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スピンオフ *೨⋆*✩皇帝陛下は悪役令嬢に恋をする~レオニス・ヴァレンティーノ視点~
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冷たい風が吹きすさぶ帝都の夜、
レオニスは一通の報告書を静かに読み終え、沈黙の中にあった。
「……面白い女だな」
その報告書は、隣国エルシェリア王国で起きた
“王太子による令嬢断罪事件”の詳細だった。
だが、読み進めるうちに明らかになったのは、
王太子や平民令嬢の愚行ではない。
――エリシア・フォン・グレイスという、
ただの侯爵令嬢の底知れぬ才覚だった。
表向きには“悪役令嬢”とされながら、
その実、正義と知略を貫き、逆境を逆手に取り、
貴族社会を裏から揺るがせるまでに至った若き貴婦人。
(……もし、彼女がこの帝国に生まれていたなら――)
帝国の重鎮すら手を焼くような相手を、
彼女はわずか数か月で捻じ伏せ、王国中枢の構造まで書き換えてしまった。
才気。胆力。美貌。
そして何より、“見下されることを恥とは思わない強さ”。
それらすべてが、レオニスの心に深く刻まれた。
(気づいてしまった以上、欲しくなるのは当然か)
◆
数日後、密使を王国に送り、彼女へ正式な求婚状を届けた。
王国の貴族たちが泡を食って動揺する様を思い浮かべて、少しだけ笑った。
(君たちが手放した宝石を、帝国がいただく――それだけの話だ)
◆
そして、エリシアと初めて対面した日のことは、今でも忘れない。
貴族でも、臣下でも、誰もがレオニスを見上げるのに――
彼女だけは、静かに、まっすぐに見返してきた。
「陛下の申し出には、感謝いたしますわ。
ただ、私は“逃げ場”として受け取るつもりはございません」
「……ならば?」
「復讐を終え、誇りを取り戻した“その先”に、立っていたいのです。
私の意志で、私の人生を選びたい」
心を撃ち抜かれた、とはこのことだ。
王太子の愚かさを笑う気も起きなかった。
彼女に刃を向けた者たちは、彼女が“玉座の隣”に立つと知った瞬間に、
地面に頭をこすりつけるだろう。
そんな光景すら――想像に難くなかった。
(君は……“皇后”という器では小さすぎる)
(いっそ、世界の半分でも譲るべきかもしれない)
◆
そして今。
月の照らすバルコニーで、エリシアは彼の隣にいる。
「皇帝陛下とは相思相愛ですので、ご心配なく♡」
あの誇らしげな微笑みを見るたびに、思う。
この女を手に入れるためなら、
帝国一つ――いや、世界の秩序すら、いくらでもくれてやろう。
愛とは征服ではない。
この女にだけは、世界を共に支配する“盟友”として隣にいてほしいのだ。
「エリシア」
「はい?」
「……次は、何を手に入れたい?」
彼女は一拍置き、ゆっくりと口元を緩めた。
「さぁ? けれど――あなたが隣にいてくださるなら、
何だって狙えそうですわ♡」
帝国皇帝と元“悪役令嬢”――
二人の愛と支配は、まだ始まったばかり。
レオニスは一通の報告書を静かに読み終え、沈黙の中にあった。
「……面白い女だな」
その報告書は、隣国エルシェリア王国で起きた
“王太子による令嬢断罪事件”の詳細だった。
だが、読み進めるうちに明らかになったのは、
王太子や平民令嬢の愚行ではない。
――エリシア・フォン・グレイスという、
ただの侯爵令嬢の底知れぬ才覚だった。
表向きには“悪役令嬢”とされながら、
その実、正義と知略を貫き、逆境を逆手に取り、
貴族社会を裏から揺るがせるまでに至った若き貴婦人。
(……もし、彼女がこの帝国に生まれていたなら――)
帝国の重鎮すら手を焼くような相手を、
彼女はわずか数か月で捻じ伏せ、王国中枢の構造まで書き換えてしまった。
才気。胆力。美貌。
そして何より、“見下されることを恥とは思わない強さ”。
それらすべてが、レオニスの心に深く刻まれた。
(気づいてしまった以上、欲しくなるのは当然か)
◆
数日後、密使を王国に送り、彼女へ正式な求婚状を届けた。
王国の貴族たちが泡を食って動揺する様を思い浮かべて、少しだけ笑った。
(君たちが手放した宝石を、帝国がいただく――それだけの話だ)
◆
そして、エリシアと初めて対面した日のことは、今でも忘れない。
貴族でも、臣下でも、誰もがレオニスを見上げるのに――
彼女だけは、静かに、まっすぐに見返してきた。
「陛下の申し出には、感謝いたしますわ。
ただ、私は“逃げ場”として受け取るつもりはございません」
「……ならば?」
「復讐を終え、誇りを取り戻した“その先”に、立っていたいのです。
私の意志で、私の人生を選びたい」
心を撃ち抜かれた、とはこのことだ。
王太子の愚かさを笑う気も起きなかった。
彼女に刃を向けた者たちは、彼女が“玉座の隣”に立つと知った瞬間に、
地面に頭をこすりつけるだろう。
そんな光景すら――想像に難くなかった。
(君は……“皇后”という器では小さすぎる)
(いっそ、世界の半分でも譲るべきかもしれない)
◆
そして今。
月の照らすバルコニーで、エリシアは彼の隣にいる。
「皇帝陛下とは相思相愛ですので、ご心配なく♡」
あの誇らしげな微笑みを見るたびに、思う。
この女を手に入れるためなら、
帝国一つ――いや、世界の秩序すら、いくらでもくれてやろう。
愛とは征服ではない。
この女にだけは、世界を共に支配する“盟友”として隣にいてほしいのだ。
「エリシア」
「はい?」
「……次は、何を手に入れたい?」
彼女は一拍置き、ゆっくりと口元を緩めた。
「さぁ? けれど――あなたが隣にいてくださるなら、
何だって狙えそうですわ♡」
帝国皇帝と元“悪役令嬢”――
二人の愛と支配は、まだ始まったばかり。
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