13 / 40
1stプロジェクト ヤンデレ懺滅作戦
11.騙し騙して入部試験
しおりを挟む
集合写真。たぶん、これは地区大会が終了した後に部員全員で撮影した写真なのだろう。しかし、今回の依頼に関して、あまり役に立つものではないと思う。浜野先輩も宮古さんも袴をはいて、写っている。なのだが二人の距離は離れていて、別にどちらかが一方を意識しているようには見えなかった。
「どうだ?」
「へえ。凄いと思いますよ」
ぼくも無理矢理、彼に憧れたように目を光らせた。そして、再びもう一枚の写真に興味があるみたいに見せかけて、集合写真の方を見入る。
観察……観察……あった。理由は分からないが一年生の時に浜野先輩は左足に湿布を貼っていた。これが……鍵になるかもしれないとぼくの勘が働いた。
「もう分かったかい?」
「ええ。納得しました……あっ。そろそろお暇させていただきます。あれが誤解だってことは、逃げた同級生にも言っておきます」
「そうして貰うと、ありがたいよ」
――――――――――――――――――――
この後、東堂さんとは会わずに家へ帰宅し机に向かいスマートフォンを見ていた。
今から古月さんに連絡する所存だ。しかし、いきなり女子へメッセージを送るのはリスクを背負うのではないか?報告なら明日行えばよい話である。そう思い、スマートフォンの電源を切ろうとした。
「やっほー!」
ノックもせずに部屋へと入ってきた妃芽姉さんのせいでまた操作を誤ってしまい、可愛い兎のスタンプを古月さんへと送ってしまった。
「あわわわわわわ……姉ちゃん。ノックしてって言ってるでしょ?」
「してるよお。弟の心に何度も何度もノックしてるよ!」
「ぼくは、そこの扉にノックをしろ! って言ってるんだあ!」
「うふふふ。可愛いよおー。愛しの陽君!」
彼女のペースに乗せられると、思考が爆発しそうな気がする。一旦、落ち着こう。
部屋の明かりが今よりも明るくぼくたちを照らしていたのだが、今のぼくには闇しか見えていない。冷静になったところで古月さんの相手は誰がするんだよ……
「何の用?」
もう返信が来てるし。画面を触る指を震わせながら、伝えたいことを文字にしていく。その文字列がぼくの心を揺さぶっていた。迷惑ではないか。変な人と思われたりしないのか。
「思い切って送信!」
後は相手の反応を待つだけだ。何故、今も胸から発される音が止まらないのか不思議だ……そのとき。
「思い切って突進!」
彼女の体当たりによって、顔が机に押し付けられる。これは、これはDVではないのだろうか。
「なにやるんだよ……」
声をかけると彼女は満開の笑顔で応答する。
「だって、スマホばっか見て構ってくれないんだもん。お姉ちゃん寂しいなあ。もっと愛が欲しいなあ」
「恋人だよね……それいう対象、恋人だからね!」
「えへへへへ。言われちゃった」
「ぼくのこと、恋人だと思ってんの!?」
この会話、似たようなものをどこかで……
「あんたとアタシの憧れてる探偵じゃあ、月とすっぽんよ!」
「そうだな。有名すぎると、尾行とか絶対無理んなってきちゃうからな」
「それって……あんたが月ってこと? 違うからね。違うからね!」
宮古さんを追跡しているときに古月さんと交わしたこのやり取り。ダメだ。ぼくと姉さんが似たもの同士になっている。「姉弟よく似てるねー」なんて近所のおばさんに言われたことがあるけれど本当の事だったんだと、悲観した。もう少し、生活習慣を変えなければ。
「もっとお姉ちゃんのことを見てえ!」
「はいはい」
何の表情もない顔を作って、彼女の言葉に相槌をうつ。
「ふう。お姉ちゃん、なんでも頑張っちゃうから! テスト勉でも分からないところを教えちゃうよ!」
……!なんで気づかなかったんだ!?彼女を使えば、調査もかなり楽になっていたんではないだろうか。思い立ったが吉日だ。彼女に早速お願いしてみよう。
「ねえ。お姉ちゃん! ……あの部活に入部試験あるの知ってる?」
「そうなの? 教えてくれてありがとね! 今度一日ワタシをす――」
「う、うん。それで部長の東堂さんからの話なんだけど、とある情報を探ってほしいんだ!」
入部試験なんて、勿論嘘だ。だが普通に弟からのお願いというよりは、試験と銘を打っておけば彼女もやる気になる。
まあ、自分からお願いした場合。後で「お姉ちゃんが着替えとかさせてあげるからねえ」とか「サービスして一緒にお風呂に入っちゃおう!」とか言われてしまう。この姉弟は何故か貸し借りを作ったとしても結局は姉さんが得するのである。理不尽な話だ。今もぼくの貸しに反応し「一日ワタシを好きに扱っていいよ」と強要しようとしたのだろう。ああ……寒気が止まらない。
「まあ。できるだけ情報を集めれば合格なんだよねえ」
「そう。情報というのは、今回の依頼人が何故、一年のときに湿布を貼っていたか、だよ!」
怪しいと睨んでいた部分でもあるが、この依頼とは何の関係もないかもしれない。もしかしたら彼女がおっちょこちょいで、転んでできた打撲に湿布を貼っていたのかもしれない。
ぼくにとってのメリットは、姉さんから襲われる時間を減らそうとしたことだ。
「えっ!? 嘘でしょ……?」
