【完結】異世界でラスボスの生贄になったはずなのに何故か溺愛されました ~次は、あなたの物語~

上杉

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1章 はじまりは必然

1 これは、夢?


 一体、どういうことだろう。

 真宮理人まみやりひとは確かに死んだはずだった。
 深夜、ひょんなことから家を出てコンビニへ行こうとしたときのこと。雪がちらつくなか、突然強い光が向けられたと思った瞬間、襲ったのは強い衝撃で。
 それがトラックだと気づいた時には、すでに走馬灯を見ていた。
 小さい頃から身長が伸びずひ弱で、やーい女と馬鹿にされ続けた日々。
 中学に入ってもそれは変わらず、ある日突然いじめに変わってからは学校にも行けなくなってしまった。
 以来、理人はゲーム漬けの毎日をすごしていた。
 ゲームの中では、現実の自分とは違う強く勇敢な主人公になれた。だからそんな世界を心から楽しみ、没頭していた。自分の半生はゲームだと声を大にして言えた。
 そういう訳で、今見ている光景もクリアしたゲームの走馬灯だと思っていたのに――。

「……起きろ」

 理人が意識を取り戻したのは、そんな声が耳に響いたときだった。
 まぶたのうらで煌めく光に目を開けると、自分が床の上で横たわっていることに気付いた。
 驚いてあたりを見回すと、下に描かれた魔法陣が穏やかな青い光を放っていて、周囲を紫に燃える松明が囲っていた。よく見れば自分の座っている場所も円状の祭壇のようで、まるで
 あたりを見回して理人は思った。
 ――ここは…………まさかゲームの世界?
 トラックに轢かれる前、外出する直前にやっていたゲーム「ロード・エクリプス」。
 作り込まれた世界観とキャラクターの素晴らしさに理人がドハマりしたアクションRPGだが、そのラストダンジョンであるラスボスの城にどこか似ているように思えた。
 内装はダークトーンで整えられ、そのしつらえにはさまざまな黒が用いられていて華美でなく品がよかった。そのなかで禍々しい形の什器や金属飾りがかすかな光を放ち、現実離れした美しさを醸し出していた。さらに上を見上げればそこに天井はなく、深い闇で覆われ何処までも続いているように見えた。
 そんな現実とは思えない光景に理人が目を奪われていると、視界にゆったりと近づいてくるふたりの姿があった。
 ひとりは古びた革の長靴を履いており、見上げると老人の顔が目に入った。
 その瞬間、理人は息を呑む。
 ――知ってる……こいつは確か、影の王の家臣……老翁アヌサバだ。
 老人はグレーの肌につるりとした頭と長い白眉、そして髭をたくわえており、きらびやかな紋の入った濃紺のローブをまとっていた。
 ひょろりとしていて弱々しく見えるものの、この老臣が魔法の知識に優れていることを理人は知っていた。
 白い毛の下の表情はよく見えなかったものの、ゲームのなかで苦戦した記憶が蘇り、理人はどきりとする。
 そしてこのとき、ようやく自分が置かれている状況を確信したのだった。
 ――アヌサバがいるということは……ここはやっぱりあのゲームの世界なんだ。
 途端、理人のなかで抱いていた恐怖が影を潜め、徐々にわくわくとたぎる気持ちが現れはじめた。
 それは、大好きなゲームの世界に入ることができて心から嬉しい気持ちと、全クリしてこの世界をわかっている自分なら、きっと大丈夫という安心だろうか。
 ――ローエクの世界なら多分どうにかなる。
 自分がどれだけこのゲームを遊んだか、もうわからないくらいやり込んだのだから。
 そう理人が心のなかで頷いていると、老臣は片眉をふわりと上げて静かな声で言った。 
「ようやく目覚めたようだな。……よし、きが良いうちに急ぎ王の元へ献上して奉らねば。さあ、生贄の手を縛れい」
 ――生贄?
 不意に聞こえた物騒なことばにどきりとするや否や、突然脇から手が伸びた。それは理人の手首を掴むと麻紐でまとめて一瞬でくくってしまった。
 みるみる巻かれぎちりと締められてしまい、突然激痛が走る。
 ――痛い!ゲーム世界なのにこんな痛いのか……。
 そのまま勢いよくひっぱられて立ち上がると、紐が擦れて皮膚を焼くような痛みを感じた。そして手首に血が滲んだ頃、ようやく理人は現実に引き戻されたのだった。
 一体、どういうことだろう。
 自分――真宮理人まみやりひとは確かに死んだはずだったのに。
 どうやら本当にあのゲーム「ロード・エクリプス」の世界へ転生してしまったらしい。
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