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チートです
しおりを挟むお待たせしてすみません。時間が取れずデータは吹っ飛び書き直し…しかもそんなに進んでません…それでも週一投稿を目処に再開していきますのでよろしくお願いします!
ーーー
「あのー」
「勇者様はなんと勇ましい方なんでしょう!魔族が暴れた時のことをお考えになって、自分の実力を知りたいだなんて!きっとラウラの聖なる剣に憎き魔族の血を吸わせてくれるに違いありません。私、感服いたしました。クリストファーゼ、水晶を持ってきなさい。」
ティアの目がまた悦に潤む。声を張り上げて、『勇者が魔族を殺すぞ』と誇らしげに周りにいる騎士や従者たちに聞こえるように叫ぶ。ひぃぃっ、訂正しづらい…。どう、どうしたら……。
そうこうしている間に、クリストファーゼと呼ばれた従者の一人がカートに乗せて野球ボールぐらいの水晶玉と紙を持ってくる。
これに手を当てたら、わかるようになるのかな?それとも覗き込むのかな?
じーっと、見つめたり手をかざしたりしているとティアが横に近づいてきた。
「さて、ユーキ様。まずはユーキ様の体内の魔力回路をこじあけます。」
「えっ、なにそれ、痛い?」
魔力回路……また俺の知らない異世界専門用語だ。普通こじ開けるって言葉、体に使わなくない?絶対痛いやつじゃん。俺はティアと距離を取り、己の体を抱きしめた。
「ユーキ様に痛いことなどしませんよ。魔力回路は魔力の通り道。魔力を体外へ出さないと、魔法適性があっても使えませんからね」
ティアは俺の手を取り、指を絡ませる。手のひらと手のひらが密着して、なんだか気恥ずかしいこの、手のつなぎ方。
「魔力回路とこの、恋人つなぎとの関係性は?ちょっと、は、恥ずかしいんだけど」
「魔力をユーキ様に流し込むために必要なのですよ。魔力を感知したら……多分暖かな物が流れてくる感覚がするはずです。感じたら言ってください」
「ん、わかった」
ティアが、ぐっと手を握る力を強める。こうして手を合わせると、ティアの手は細くても大きな大人の手なのだとわかる。
「あっ」
不意に暖かなものが手から流れ込んでくるのを感じた。暖かな、とか言ってたけど結構暑いぞ。おじいちゃん番頭さんが入れるあつめのお風呂ぐらいある。変な声出ちゃった。
「はい、これで魔力回路が開通しました。念のため、私に魔力を押し返していただけますか?」
「ええっと、こう?」
ティアの手に指を強く絡めて、温かいものを押し出すイメージをする。
「さすがですね。」
ティアがにこりと微笑む。どうやらうまくいったらしい。
「ユーキ様、それではこちらの水晶に力一杯、注ぎ込んでみてください」
ティアが紙に乗せた水晶を指差す。
「わかった。」
先程のように水晶をぎゅっと握り込んで熱を移すイメージをすると、
パリンと水晶が割れた。
えっ?
水晶、割れた?
