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第三話 “もう一つの家”
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食事をしていた店の前で解散し
僕と犀星君は二人で帰り道を歩いていた。
「ねぇ犀星君、本当に……いいの?」
「あれ、まだ信じられないかい?
なら、身体で教えてあげるよ」
犀星君に路地裏へ連れていかれ、深い口づけをされた。
「ふ、ぁ、」
思わず洩れた自分の声が恥ずかしくて
犀星君に抱き着いた。
「ふふ、可愛い」
路地裏とはいえ街灯がないわけじゃなく
僕たちの重なりあった影を写し出した。
「今日は一緒に“室生家”に帰ろう。
とみ子も朝子も朝巳も待ってるよ」
ーー
「とみ子・朝子・朝巳、ただいま。
ほら、龍之介君も」
「……ただいま」
気恥ずかしいような温かいような感覚。
「お帰りなさい、犀星さん・龍之介さん」
とみ子さんの穏やかで柔らかい声色に
僕は肩の力を抜いた。
「外は冷えますから中へ。
今、お茶を淹れますね」
中に入り、とみ子さんが淹れてくれた
お茶を飲むとほっとした。
「好きように過ごしていいんだよ?
ごろごろしたり、眠かったら寝てもいいし」
お茶を飲み終えた僕は居間の畳に寝っ転がると
犀星君も隣に寝っ転がった。
「私も隣、いいかしら?」
「もちろん、とみ子も一緒に寝っ転ろう」
犀星君が自分の隣をぽんぽんと叩くと
とみ子さんは犀星君の隣に寝っ転がった。
「こうして“家族”でだらだらできるのは嬉しいね」
そう言って、犀星君は僕と
とみ子さんの手をとり繋いだ。
「そうね、朝巳と朝子が見たら羨ましがるわね」
とみ子さんが笑った。
「お父さんとお母さんだけ
ずるいって言い出すだろうね」
「きっと、朝子は、
“龍之介おじちゃん”、独占だめ!!
って言って朝巳も
“ぼくの龍之介おじちゃん”って言うわ」
犀星君ととみ子さんの会話に僕は心が温かくなった。
「龍之介君、
今日はもう泊まっていきなよ、ね、とみ子」
「そうね、夜も遅いし、
居間に布団を敷いて三人で寝ましょう」
一度、起き上がり、
犀星君ととみ子さんが
居間に三組の布団を敷いた。
「龍之介君、寒くないかい?」
犀星君が僕の掛け布団を
首もとまで引き上げてくれた。
「ありがとう、温かいよ。
ふふ、犀星君ととみ子さんがいてくれるからかな?」
「おや、それは嬉しいこと言ってくれるね」
犀星君ととみ子さんは僕の頭を撫でた。
とみ子さんにまで撫でられるとは
思わなかったから驚いた。
「龍之介君は“お客様”じゃなくて
“家族の一員”だからね、
室生家は龍之介君の“帰る場所”であり
“居場所”なんだよ」
「室生家にいる間は
“作家”でも“夫”でも“父親”でもない
僕の“恋人”で“家族”の
“ただの龍之介君”でいていいんだよ」
「そうよ、ここでは
“ただの龍之介さん”でいいの。
それにね、龍之介さんが
いてくれると犀星さんも私も、
朝子や朝巳も嬉しいのよ」
二人の手の温もりと優しさを感じながら
僕はうとうとし始めた。
「眠いならそのまま眠っていいからね。
お休み、龍之介君」
犀星君の柔らかく優しい声で僕は眠ってしまった。
僕と犀星君は二人で帰り道を歩いていた。
「ねぇ犀星君、本当に……いいの?」
「あれ、まだ信じられないかい?
なら、身体で教えてあげるよ」
犀星君に路地裏へ連れていかれ、深い口づけをされた。
「ふ、ぁ、」
思わず洩れた自分の声が恥ずかしくて
犀星君に抱き着いた。
「ふふ、可愛い」
路地裏とはいえ街灯がないわけじゃなく
僕たちの重なりあった影を写し出した。
「今日は一緒に“室生家”に帰ろう。
とみ子も朝子も朝巳も待ってるよ」
ーー
「とみ子・朝子・朝巳、ただいま。
ほら、龍之介君も」
「……ただいま」
気恥ずかしいような温かいような感覚。
「お帰りなさい、犀星さん・龍之介さん」
とみ子さんの穏やかで柔らかい声色に
僕は肩の力を抜いた。
「外は冷えますから中へ。
今、お茶を淹れますね」
中に入り、とみ子さんが淹れてくれた
お茶を飲むとほっとした。
「好きように過ごしていいんだよ?
ごろごろしたり、眠かったら寝てもいいし」
お茶を飲み終えた僕は居間の畳に寝っ転がると
犀星君も隣に寝っ転がった。
「私も隣、いいかしら?」
「もちろん、とみ子も一緒に寝っ転ろう」
犀星君が自分の隣をぽんぽんと叩くと
とみ子さんは犀星君の隣に寝っ転がった。
「こうして“家族”でだらだらできるのは嬉しいね」
そう言って、犀星君は僕と
とみ子さんの手をとり繋いだ。
「そうね、朝巳と朝子が見たら羨ましがるわね」
とみ子さんが笑った。
「お父さんとお母さんだけ
ずるいって言い出すだろうね」
「きっと、朝子は、
“龍之介おじちゃん”、独占だめ!!
って言って朝巳も
“ぼくの龍之介おじちゃん”って言うわ」
犀星君ととみ子さんの会話に僕は心が温かくなった。
「龍之介君、
今日はもう泊まっていきなよ、ね、とみ子」
「そうね、夜も遅いし、
居間に布団を敷いて三人で寝ましょう」
一度、起き上がり、
犀星君ととみ子さんが
居間に三組の布団を敷いた。
「龍之介君、寒くないかい?」
犀星君が僕の掛け布団を
首もとまで引き上げてくれた。
「ありがとう、温かいよ。
ふふ、犀星君ととみ子さんがいてくれるからかな?」
「おや、それは嬉しいこと言ってくれるね」
犀星君ととみ子さんは僕の頭を撫でた。
とみ子さんにまで撫でられるとは
思わなかったから驚いた。
「龍之介君は“お客様”じゃなくて
“家族の一員”だからね、
室生家は龍之介君の“帰る場所”であり
“居場所”なんだよ」
「室生家にいる間は
“作家”でも“夫”でも“父親”でもない
僕の“恋人”で“家族”の
“ただの龍之介君”でいていいんだよ」
「そうよ、ここでは
“ただの龍之介さん”でいいの。
それにね、龍之介さんが
いてくれると犀星さんも私も、
朝子や朝巳も嬉しいのよ」
二人の手の温もりと優しさを感じながら
僕はうとうとし始めた。
「眠いならそのまま眠っていいからね。
お休み、龍之介君」
犀星君の柔らかく優しい声で僕は眠ってしまった。
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