恋愛短編集①

華愁

文字の大きさ
上 下
11 / 11

恋の始まりは学園祭

しおりを挟む
《登場人物》

枦川冬彩はしかわゆあ

高校二年・十七歳

学園祭前日に
衣装を破かれるが
家庭科教師・愛徳により
前より可愛らしくなった

一年の頃から愛徳を
密かに思っている

 愛徳秋央なるえあきお

家庭科教師・三十歳

学園祭前日に
冬彩の破れた衣装を直す

この時から冬彩を意識し始める

+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+ 

{学園祭}

やられたなぁ~

明日着るのに今から直すのは無理だろう。

私は裁縫が苦手だ……

誰の仕業かはわかっているが
直接訴えても知らばくれることは手に取るように分かる。

どうしようかと考えていたら
家庭科の愛徳なるえ先生がいた。

枦川はしかわさん』

『愛徳先生』

私に近づき手に持っている衣装を
見て何かを察してくれたみたいだ。

学園祭は明日から。

作り直すには時間がないし
 かと言って、アレンジできる程
センスに自信はない……

これは困った事になった。

『僕でよければそれ、直しましょうか?』

手を引かれながら家庭科室に連れてこられた。

『先生、直せるんですか?』

『僕は家庭科の教師ですよ』

そうだよね。

私から衣装を受け取ると作業を始め、三十分後、
破かれていた裾の部分にはレースがあしらわれていて
破かれる前より可愛らしくなっていて
他の破れた部分も綺麗に直してくれた。

『先生、ありがとうございます‼』

明日の学園祭は頑張るぞ‼

当日、半日で直ってることに
不思議な顔をしたあいつらを
見て優越感が沸いた。

愛徳先生が直してくれた服は最初のものより
可愛らしくなっていて内心ウキウキだ♪

交代、時間に愛徳先生に空き教室へ連れて行かれた。

『よかったです丈の長さは大丈夫ですね』

そう、愛徳先生が可愛らしく
直してくれた衣装は長くもなく、
短くもなくちょうどいい長さだった。

これをきっかけに私達は
仲良くなり、こっそり
アドレスとケー番を交換して
休みの日でも話すようになった。

密かに思っていた相手と繋がっていることが嬉しい。

学園祭から半年後、
私は愛徳先生の恋人になった。

{秘密の恋人}

秋央さんと付き合いだして三ヶ月。

夏休みに入ろうとしていた。

だけど、今年は受験の年。

進学希望の私は当然勉強しなきゃならない。

しかも、表立ってデートはできない。

私達の関係は秘密。

だけど、夏期講習の日だけは唯一学校で会える。

『枦川さん』

廊下で会えば声をかけてくれる。

『愛徳先生』


夏期講習の休み時間、
私は愛徳先生に
会えるだけで元気になれる。

抱き合ったり、キスをしたり
今はできないけど大丈夫。

後数ヵ月経てば私が卒業する。

それまでの辛抱だもん。

{公開プロポーズ!?}

夏期講習から八ヶ月。

進学先の専門学校にも
無事に受かった。

両親も秋央さんも喜んでくれた。

月日が経つのは早いもので今日は卒業式。

担任が一人一人の名前を呼ぶ。

全クラスの名前を呼び終わったところで
校長先生が秋央さんにマイクを渡した。

在校生・卒業生・保護者
教師達全員がざわつき始めた。

『冬彩、僕と結婚してください‼』

え!? 嘘!?

皆が私を見てるけど、
そんな事は気にならない。

マイクを渡した校長先生だけは秋央さんの隣で笑っていた。

状況から察するに校長先生は最初から知っていたのだろう。

「枦川さん」

校長先生に呼ばれ壇上に向かう。

今日二度目。

『冬彩、もう一度言います。僕と結婚してください』

何時も着てる白衣のポケットから
取り出したのは明らかにジュエリーボックスだった。

渡された箱を開けると中に入っていたのは私の誕生石が輝く指輪。

『受け取ってくれますか?』

断るなんて選択肢は
初めからないに決まっている。

『ご両親に挨拶する前に
プロポーズしてしまいましたが
許してくださいね』

おどけたように言う秋央さんが
少し可笑しかった。

『私でよければ、宜しくお願いします』

箱から指輪を取り出し、
左の薬指に嵌めてくれた。

その瞬間、何処からか
拍手が聞こえてきた。

校長先生も笑顔で拍手してくれた。

「枦川さん・愛徳先生おめでとう」

今日は最高の卒業式。

大好きな彼氏にプロポーズされた日だから。

この先に待ち受けている難題は
山盛りだけど、二人でならきっと乗り越えられる。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...