「ユーキ様!お怪我はありませんか!」
びっくりして、静止しているとティアが俺の手を取り怪我の確認をしてくる。水晶は粉々になって紙の上で竜巻を上げて踊っている。
「だ、大丈夫だけど……。この水晶って、こういう使い方する訳じゃなかったのか? ごめんなさい。壊しちゃって…」
「いいえ、謝らないでください。ユーキ様が無事ならそれでいいのです。それに、」
ほら、とティアは羊皮紙をこちらに手渡す。真っ白だったはずの羊皮紙には文字がこれでもかと並んでいる。
ーーー
【木村裕樹】
年齢17歳 性別 男
HP 700 MP ∞
幸運 80% 感度 S+
《魔法属性》
炎魔法 Level8
電魔法 Level8
浄化魔法 Level8
水魔法 Level 1 風魔法 Level 1 土魔法 Level 1 氷魔法 Level 1
《スキル》
[ラウラの剣技]
剣を使った攻撃が必ず命中する。
[愛し子]
交渉時、己の有利に進む。また感情判定は正の感情か執着に固定される。
[浄化の力]
魔族のだした瘴気を浄化できる。
[勇者のカリスマ]
仲間のHPが半分になった場合、もしくはパーティーメンバー以外に守るべきものがその場にいた場合、味方の攻撃力と命中率があがる。
[条件未達成]
[条件未達成]
《称号》
[異世界からの男]
異世界からきたことを指す。
[ラウラの加護]
ラウラの聖剣を引き抜けたことによる加護。相手の攻撃が急所に当たりにくくなる。
[純潔の子]
死が性に関するものだったにもかかわらず、その身が純潔のままであったことへの称号。
性的経験により変化有し、スキルが解放される。
《感情表》
裕樹→リスティリア
正の感情 信頼Level 1
裕樹からリスティリアへの補助魔法成功率がプラスになる。
リスティリア→裕樹
[]の感情 執着Level MAX
リスティリアから裕樹への全ての魔法が成功する。
ーーー
「魔力、∞って…」
小学生の考えた最強のキャラみたいなステータスがそこにはあった。自由帳に書いた苦い黒歴史を思い出して苦笑する。
「すばらしい、頼もしいです。私にも見せていただけますか?」
妙な気恥ずかしさを覚えている俺とは違って、ティアは目を輝かせる。羊皮紙を二人で持って覗き込むと、スキルと称号の欄に目が行った。
『[純潔の子]
死が性に関するものだったにもかかわらず、その身が純潔のままであったことへの称号。』
俺の死因と童貞をディスりやがって…!
ああそうですよ!俺死にかけてますよ!アダルトサイトのゲイビデオ再生して死にましたよ!
でも女性経験がフォークダンス止まりなことを言わなくてもいいじゃない!!
俺が死んだの高1から高2に上がろうってとこじゃん。これから高2の体育祭球技大会文化祭ってとこだったじゃん!
イベントの時に彼女作るって決めてたんだよ!相手のことよく知って好きになって、好きな子と初めてをしたいって思うのはおかしいことですか!
その日限りの女の子で童貞捨てる奴なんて大抵ヤリチンになっちまうのが関の山なんだよ!
でも死ぬ前に童貞捨てたかったなぁとは思わなくもない。
俺が心の中でこの羊皮紙に怒りをぶつけていると、ティアは綺麗な眉毛をハの字に曲げて俺に話しかけてきた。
「ユーキ様、心配なさらないでください。ユーキ様は十分お強いお方です。スキル解放のために性的経験を無理強いは絶対にしないし、私がさせません。」
「へ?」
突然のノーセクハラ宣言に、再度思考が停止する。性的経験の無理強い?ティアはまた哀れむような顔をこちらに向けている。はて、なにか、誤解をしているようだ。よく、文章を読み込む。
『死が性に関するものだったにもかかわらず、その身が純潔のままであったことへの称号。』
これは、スマホ爆破事件だ。『AV見とったけど童貞やったよな。草生えるわ』の意味だ。
しかし、ティアはどう捉えただろう。ここに来て数時間しか経っていないが、この世界にスマホはないだろう。テレビも、蓄音機もまだなんじゃないだろうか。そして、性的娯楽もたぶん、娼婦館とか、見世物小屋の獣姦ショーとか…そう言う類しかないはず。
そして、ティアや他の人たちより小柄な子供の俺が、娼館や見世物を利用するか利用される側かと考えたら、それは必然的に…
「あぁ、そんな。こんなに幼い子供に、無理矢理…」
「きっと抵抗したから蝋燭を垂らしたり電撃で跳ねる体を視姦したんだわ……」
性的な暴力の最中、炎と電撃で死んだ哀れな子供の存在に、侍女たちが目元を抑え涙している。
「えっ、あの。ちょっと」
「ユーキ様は酷く傷ついておられる!我らが悲願の勇者に近づく、不埒な考えをもつものがあれば、女神ラウラからの天罰が下ると思え!」
ティアが放った言葉は、勇者召喚成功の御触れとともに、国内外全土に伝わった。
……俺はこちらでも童貞を捨てられなさそうだ。
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