醒すれば、どっちの力かわかる的なことは言われました。」
「……おかしいな…。」
「…?えーっと…、やり方間違ってました?」
「いや、その方法は力を覚醒させるための訓練として一般的なやり方ではあるのだが…。」
「…あ、これで良かったんですね。…今まで全く反応もないので、もはややり方が間違ってるんじゃないかって思ってきちゃったりしてて…。」
「……力があんたの指先からガラス球に移動しようとする際に、ガラス玉に反発するように力が体内に戻っていっている…。」

「へ?」

「いや、俺も他人の力の流れをはっきりと見れるわけではないんだが…。すまん、もう一度やってもらってもいいか?」
「は、はい!もちろん!」

 徳は再び瞳を閉じてガラス玉へと意識を集中させる。自分の中での力の動きなどは全く感じられないのだが…――。


「…やはり弾かれている…。というよりは体外へ力が出ないように扉が閉まりきってる…、というような印象だな…。」
「…それって、制御は出来ているってことですか?」
「いや…。現段階では体内の力の流れを動かすことができる、ってだけだな。」
「…そう、ですか…。こういう場合はどうしたら良いんでしょうか?」
「俺もこんな事初めてだし、聞いたこともないからな…。そもそも、覚醒前にそれだけ力が溢れているのもおかしいんだ。」
「え?そうなんですか?」
「あぁ。…普通は少ない力から、とは言っても、力持ちで無い人よりは断然多いのだが…。まぁ、それぐらいの量から覚醒後に一気に増えて、制御や鍛錬などの努力によってそこからまた増えていくものなんだが…。あんたのそれは、すでに覚醒後何年も鍛錬しているかのようだ。」
「え、そんなに…?。…でも、それ使えなかったら。」
「宝の持ち腐れだな。俺の立場なら、だが。…しかし、体内で流れを動かすことは出来ているから、無駄になっているわけではない。この訓練は続けよう。」
「はい…。」
「あとは、その力をもう少し抑えきれるかだが…。体内で力を感じ取ることは出来るか?こう…、体の中心から何かが湧き出るような、体内を何かが廻っていくような感覚なんだが…。」
「…それが、まったく無いんです…。無です。無…。」

 徳はまた正座の状態で両手を地面につけて項垂れた。


「…あれ…?…体内を廻る…?、…そういえばこの場所に移動する直前、身体の中をどくどく何かが廻る感じはあったんです…。」
「移動する前に…?」
「はい…。寝ようとしてたら急に…。」
 信繁が顎に手を置いて考え込んだ。その瞳からは何を考えているのかは読み取れない。

「…そうか…。俺も色々と調べてみよう。あんたはこのままガラス玉の訓練を続けてくれ。」
「あ、はい…。あの…。」
「?」
「…私の力が漏れれて、信繁様や佐助さんは怖いとか、近寄りたくないとか思わないんですか?」
 そう伝えると。信繁はあのきょとんとした表情を見せた。

「俺らは大丈夫だ。力に当てられることは慣れている。だからそんな顔するな。」

 思わずしょぼくれた表情を見せた徳に、信繁はあたたかな笑顔を浮かべ、頭を撫でた。
 佐助が言うように意外と面倒見がいい信繁に、徳は申し訳なくなるのと同時に胸の奥がムズムズするような、初めて抱く感情が見え隠れして戸惑う。


「あんたも疲れただろう。今日はこれまでにして、続きはまた明日にしよう。」
「はい…。信繁様、本当にありがとうございます。」
「これも何かの縁だ。よろしくな、大谷の姫。」
「はい。むしろ、こちらこそよろしくお願いします。」


 朝から佐助と市に出かけたり、料理をしたりといろいろなことをしていたため、気づけばなんだかんだ時間が過ぎ、日も西に傾いていた。


 いつも見る夕焼け空がいつも以上にきれいに見える。襖障子から、日中太陽に温められていた生暖かい風が徳の頬をかすめたが、意外にもその風は心地よかった。
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