簡単なことだと思っていた。それより、大きかったのだ。浜野さんと宮古さんが抱えている重すぎる荷物にぼくたちは何も知らずに手を出していたことを後で思い知らされることになる。
「どうだ?」
「へえ。凄いと思いますよ」
ぼくも無理矢理、彼に憧れたように目を光らせた。そして、再びもう一枚の写真に興味があるみたいに見せかけて、集合写真の方を見入る。
観察……観察……あった。理由は分からないが一年生の時に浜野先輩は左足に湿布を貼っていた。これが……鍵になるかもしれないとぼくの勘が働いた。
「もう分かったかい?」
「ええ。納得しました……あっ。そろそろお暇させていただきます。あれが誤解だってことは、逃げた同級生にも言っておきます」
「そうして貰うと、ありがたいよ」
――――――――――――――――――――
この後、東堂さんとは会わずに家へ帰宅し机に向かいスマートフォンを見ていた。
今から古月さんに連絡する所存だ。しかし、いきなり女子へメッセージを送るのはリスクを背負うのではないか?報告なら明日行えばよい話である。そう思い、スマートフォンの電源を切ろうとした。
「やっほー!」
ノックもせずに部屋へと入ってきた妃芽姉さんのせいでまた操作を誤ってしまい、可愛い兎のスタンプを古月さんへと送ってしまった。
「あわわわわわわ……姉ちゃん。ノックしてって言ってるでしょ?」
「してるよお。弟の心に何度も何度もノックしてるよ!」
「ぼくは、そこの扉にノックをしろ! って言ってるんだあ!」
「うふふふ。可愛いよおー。愛しの陽君!」
彼女のペースに乗せられると、思考が爆発しそうな気がする。一旦、落ち着こう。
部屋の明かりが今よりも明るくぼくたちを照らしていたのだが、今のぼくには闇しか見えていない。冷静になったところで古月さんの相手は誰がするんだよ……
「何の用?」
もう返信が来てるし。画面を触る指を震わせながら、伝えたいことを文字にしていく。その文字列がぼくの心を揺さぶっていた。迷惑ではないか。変な人と思われたりしないのか。
「思い切って送信!」
後は相手の反応を待つだけだ。何故、今も胸から発される音が止まらないのか不思議だ……そのとき。
「思い切って突進!」
彼女の体当たりによって、顔が机に押し付けられる。これは、これはDVではないのだろうか。
「なにやるんだよ……」
声をかけると彼女は満開の笑顔で応答する。
「だって、スマホばっか見て構ってくれないんだもん。お姉ちゃん寂しいなあ。もっと愛が欲しいなあ」
「恋人だよね……それいう対象、恋人だからね!」
「えへへへへ。言われちゃった」
「ぼくのこと、恋人だと思ってんの!?」
この会話、似たようなものをどこかで……
「あんたとアタシの憧れてる探偵じゃあ、月とすっぽんよ!」
「そうだな。有名すぎると、尾行とか絶対無理んなってきちゃうからな」
「それって……あんたが月ってこと? 違うからね。違うからね!」
宮古さんを追跡しているときに古月さんと交わしたこのやり取り。ダメだ。ぼくと姉さんが似たもの同士になっている。「姉弟よく似てるねー」なんて近所のおばさんに言われたことがあるけれど本当の事だったんだと、悲観した。もう少し、生活習慣を変えなければ。
「もっとお姉ちゃんのことを見てえ!」
「はいはい」
何の表情もない顔を作って、彼女の言葉に相槌をうつ。
「ふう。お姉ちゃん、なんでも頑張っちゃうから! テスト勉でも分からないところを教えちゃうよ!」
……!なんで気づかなかったんだ!?彼女を使えば、調査もかなり楽になっていたんではないだろうか。思い立ったが吉日だ。彼女に早速お願いしてみよう。
「ねえ。お姉ちゃん! ……あの部活に入部試験あるの知ってる?」
「そうなの? 教えてくれてありがとね! 今度一日ワタシをす――」
「う、うん。それで部長の東堂さんからの話なんだけど、とある情報を探ってほしいんだ!」
入部試験なんて、勿論嘘だ。だが普通に弟からのお願いというよりは、試験と銘を打っておけば彼女もやる気になる。
まあ、自分からお願いした場合。後で「お姉ちゃんが着替えとかさせてあげるからねえ」とか「サービスして一緒にお風呂に入っちゃおう!」とか言われてしまう。この姉弟は何故か貸し借りを作ったとしても結局は姉さんが得するのである。理不尽な話だ。今もぼくの貸しに反応し「一日ワタシを好きに扱っていいよ」と強要しようとしたのだろう。ああ……寒気が止まらない。
「まあ。できるだけ情報を集めれば合格なんだよねえ」
「そう。情報というのは、今回の依頼人が何故、一年のときに湿布を貼っていたか、だよ!」
怪しいと睨んでいた部分でもあるが、この依頼とは何の関係もないかもしれない。もしかしたら彼女がおっちょこちょいで、転んでできた打撲に湿布を貼っていたのかもしれない。
ぼくにとってのメリットは、姉さんから襲われる時間を減らそうとしたことだ。
「えっ!? 嘘でしょ……?」
簡単なことだと思っていた。それより、大きかったのだ。浜野さんと宮古さんが抱えている重すぎる荷物にぼくたちは何も知らずに手を出していたことを後で思い知らされることになる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる