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第二章 陰謀戦争許さぬ意向
sideアンジュ。
しおりを挟む注意 順番前後。18ページ 協力者のアンジュ視点 リリーナの告白をアンジュがなんで飲んだのかって描写したくて…すいません、誠哉は今週中に解決します。BLタグにも謝れ。ごめんなさい。
ーーー
誠也に切られた額から、血が止まらない。私は、私に罪があるから、私が悪い子だったから、誰も手を差し伸べない。誰も助けにこない。今の私は、ジュリーの虚なエメラルドに愛されたときの、男爵令嬢じゃない。わたし、私は…。
だんだんと、仄暗い感情にのまれていく。
誠哉の得意とする魔法だ。
相手から、
思考を、奪う。
対策が あったは、ず。 なに か。
魔法に必死に抵抗して残っていた冷静な頭が、出血過多による頭痛でやられていく。
思考停止した頭の中に押し寄せるのは、走馬灯のような、何かだ。
鞭を打たれたこと。靴を舐めろと言われたこと。タバコの火を押しつけられたこと。
ーー ジュ。ひさしぶり ね
ジュリーに愛してるって言ってもらったこと。私が求められてて、私を愛してくれていて、うれしかったという気持ち。
ーーアンジュ。おちついて!
意味のわからない誠哉の言葉。暴力、痛み。血。赤、あ、か あかあかあか!
ふっ、と心が軽くなる。目の前には、卵を抱いたジュリーと、ジュリーを庇うルミナス公爵がいた。
ーー
ジュリーは、私が獣人だと知っても、蔑んだり、怒ったりはしなかった。他の貴族ならそうはいかないことを私は知っている。祖国でもこの国でも、獣人はあまりにも異質なもの、汚いものとして使われていた。
それだけじゃない。私は罪人だ。ジュリーに薬を盛り、暗殺まで命令されていた。全てを告白してもなお、ジュリーは私をなじったりしなかった。
ジュリー、貴方はなんて純粋で優しいのかしら。たくさん汚いことをしてきた私には、その美しい心が眩しい。
「ジュリー、貴方は幸せかしら?」
卵を抱きしめ、ルミナス公爵に肩を抱かれ、それなのに、それでもなお、私のことを心配そうに見つめるジュリーに、私はいつも彼に言ってたセリフを吐く。
薬を使って、彼に無理やり好きになってもらって、優しく愛の言葉をもらった。愛してるも、浪漫小説の一説のような甘い言葉も、嬉しかったけど……でもそれら全てが、私の罪だったわ。偽りで、悲しくて、虚しいエメラルドの瞳は私にだけ鈍く溶けて、なんども私に冷や水を浴びせた。
『アン、私たちは幸せになれるよ』
彼は私と二人だけの未来を優しく語ってくれて…でも、そう、それだけ。絶対叶いっこない。ジュリー、貴方が好きよ。優しくしてくれるから。でも、私は、誠哉の命令があって、貴方の隣にいる。貴方の愛は薬がくれる。全てが、虚しくて、私はお嬢様のように貴方の胸で泣いた。
今の貴方はどう幸せを描いてるの?私は、どうしたらいいの?縋るように、ジュリーに手を伸ばす。
「アン。オレは幸せだよ。」
あ、
あぁ。よかった。
ジュリーは幸せそうに卵を撫でて笑った。ジュリーは私とのことを覚えていてくれて、捨てないでくれていて。そして、もっともジュリーが幸せになれる居場所を見つけてくれていた。
「私は幸せになれるかしら」
「正しくあれば、きっと幸せになれるよ。」
ほんと、この王子様は甘ちゃんなんだから……。裏切り者の私の幸せを願って、優しい言葉しか言わない。ほら、貴方のプリンセスが隣でため息吐いてるわよ。
「そう……。そうね。ジュリアス。私の可愛そうだった王子様の門出、しっかりと協力させて頂戴。」
私ができることなら、なんだってするわ。ジュリー。貴方の幸せのために。
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